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アッペンツェル地方の田園風景に必ずといっていいほど登場している、お馴染みのアッペンツェラーハウス。
といっても、どんな形だったのかすぐに思い出せないかもしれません。
大きく分けて3つのタイプがあるのですが、今回はそのうちの1つを紹介します。
このタイプです。
右半分と左半分の形が違います。屋根の形、家の高さが大きく違いますね。
この写真の右の部分は、人が住むところ。
外壁に薄くて小さい板がウロコのように貼り付けられているのが特徴です。
(ドイツ語でSchindeln。英語でshingle)
板が、雨や雪が降ったときに湿気をコントロールしてくれ、家を守ってくれるのです。
この建築方法のおかげか、アッペンツェル地方には築数100年の家は珍しくありません。
(我が家は築500年です・・・)
そして、小さい窓がたくさん並んでいて、全体的に天井が低いのが特徴。
(我が家の天井の高さは約190cm、ドアの高さは150cmだったり170cmだったりします)
窓際に赤やピンクのゼラニウムを飾っている家が多いですね。
こんなに小さい窓ですが、数が多く、驚くほど太陽光が差し込んでくる仕組みに。
1階部分にある窓が、少し低い位置にあるように見えませんか?
これは、実は地下室の窓なんです。
昔、農家の女性は副業として刺繍をしていました。
その作業をするのに、温度と湿度が安定していて、光がよく差し込む地下室が最適だったのです。
そして、左の部分は家畜小屋です。
左側の中央部分にある大きなドアと、右側の左にある人用のドアの大きさと高さが違いますね。
牛や農具、工具などを出し入れするのにぴったりの大きさなのでしょう。
左側には、長方形の石で出来た水飲み場があるのですが、これはもともと牛が飲むために作られたものだそうです。
もちろん人も飲用したり、何かを洗ったりもしますが、牛のためにこの高さと幅で作られた、と家の持ち主は言っていました。
アッペンツェルの目抜き通りハウプトガッセ(Hauptgasse)から少し外れたところにも、似たような家があります。
これは外壁にペイントが施され、ウロコ状の木板は簡略化されているようです。
アッペンツェル地方の景色。
なだらかな丘に、ぽつんぽつんとアッペンツェラーハウスが点在しています。
気候や農作業に適した、人にとっても便利で居心地のいいアッペンツェラーハウス。
人々の歴史と生活が滲み出る、温かい家です。