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ローマ郊外にある森閑とした教皇の町”アナーニ”

田澤 龍太郎

田澤 龍太郎

イタリア特派員

更新日
2019年5月30日
公開日
2019年5月30日
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中世より何人かの教皇が生まれているアナーニ(伊語:Anagni)は、ローマの南東のチョチアリーア(伊語:Ciociaria)という起伏の激しい丘の上にある海抜424mの町で、ローマより約60kmのところに位置しています。静粛な雰囲気をそのままに中世から残すこの小さな町は、ローマ郊外にある小さな町の散策としては最適です。

アナーニは、十字軍遠征の失敗により国王と教皇の対立となったアナーニ事件(伊語:Schiaffo di Anagni)で良く知られています。1303年、当時のフランスの王であるフィリップ4世(伊語:Filippo IV di Francia)がローマ教皇のボニファティウス8世(伊語:Papa Bonifacio VII)に退位を迫るため、ここアナーニで捕えたと言われています。この事件が引き金となり、ローマ教皇の権力が弱まったとされています。

別名で教皇の町という代名詞を持つアナーニの見所は、11世紀のロンバルド・ロマネスク様式の大聖堂(伊語:Cattedrale di Santa Maria Annunziata)で、何度も増築を重ねたことからゴシック様式も取り入れられている複雑な構造となっています。もっと具体的に言えば、この町の守護聖人であるアナーニの聖マグヌス(伊語:Magno di Anagni)などの聖人が眠る地下霊廟がこの町で特筆すべき場所です。

※地下霊廟は基本的に写真撮影不可のため、今回の特派員ブログには掲載していません。

旧約聖書の契約の箱などを表現したフレスコ画がすべての壁や部屋いっぱいに広がり、イタリアでもロマネスク・ビザンチン芸術の傑作に数えられています。

目覚ましい色彩のフレスコ画は、13世紀頃にベネディクト修道士が描いたもので、地上にある大聖堂や地下霊廟も同様に床の細工は、13世紀~14世紀頃に活躍したコズマ一族の作品とされています。

そして、教会の前に広がる広場では、この町が丘の上に立つ町であることが実感できるように緑豊かなパノラマが眺めることができます。

アナーニの町の旧市街の中心となる通りは、ヴィットリオ・エマヌエーレ通り(伊語:Strada Vittorio Emanuele)で、いくつかのレストランやBARがちょっととあるだけで、閑散としています。この通りを歩けば、ジーリの家(伊語:Casa Gigli)と言われる特徴的な中世の邸宅を見かけることができるが、19世紀頃にスウェーデンの画家によって改修されているため、別名としてバルネコウの邸宅(伊語:Palazzo Barnekow)としても知られています。

また、先の大戦で亡くなられた方のための慰霊碑が置かれているカヴール広場(伊語:Piazza Cavour)とちょっとした安らぎの場所を提供してくれる思い出公園(伊語:Parco della Rimembranza)、何よりも中世からそのままにあるこの町並みは、時間が止まっているかのような錯覚に襲われます。

旅する皆さんにとって、この忘れられた町のような雰囲気を持つアナーニは、ローマからはちょっとした距離で、アクセスが面倒な場所にありますが、時間に余裕があれば1日かけてでも教皇の町の大聖堂が持つフレスコ画を見に訪れる価値は非常にあります。

【アクセス方法】

ローマ・テルミニ駅よりイタリア鉄道のトレニイタリアにて「Anagni-Fiuggi」駅下車後、アナーニの中心街まで接続できる連絡バスがあります。

(ローマのテルミニ駅からの所要時間約1時間30分)

詳しくはこちらより

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