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(サウジアラビア国王の名前でタンザニア全国イスラム評議会に寄贈されたナツメヤシ。
"Gift from the Government of the Custodian of the Two Holy Mosques King Salman
Bin Abdul Aziz al Saud"と書かれています。)
2017年は5月末に新月が確認され次第、タンザニア全国イスラム評議会"BAKWATA(バク
ワタ/Baraza Kuu la Waislamu Tanzania/National Muslim Council of Tanzania"が
ラマダン入りを宣言し、タンザニアは現在、全世界とともにラマダン真っ最中です。
●●●ラマダンとは?
ラマダンとはイスラム暦の第9番目の月のこと。
この一ヶ月間、ムスリム(イスラム教徒)は、日の出から日没まで一切の水と食物を断ち
ます。「断食する」と聞くと、苦行のような大変な様子を思い浮かべるかもしれませんが、
実際のところ、ムスリムたちはラマダンの開始を嬉しそうに待ちわびています。
断食する者同士連帯意識が高まる中、待ちに待った夕刻の食事を家族や友人とワイワイ
分かち合いながら世間一斉に食べる、そんな「非日常」が続く日々を楽しく感じるのは
容易に理解出来ます。
外国人の私もしばしば「断食はしないのかい?」と冗談半分で声を掛けられます。私は
"Mimi kobe(私は断食破りです)"と返答し、相手がなぜか大笑いするというのが、この
時期定番のやり取り。街の食堂そしてバー(ムスリムの飲酒も珍しくありません)はこの
一ヶ月の間、通常より閑散として見えます。
この時期、人々は普段に増して足繁くモスクへ通ったり、普段ベールを被らない女性も
ベールを被ったりしているのが目に留まります。また、シーズン中は連日夜間モスクで特別
のお祈りが行われます。夕方、たっぷり一日分の食事を終えて一段落したあとに軽く体を
動かす機会にもなるというわけです。
●●●日の出・日の入り時刻が大事
日没時刻に達すると各地で一斉に食事が始まります。ご存知の通り、日没時刻は毎日少し
ずつ変わります。そのため、食事の開始時間も毎日少しずつずれていきます。
空腹と渇きのさなか、すぐに食べられるようお膳立てされた飲食物を目の前にしても一分
として早く食べ始めるなんてことがないのは心構えの違いでしょう。私にはちょっと難しい
芸当に思われます。
一日絶食したあとですから、毎回の食事はまずは温かいお茶と、ウジ(Uji)と呼ばれる
ポタージュのようなスターターなどから始まります。ラマダン期は食事のメニューも独特の
ものになり、この時期ならではの料理も並びます。スワヒリ語で「タンビ(麺)」と呼ばれる
食材が出回るのも、甘いメニューが増えて砂糖の消費量がさらに上がるのもこの時期です。
※ウジやタンビについては『タンザニア料理・定番だけじゃない。あまり語られない食材と
メニュー』へ!
干し柿のようなナツメヤシの実(デーツ/Dates)は一年中売られていますが、特にラマダン
期は食事前のお茶の友に欠かせないものとして、スーパーのナツメヤシ売り場面積も広くなり
ます。
(ナツメヤシの実)
太陰暦に則ったイスラム暦は29日の月と30日の月を交互に繰り返すため、年に11日ほどの
ずれが生じます。それに応じてラマダンの時期も毎年同程度の日数早まっていきます。
例えば、2000年代頃はラマダンは日本の秋だったのが、今では梅雨の季節にまで移動して
います。
断食の時間はあくまで夜明けから日没ですので、日照時間が長い日本の夏にラマダンが
当たれば断食時間が長くなりますし、冬に当たれば短くて済むというように数時間の時差
も出ます。
ちなみに、タンザニアでは季節による日の出・日の入り時刻の違いが日本ほどなく、ほぼ
一定です。年間通してせいぜい30分ほど変わるだけですので、日本のように日の出・日の
入り時刻で季節を感じることはありません。
●●●異教徒も一緒に
タンザニアには宗教の違いによる諍い(いさかい)が基本的にないため、ラマダン明けの
お祝いにクリスチャンの友人を招いたり、逆にクリスマスにムスリムが招かれたりして一
緒にご馳走を囲むという話もよく聞きます。
ラマダン中、レストランやホテルでは断食している人向けの特別メニューが用意されますし、
ラマダン明けのお祝いのためのスペシャルオファーが盛んに宣伝されます。
スーパーの店員はクリスマスにはサンタの帽子を被りますが、ラマダンのときはスカーフ
を巻いて接客したりします。店のデコレーションもラマダンのモチーフになるし、TVコマー
シャルでもラマダンのお祝いメッセージが流れるなど、ラマダンムードが作り出されます。
●●●ラマダンの終わり
さて、新月と共に始まったラマダンは、終わるのも新月と一緒。新たな新月が確認された
翌日が"Eid(イディ)"と呼ばれるラマダン明けの祝日になります。
2017年のラマダン明けは6月25~26日頃の見込みとなっていますが、どちらの日に確定するか
は前日の夜、「月が見えたかどうか」が前述のタンザニア全国イスラム評議会によって正式に
発表されるまで誰にも分かりません。
「明日は祝日か否か」の発表を全国民がジッと耳を傾けて注目します。それだけに、ひと
たびニュースが報じられると瞬間的に世間に知れ渡ります! こんな機会も「一体感」を感じ
られる瞬間と言えるでしょう。
祝いの当日、ムスリムは家族に贈り物を用意するので、ラマダン期はプレゼント商戦で賑わ
う時期でもあります。そしてその日は、金銭的に余裕のある家庭は生きたヤギを一匹丸ごと
購入し、その肉を人々に分けふるまうのが習わしです。家庭では、たっぷりのヤギ肉をたっ
ぷりのスパイスで炊き上げた米料理「ピラウ」を作って家族・友人を招き合います。
●●●こんな配慮で分かち合うラマダン
もし、ラマダンの期間にタンザニアを訪れる機会があり、利用したタクシーの運転手や居合わ
せた人が断食中だったりした場合、目の前であからさまに飲食するのは控える配慮をすると
よいでしょう。もちろん、目の前で飲食したところで文句を言う人はいないはずですが、人と
してそのような配慮を見せるのは悪くないことだと思います。
また、ラマダン中は"Ramadan Kareem(ラマダン・カリーム)"という特別の挨拶が
あるので、機会があったら声を掛けてみると思いのほか喜ばれるでしょう!