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生水(しょうず)の郷「針江」~琵琶湖の暮らしの原風景(2)

フナズシマル

フナズシマル

滋賀特派員

更新日
2018年3月21日
公開日
2018年3月21日
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「針江」で琵琶湖の暮らしの原点を学ぶ

滋賀、福井、京都の県境にある中央分水嶺の山々から豊富な伏流水が琵琶湖に向かって流れ込む饗庭野。その琵琶湖岸より1.5㎞ほどのところに「針江」集落はあります。

針江の中心を流れる針江大川 撮影:Funazushi-maru

針江では「カバタ」と言われる家の中へ川の水や湧き水を引き入れる場所を集落のほとんどの家が持ち、生活用水として現在も利用し続けています。

NHKハイビジョンスペシャルで放映されてからというもの、生活の場に沢山の観光客が押し寄せたことで一時は大変困ったそうなのですが、

針江の人々が取った行動は観光客を拒まず、かつ生活の場も守る方法。それは観光客を有料のガイドツアーの中で受け入れるというもの。

今回僕はそのツアーに参加し、カバタのある生活、そして琵琶湖で暮らすということの原点ついて学ぶことにしました。

「針江」の水

集落の中心を流れる針江大川。なんと湧き水を70%も含む大変きれいな水が流れているのです。

夏には梅花藻の花が川面を覆います。

自然の事を考えて作られた大川の護岸 撮影:Funazushi-maru

5月の中旬、この川にある変化が起きます。

なんと琵琶湖からたくさんの鯉が遡上してくるのだとか。針江の子供たちは鯉と共に川に入って遊ぶんだそうです。今回訪れたのは3月でしたが、5月には再度訪れて川遊びしてみたいですね。

それ以外にも、アユやヨシノボリといった小型の魚も琵琶湖から針江を目指してきます。

上の写真にある護岸の凹みは何かわかりますか?

土の川岸だったときには両岸には草やヨシなどは茂り、魚たちの格好の隠れがとなっていました。

ところがコンクリート護岸にすることで、そういった魚たちの住処が無くなってしまいます。そこで護岸を作る際に取り入れたのか写真の凹みなのです。

針江の人々が自然との共存を高く意識していることがわかる場所です。

この針江大川の流れは集落の家々に小さな水路で繋がっています。

このまま飲めるくらい綺麗な水路の水 撮影:Funazushi-maru

水路へ湧き水が流れ込む 撮影:Funazushi-maru

集落のあちこちで湧き水がでる針江の水路にはこういった大変透明度の高い水が流れています。水路によっては湧き水100%のところもあるくらい。

そのまま飲むこともできそうです。

水道の水は浄水施設にて殺菌しているものの100近くの雑菌がいます。しかしこの針江の水にはそういった雑菌は限りなくゼロなのだそう。

だから針江集落では飲み水や料理はほぼカバタの水を使われます。

「針江」のカバタ

針江大川から枝分かれした水路の先へ歩いていくと・・・、

水路は外カバタへと繋がる 撮影:Funazushi-maru

水路のすぐわきに小屋があり、水はそこへ引き込まれるように穴が開いています。

これは「外カバタ」と言って、主屋から外にあるのでこう言います。主屋の中にあるのは「内カバタ」ですが、こちらは本当に家の中なので見ることはできません。

外カバタには鯉が・・・ 撮影:Funazushi-maru

外カバタの中は3つの池に分かれており、鉄管を通って地下10m~20mの深さより湧いてくる水はまず「元池」へ、その後「壺池」に溜まり、壺池から溢れた水は「端池」へと流れます。端池には大抵の家で鯉が飼われており、洗い物をしたあとの残飯などを綺麗に食べてくれるのです。

そうしてまた綺麗な水となって水路へと戻っていきます。

ちなみに針江に飼われている鯉はカレーも大好きなんだとか。カレーを作った後の鍋もカバタに漬けておくと鯉が綺麗に食べてくれるのだそうです。

川と水路が繋がっているということは、遡上してくる魚もカバタに来ることができます。

鯉の遡上の後には小鮎たちが大川を登ってくるのですが、そういった小鮎たちが餌を求めてカバタにもやってくるのだそう。

もちろんカバタにやってきた鮎を捕まえるなんてことも可能です。自分の家に鮎がやってきて、捕まえて食べることができるなんて想像するだけで楽しそう!

100%湧き水のカバタ 撮影:Funazushi-maru

この写真のカバタは100%湧き水だけのカバタ。大きなカバタですが大変透明度が高く、綺麗に澄んだ水の中に大きな鯉が悠々と泳いでいます。

こんなきれいな水の流れをみているだけでも心が落ち着きますね。

水路の鯉 撮影:Funazushi-maru

集落のあちこちに鯉が泳いでいて、鯉が飼われているというよりもまるで鯉と人が一緒に住んでいるかのよう。

中島自然地 撮影:Funazushi-maru

やがて針江の水は琵琶湖へ注がれます。ここは中島自然地という琵琶湖の一歩手前にある内湖。針江の人々は集落から川を舟で下って琵琶湖まで出たり、またここで漁をしたりします。

針江のこういった自然の風景は自然のままで放っておくだけでは実はできません。そこには針江の皆さんの日々の暮らしの中での水への労りの気持ちがあってこその景色なのです。針江では川の掃除や増えすぎた藻などの除去作業などを毎年総出でされており、そういった活動の賜物なのです。

「針江」での食事

針江は観光地ではありませんので集落内にお土産屋さんやレストランはありませんが、せっかく琵琶湖の水について学びに来たのであれば琵琶湖の味を堪能してほしいと思います。

針江の魚屋さん「おさかな旭」 撮影:Funazushi-maru

「おさかな旭」では滋賀県名物の鮒寿司や小鮎の佃煮の他、タテボシ(シジミよりも大ぶりの貝)の佃煮など湖魚料理が販売されています。

もちろんお魚を洗ったり、料理するための水も針江の湧き水を使用。

近くには「上原とうふ店」というお豆腐屋さんもありますよ。

集落からは少し離れてしまいますが、高島市の郷土料理を味わえる場所があります。

かばた館 姫御膳は盛り付けも可愛らしい… 撮影:Funazushi-maru

使われなくなった商工会議所を一部改装して作られた「かばた館」。

こちらでは高島の郷土料理の「しょい飯」やB級グルメとして有名になった「とんちゃん焼き」など、高島の味を大変リーズナブルな価格で味わうことができます。

「針江」。

ここにくれば遠い昔から延々と続く自然の優れた仕組みと、その流れに寄り添う形で育まれてきた琵琶湖での人々の暮らしを感じ、そして生きるってことや人の幸福ってことまでも考えさせてくれるものがあります。

あらゆるものが便利になってくる世の中ですが、もう一度こういった暮らしの原点を見つめ直すことも大事ですね。

〒520-1501滋賀県高島市新旭町旭707番地

電話:0740-25-3790

営業時間:11:00~16:00(夜は要予約)

年中無休(年始のみ休業)

針江生水の郷(http://harie-syozu.jp/

滋賀県高島市新旭町針江

針江生水の郷委員会事務局

TEL:090-3168-8400

TEL:0740-25-6566

AM10時~PM4時

電車:JR湖西線新旭駅から循環バス利用10分(針江公民館下車)

車:国道161号 今津方面から高島市役所の標識を右折

※集落には大きな駐車場はありません。できるだけ公共交通機関を利用してください。

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