• Facebook でシェア
  • X でシェア
  • LINE でシェア

ローマ旧市街にある美術の宝庫の美しい教会

田澤 龍太郎

田澤 龍太郎

イタリア特派員

更新日
2019年6月27日
公開日
2019年6月27日
AD

ローマの英知が宿るパンテオンより南東側にあるミネルヴァ広場(伊語:Piazza della Minerva)には、可愛らしい象の彫像があります。この彫像はローマが誇る建築家のベルニーニ(伊語:Gian Lorenzo Bernini)のエレファンティーノ(伊語:Elefantino)という作品で、知恵と教養の象徴である象の背中に紀元前6世紀のエジプトのオベリスク(神殿等に立てられた記念碑)を乗せています。

その広場の前に建つシンプルな白い造りの教会が、サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会(伊語:Basilica di Santa Maria Sopra Minerva)ですが、とてもシンプルな外観からは想像できない程、内部は美しく神秘的な教会で、美術の宝庫とも言うべきローマにある数少ないゴシック建築のファーサイドを持つ教会です。

教会の名称の一部にあるソープラ(伊語:Sopra)は、イタリア語で上にという意味があり、かつてはあったとされるミネルヴァ神殿の上に建つ聖なるマリアの教会という解釈になっていますが、実際にはエジプト神話の女神のイシス神殿の上に立てられています。当時、間違ってミネルヴァの神殿だと認識されていたため、そのまま現在の名称となっています。

小さな美術館とも言われるこの教会は、19世紀頃には大規模な修復が行われ、主祭壇の右側にあるフィリピーノ・リッピのフレスコ画が印象的なカラファの礼拝堂(伊語:Cappella Carafa)は、1489年頃に作られています。(注意:カラファの礼拝堂は撮影禁止のため、残念ながら写真を掲載しておりません)

この教会内部は、他の教会では見られない宇宙空間のような青くて濃い天井がとても印象的で、星を表す金色や聖人たちが描かれる空間に思わず感動を受けます。

この教会で何よりも驚かされるのは、ミケランジェロの彫刻作品の「十字架を担うキリスト(伊語:Cristo Porta Croce)」が目の前に置かれていることだろう。盛期ルネッサンス期の彫刻家の巨匠の作品がその場にさり気なく置かれており、偉大な作品をじっくりと見られるは何とも言えない贅沢を感じます。ただ、一つだけ違和感を持ってしまうのが、この銅像にある腰布で、後で付けられたものです。

そして、教会の主祭壇の下には、シエナの聖カテリーナ(伊語:Santa Caterina da Siena)の亡骸が安置されています。この聖カテリーナは、トスカーナ州の都市であるシエナの染物屋の娘として生まれ、18歳のときにカトリックの修道会の一つ、聖ドミニコ会の会員となっています。彼女は、病人や貧者の心に常に寄り添い、彼らを支えることに人生を捧げ、北イタリアを中心に旅をしながら布教したとされています。1380年、キリストと同じ33歳のときにローマで彼女は急死しています。そこでシエナの人々は、彼女の遺体がここシエナに戻ることを願いましたが、遺体すべてを運ぶことは検問を通過できないことから、頭部だけを鞄に詰めて持ち帰ることを試みています。それでも警備員に制止されてしまい、鞄の中身を見せることになったが、たくさんの薔薇の花びらが入っているだけったので、通過できるという奇跡が起きたと言われています。検問通過後、シエナに到着した時には、彼女の頭部が元通りにあったという伝説から聖カテリーナは、常に薔薇を持った姿で表されています。

このようにちょっとしたイタリア芸術をじっくり堪能できる教会がローマ旧市街に点在しています。特にこのサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会は、あのパンテオンの目と鼻の先にあるので、少しでも時間を確保して、訪れてみてください。

サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会(Basilica di Santa Maria Sopra Minerva)

住所:Piazza della Minerva, 42, 00186 Roma

公式サイト:http://www.basilicaminerva.it/

トップへ戻る

TOP