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タンザニア料理・定番だけじゃない。あまり語られない食材とメニュー

西東 たまき

西東 たまき

タンザニア特派員

更新日
2016年12月5日
公開日
2016年12月5日
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タンザニアの料理というと、「メニューが少なくて飽きる」「バラエティに欠ける」という声を

よく耳にします。

確かに、どこの食堂でも判を押したように見られるメニューは、米やウガリなどの主食に、

魚の揚げたものあるいはトマトで煮込んだ肉のシチューと、葉菜の炒めと豆の煮込み。

どういう訳か、タンザニア料理を出す当地の食堂メニューは多少のバリエーションはあれど、

どの店もすべて同じといって過言ではありません。外食する限り、それら以外のタンザニア料理

にお目にかかることはまず期待できないと考えるべきでしょう。

(とある食堂にて。食事メニューの定番:ご飯、揚げた魚、トマトのスープ、青菜の炒め煮)

(大衆食堂の風景)

しかし当然ながら、それらがタンザニア料理の全てではありません。また、地方に行けばその

土地ならではの食材や食べ物があるのはどこも同じ。

ところがそういったバラエティ豊かなタンザニア料理はタンザニア人のご家庭でごちそうになる

以外ありつける術がないのが、「タンザニア料理はバラエティがない」という誤解のもとです。

けれど、場所や時期によっては定番以外の食材や食べ物を垣間見る機会があったりもします。

今回は、ダルエスサラームで見られる「あまり語られない食材・メニュー」についてお話し

ましょう。これらの食材は、カリアコなどローカル色の濃いマーケットで見ることができます。

―――

まず、タンザニア料理の基本知識として日常料理ではスパイスは、さほど使いません。

スパイスをふんだんに使ったピラウやビリヤニなどの米料理は、お祝いの時のご馳走です。

料理自体が辛い味付けになっているものも、まずありません。

味付けは基本的に塩だけなのですが、侮るなかれ、食材自体が持つ旨味が強いのでしょう。

何を調理しても、どこからこんな旨味が?というほど美味しい料理が出来上がります。

多くの料理のベースとなるトマトと玉ねぎは旨味の素として欠かせない材料ですし、さらに

コクとまろやかさを出すためにココナツミルクがよく使われます。ココナツミルクと煮る

だけで野菜も肉も魚も実に美味しくなる、魔法のような食材です。

買って来たココナツ(直径10cm)を二つ割りにしたもの。なお、中の液体を飲むココナツと調理用ココナツは異なります。

"Mbuzi(ムブズィ・スワヒリ語で「羊」の意味)"という道具で削った後のココナツの殻と、削ったココナツ。ここに水を入れてココナツミルクを搾り取る。

ココナツはそこかしこで売られてはいるものの、下ごしらえにはかなり手間がかかります。

そこで、家庭では小さなテトラパックに入った濃縮加工のココナツミルクが重宝されていた

りもします。結局は割高になる上、味と風味は本物に及ばないものの断然手軽です。

(パック詰め濃縮ココナツミルク)

さて、いよいよ本題である食材とメニューを紹介していきましょう。

【クンデ豆/Kunde】

写真では分かりにくいですが、ひしゃげた不規則な形をしています。

煮た豆の味・食感・風味は小豆/ササゲそのものです。あんこや、お赤飯にして違和感あり

ません! あんこ・お汁粉に使う小豆と、お赤飯に使うササゲはよく似ていますが、小豆は

東アジア原産、ササゲはアフリカが原産です。

収穫の時期が限られているのでしょうか、タンザニア定番メニューのマハラゲ(金時豆)が

一年中手に入るのに対し、こちらは一定の時期しか見られません。タンザニアではココナツ

ミルクと砂糖で甘く煮込み、ほんのりココナツが香るあんこのようにして食べます。

(↑ 茹でる前)

(↑ 茹でたもの)

クンデは豆を食べるだけでなく、その葉は野菜として食べられています。

【マカンデ/Makande】

トウモロコシと金時豆を一緒にココナツミルクで煮込んだ主食メニューです。

トウモロコシのもっちりした歯ごたえが、食べていて楽しい一品。こちらで一般的なトウモロ

コシはスイートコーンではなく、白くて甘みのないものです。歯ごたえがありモチモチしています。

(左からトウモロコシと豆(写真はココナツビーンズ)。どちらも調理前。)

