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世界的にその名を馳せ、最高級の牛肉として認識されている和牛。
ここアッペンツェルで、「和牛「と「和牛の飼育法」にこだわっている畜産農家があります。
今日は、その農家が出店する食品見本市 Gourmesse(グルメッセ)に行ってきました。
彼はSepp Dähler(セップ・デーラー)さん。
私が住むアッペンツェル地方のStein(シュタイン)に農場を持ち、奥様とお子さんたちと家族で牛や豚を飼育しています。
セップさんは和牛とスイスのブラウン牛をかけあわせた牛を育てているのですが、その飼育方法が特徴的。
朝晩2回、それぞれ1時間かけて牛をブラシでマッサージします。
アッペンツェルのビール会社(Brauerei Locher AG)と提携して、飼育用のビールを大量に仕入れ、牛に与えます。
牛はアルコールをすぐに分解するため、血液からアルコールが検出されることはない、とセップさん。
ビール(酵母)が牛を健康に保つ働きがあるため、ビールを飲ませてマッサージをする飼育法を取り入れ、かれこれ15年になるそう。
Bier(ビア。ビール)で育てるKalb(カルプ、牛)という意味を込めて、セップさんは自分の牛を「Kabier(カビア)」と呼んでいます。
彼の農場や飼育方法については、あらためて別の記事でご紹介しますね。
今回は、チューリッヒで開催されている食品見本市を訪れ、セップさんとお話してきました。
このスタンドで販売されているのは、ソーセージ類とサラミ類(ステーキ用の肉はありません)。
和牛のカルパッチョ、和牛ソーセージ、和牛のウイスキーソーセージ、和牛のブラートブルストソーセージ、サラミがショーケースに並んでいます。
お店番をするのは息子さん。
息子さんたちが用意してくれた試食品を、勧められるがままに、ぜんぶ試してみました。
「自宅から車で10分のところに住むご近所さん」という贔屓目を差し引いても、美味しいソーセージでした。
脂っこくないのに脂がまんべんなく乗っていてまろやか。
そして、特にカルパッチョやタルタルはしっかりした「肉」を感じました。
閉鎖的と言われるアッペンツェルで、和牛にこだわり、和牛を愛し、自分の仕事に情熱と誇りを持って生きているセップさんと話していると、日本人であることが誇りに思えてきました。
詳しくは別記事でご紹介しますが、セップさんは牛から「無駄」を一切出さないよう、すべての部位を製品化しています。
業者に委託して、腸や骨はドッグフードに、毛皮や皮はバッグやキーホルダーなどに加工しているのです。
ベジタリアンが増えて、動物性を食べることへの意義も唱えられている現代ですが、セップさんは牛をマッサージし、できるかぎりオーガニックなど自然な飼料を与え、1頭あたり十分すぎる広さの土地で自由に歩かせ運動させ、屠殺での苦しみを最小限に抑え、すべての部位を無駄にしないよう精一杯、日々、努力しています。
動物性を摂取することに疑問がある人、絶対に反対な人もいるのが現実ですが、セップさんのような農家が増えてくれたら、とも思いました。
< Sepp Wähler >
*和牛の肉(ステーキ用)などは、注文でのみ販売されています。
現在は7ヶ月から1年後のお渡しになるそうです。
詳しくは農場に直接お問い合わせください。