キーワードで検索
意外と知られていない、実は近い京都と滋賀
京都へ観光に訪れる方で、多く人が滋賀県を意識することはないでしょう。
まして大津が電車でわずか数分で着く場所ということも知らない人が意外に多いようです。
しかし、1000年以上昔から滋賀と京都は密接に結びついて存在してきました。京都~滋賀の至るところにその密接さを感じとれる場所があります。
例えば「大津」。昔の京都から見ると大津というのは、全国からもたらされる物資を琵琶湖を運河として機能させ、集約する京の外港としての位置づけだったことがわかります。
そして「琵琶湖疏水」もそんな滋賀と京都を結びつけるものの1つです。
その琵琶湖疏水や山科のディープな見どころを、サイクリングやトレッキングで案内するガイドツアー「和ウトドア」を主催されているF氏に、「秋の疏水を見に行きましょう!」とお誘いを受けましたので早速行ってきました!
さすがに11月後半ともなると朝の寒さが身に染みるようになってきました。
今日は琵琶湖疏水と言うことで、集合場所の山科駅へ行く道には小関越えを選択。
三井寺の真下を流れる第一疏水の取水口。今年の春から始まった「疏水船」が停泊していました。小関越えはこの疏水が貫く逢坂山と三井寺の間を越えていきます。
すぐ近くの「長等神社」の紅葉も門の朱色と競い合うくらいに。この感じだと疏水の紅葉に期待が高まります!
京都を救った琵琶湖の水⁉
さて、山科駅でF氏と合流し、まずは京都・南禅寺のある蹴上から疏水を遡る形でガイドが始まります。
実は京都は明治維新で恩恵どころか、1000年以上も続いた国の中心というポジションを東京に奪われ、衰退の極みでした。
狐や狸が市中を歩き回るくらいだったそうです。
そんな京都の現状を何とかしようと、当時の知事である北垣国道は「田邉朔郎」という現代で言うところの東大出身の若い技師を工事責任者として、
日本史上空前の規模ともいえる一大国家プロジェクトを立ち上げたのです。
それが山の向こう側にある琵琶湖の水を京都まで直接水路で持ってくるというもの。「琵琶湖疏水」の計画でした。
ねじりまんぽと言われるトンネルを潜り、南禅寺へと続く道から外れて右の小高い場所へ行くと「蹴上疏水公園」。
そこに「田邉朔郎」の銅像がひっそり立っています。
疏水はここから一気に約36mを駆け下りていくことで水力発電のエネルギーとなっているのです。遠くに平安神宮の赤い大鳥居が望めますよ。
疏水は第1疏水の他に第2疏水が明治45年に作られました。その合流地点がこの蹴上にあります。
疏水船の旅は、大津から7.8㎞を経てここにたどり着きます。疏水にあるトンネルの出口には明治の偉人達が揮毫した扁額が掲げられていますが、
田邉朔郎の扁額は写真でも隠れて見えにくい第2疏水の出口にコソッっと掲げられています。
歴史と紅葉に彩られた疏水を散策
そこから一旦三条通に出て、再び疏水沿いへ。
日本で最初の巨大土木プロジェクトだっただけ様々な❝日本で初めて❞が疏水の周りにはありました。
日本初の鉄筋コンクリート製の橋。言われなければわからないくらい普通の橋ですが、歴史的に重要なものだったのですね。
早速、脇には綺麗なモミジ。
F氏はこの疏水と共に人生を歩んでこられた方でした。生まれ育ったこの地域と、そこにあった疏水。その意味や歴史を多くの人に伝えたくて活動されているのです。さすが走り馴れた疏水の道。まるで自分の庭のようにスイスイとマウンテンバイクを走らせて行かれます。
紅葉のトンネルを自転車で走る姿がふと絵になって見えたので、思わずカメラを向けてしまいました。
こんなに素敵な小径が続く疏水の散策路。しかし思ったほど人はいません。そのため自転車でも気を遣うことなく走れます。
意外と穴場なのかな? しかしここにはゆったりした時間が流れていますね・・・。
ふらっと立ち寄った疏水脇のお寺。「安祥寺」と書かれていたように思いますが、普段はフェンスが閉められており、この日は1年で一度だけ地元の方でお寺の掃除をされる日だったそう。F氏も40年ぶり?に入ったというから何ともラッキー! ここにも人目にさらされていない綺麗な風景がありました。
ここでF氏からクイズが! 何の変哲もない公園でいきなり出された問題にたじろぐ私・・・。いろいろヒントをもらいながら答えにたどり着きましたが、何も無いようなところに実は秘密が隠れていることを知ってビックリでした。
橋の上からふと見ると、疏水船が大津へ向かってスイーっと走っていきます。乗っている方が羨ましい・・・。
他にも疏水の秘密の数々や、滋賀と京都の関係性を示すポイントを次々と自転車でちゃちゃっと走って連れて行って教えていただきました。
私も何度も通っている旧東海道。まだまだ知らないことが多くあったことで、いかに自分の目が節穴か思い知った感じです。
(ネタばれになってしまうので、ここでは秘密にしておきます!)
大混雑の観光地や、遠くまで行かなくても「魅力的な宝物は地元にたくさん落ちているっ!」そんなことを教えていただきました。
再び大津へ。疏水の上にある逢坂山の麓、「長等公園」からは琵琶湖が悠然と水をたたえていました。この水が滋賀を含む近畿の命や産業を支えているのだと、改めて感服します。まさにマザーレイクですね。
そうそう、この小関越えは京都から三井寺への参拝の道。
三井寺参拝に来た昔の京の方々も、こうやって琵琶湖を眺めたに違いありません。