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現在の琵琶湖は近代化の中で湖岸の風景は、埋め立てや開発などで大きく姿を変えてきました。
室町時代に選定された「近江八景」もそのいくつかは影響を受け、当時の景観は失われたものもあります。
今回紹介する「唐崎」は近江八景の中では「唐崎の夜雨」として登場し、歌川広重の浮世絵では雨が降る暗闇に大きな松のシルエットが浮かび上がるように描かれており、大変印象的なものとなっています。
その大きな松のある風景が今でも「唐崎」には残っていました。
ちなみに唐崎は大津京時代からの地名で、唐崎という字の他にも「韓崎」「辛崎」「可楽崎」など様々な字があてがわれたことも。
元々湖西は歴史的に朝鮮半島や中国などの渡来人との結びつきが強い地域と言われますが、この字にもそういった歴史が感じられます。
唐崎を守っているのは、「唐崎神社」です。
唐崎神社は日吉大社の摂社で、社務所の方も普段は日吉大社にいらっしゃるようです。(御朱印も日吉大社にいって頂くとのこと)
鳥居をくぐって奥に進むと、
境内の中央に現在3代目と言われる唐崎の松が・・・枝を大きく左右に張り出して鎮座しているのが見えてきます。
これが3代目「唐崎の一本松」です。
境内にあった案内によると、初代は1581年に大風で倒れ、その後に植えられた2代目は幹の周囲が9m、枝ぶりは東西72m・南北86m・高さ27mもあった超巨大な松であったそう。広重の浮世絵もこの松を描いたんでしょうね。
その2代目も大正10年には枯れてしまい、その後を継いでいるのがこの3代目なのです。
2代目ほどの風格はないものの、張り出した枝ぶりは綿々と繋いできた唐崎の歴史を感じるには十分でしょう。
松の脇にはひっそりと芭蕉の句碑も建っています。
芭蕉の句碑は滋賀のあちこちにかなり沢山あるので、そうしたものを探して歩くのも面白いですよ。
そしてこの唐崎が八景に選ばれた理由がわかる風景・・・
ここは琵琶湖に突き出た小さな半島のような場所にあり、松のバックには雄大な琵琶湖が広がります。
松の緑と琵琶湖の青がとってもきれいなコントラストを描いています。
でも花より団子、ですよね。
唐崎神社の鳥居の前には、1軒だけ"みたらし団子屋さん"があります。
「近江かぎや」さんは江戸時代からこの唐崎の場所で団子を作り続けているお店。
お店では注文してからじっくりと焼いてくださいます。
香ばしい焦げ目がカリっとしてて中はモッチモチのお団子には、代々受け継がれている絶妙な甘さ加減の秘伝のタレが絡まって、本当に美味しいです。
かぎやさんの店内にも飾ってあったのが「手筒花火」の筒。
ここ唐崎では日吉大社の祭礼として、7月に「みたらし祭」が行われ、琵琶湖の湖上で勇壮な手筒花火の競演が見られます。
みたらし祭にみたらし団子の組み合わせ? と言えば有名なのは京都 下鴨神社。
下鴨神社がみたらし団子の発祥の地と言われていますが、実はこちらの唐崎も「みたらし団子発祥の地」らしいです。
もしかすると堅田(昔は下鴨神社の御厨であった)と同じように、唐崎も下鴨神社と何か関係あったのかもしれません。
そんな歴史的な謎も秘めた唐崎。今はひっそりと佇む老松だけが知っている秘密かもしれませんね。
寺田物産(近江かぎや)
住所 滋賀県大津市唐崎1-8-1
TEL 077-578-0277
営業時間 9:00~16:00
定休日 木曜(祝日の場合は営業)