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「6月から10月までは、二週間にいっぺん芝刈ってね」とは我が家の大家さんからのお達し。二週間って、サイクル短くないか⁈と、初めは驚きましたが確かに、二週間もすればあれだけ頑張って刈り上げたのに、あっという間にボウボウ・・。と、いう事で枯葉が散乱して街全体が茶色くくすんできても、なおしっかり青々と美しい緑を保っている芝を刈るべく、今日も地味に奔走しています。
イギリスでは至る所に広大な公園、それも殆どが芝生で覆われたものが点在しており、私立は勿論、公立の学校でも校庭は芝生が基本であり、住居でもアパートやマンションの共有部分、一軒家の庭にも大抵芝生が張られています。ここまで徹底されていると、もはやこれはイギリスの文化と言って良く?実際にイギリス人を見ていると、芝への執着、愛着、誇りをヒシヒシと感じます。
勿論、二週間毎に刈る家ばかりではありませんが、シーズン中は毎日のように何処かで芝刈りをしていて、秋になると更に掃除機のようなもので、家の前の枯葉を吹き飛ばして、落ち葉の掃除までしている徹底派もいます。道路でも時々、洗車サービスのような大きなブラシがついた車体で、運転しながらゴミや落ち葉を跳ね除け、回収しているのを見た事があります。
が、この一連の芝を維持する作業、つまり芝刈りは中々の重労働なんです。イメージとしては、庭に掃除機をかける要領なのですが、まず、芝刈り機自体が結構大きくて重い。障害物があると刃が弾いて故障の原因になりますし、それ以前に機械が前に進んでくれないので、例えば我が家の場合、毎日ボタボタ落ちてくる林檎を、まず拾って回収する必要があります。その作業があるので、ウチは枯葉まで手が回らないのですが、他の家ではまず落ち葉をちゃんと集め、燃やす等して処理をしているところもあります。
それからようやく機械を始動させるのですが、一軒家の場合前庭と裏庭の両方があるので、前庭に芝を張らずコンクリや砂利の家は省けるのですが、ウチのように前庭も芝の場合、両方を刈らねばなりません。前庭を終えるとコンセントを差し替えて今度は裏庭まで機械を運び、芝まではみ出ている庭木の手入れを、大きい庭鋏を使って手作業でしなければなりません。その間、ボックスいっぱいになった刈り取った草を小まめにゴミ袋へ移し、集めたゴミはそのままゴミとして出す事も可能ですが、粗大ゴミを扱う集積所に持って行くと処分できるので、車で運んで持って行きます。
と、このように個人の家だけでもこれだけの労働量になるので、街の道路脇や公園、そしてただの空地ですら綺麗に芝生が張られているので、それらを定期的に整備するには途方も無い労力が必要になってくるのではと、他人事ながらも心配になります。実際予算の関係上か、地域によって常に綺麗に整えられている場所と、そうでない雑草だらけの場所があり、地域格差とはこのような景観にも生じるのだな、と妙に納得します。逆に、同じような規模の空地であっても、行政管轄下であるが故に綺麗で、個人の私有地の為、恐らく金銭的に手が回らず、荒れている場合もあります。
そういう芝を見るのは忍びないですが、白髪のお爺さんお婆さんになっても、なお自ら芝刈り機を操作するという、イギリス人のこの芝への飽くなき関心は、庭を美しく整えて愛でるという、ガーデニングの精神から派生しているのではないでしょうか。皆さんも、今後手入れの行き届いたイギリスの芝を目にした際は、その裏の苦労にまで想いを馳せると、更に感心するかと思います。