【ウジ/Uji】

キャッサバ・米・トウモロコシ・小麦など好みの粉で作ります。多めの水(ココナツミルクを

加えることも)と少々の塩でトロミが出るまで煮立て、ポタージュのような質感に仕上げます。

お腹にやさしいので食欲が湧かない朝や、ラマダン中は断食明けの食事を取る前の「スターター」

として食されます。

【ングル、パパ、ンゴンダ/Nguru, Papa, Ng'onda(魚の種類により呼び名が異なる)】

魚のぶつ切りを発酵させた食材で、塩気が強く日持ちがします。ちょうどアンチョビのような

要領で煮込み料理に加えて風味を出したり、食べやすい大きさにスライスして直火であぶり、

食事に添えたりします。あぶった一片を炊き立ての白飯で食べるのは、和食好きの口にも合うと

思いますよ!

(上段:ングル、下段:パパ)

【ダガー/Dagaa】

サイズは様々。煮干しやゴマメと同じです。調理するときは苦味が出ないよう、一つ一つ

ハラワタを取り除いて使います。じっくり煮込んだトマト煮込みもおすすめです。

(中央市場・カリアコマーケットの地階には体育館のように広いスペースがあり、

干した魚、干しエビ・タコ、開いた干魚など海産物の干物が所狭しと売られている。)

【ウトゥンボ(内蔵)/Utumbo】

ぶつ切りの内蔵(ホルモン)をトマトやココナツミルクで煮込んだシチュー。

【キサンブ/Kisamvu】

キャッサバの葉をみじん切りにしてココナツミルクなどでじっくり含め煮にしたもの。

滋味のある美味しさが忘れられない味です。忙しい主婦のため?みじん切りにしたパック

詰めがスーパーで売られています。

【ムレンダ(モロヘイヤ)/Mlenda】

細かく叩いてみじん切りにし、滑らかに煮込んであります。そのため、もはや青くさい風味

はなく、旨味とトロミが納豆の代用のようで日本人に好評です。オクラ(バミーア/bamia)

が混ぜられているものや、少々のピーナツバターが隠し味に使われているものもあります。

【スクマウィキ(ケール)/Sukumawiki】

スクマウィキは、私たちが青汁の素材・ケールの名で知っている葉野菜です。

「スクマ=押す」「ウィキ=ウィーク(一週間)」というのがその名の意味。昔は他の野菜

より安かったこともあり、家計の苦しい時期を「一週間押し通す」ことが出来るというのが

名前の由来と言われています。ケールは栄養価が高いことでも知られていますね。

しっかりした固めの葉菜ですが、トマトや玉ねぎとじっくり柔らかく煮込んだものには深い

味わいがあります。

【タンビ/Tambi】

「タンビ」とは"noodle(麺)"のことです。

見た目はまさに日本の素麺。しかし、茹で上げた麺は砂糖とココナツミルクで味付けた上、

油で香ばしく焼き付けてコクのあるお菓子のように仕上げます。食事ではなくティータイムの

メニューです。ラマダンシーズンになるとマーケットに登場します。

【ビビビ/Vibibi】

インパクトのある名前ですよね。米粉で作った平たい蒸しパンのようなパンが甘いココナツ

ソースに絡めてあります。ココナツ「ミルク」ではありません。もっと濃厚に煮詰めたココ

ナツ「ソース」です。知り合いのお宅で一度頂いた味は忘れられません。

【ハルワ/Halwa】

デンプンから作ったくず餅のようなお菓子。ほんのりカルダモンが香ります。もっちり・

ぷるんとした食感のハルワは、中に入っているプチプチのゴマがアクセントになっていて

食べ飽きません。こってり濃厚な甘さなので、お茶好きなタンザニア人もハルワを食べる時は

タンザニア版エスプレッソともいえる濃いコーヒーをブラックで合わせます。

(ハルワ)

以上、聞いたことのなかったものは幾つありましたか?

当記事は食材とメニューの紹介でしたが、タンザニアの主菜を中心にご紹介する「タンザニアの主食」

もご覧ください!

タンザニアの珍しい野菜について知りたい場合は「新鮮さ輝くタンザニアの「レア野菜」レポート」も!

これらを発見するには、地元民の行くマーケットへ行ってみることです。また、ラマダン期は

その時期限定のメニューが登場するので、"Iftar(断食後の食事)"を出しているローカル

食堂に行ってみるとよいでしょう。

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