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【フランス リヨン便り n°6】
フランスでは、1月6日の公現祭(エピファニー)を祝って、フランジパーヌ(カスタードクリームとアーモンドクリームを合わせたクリーム)が入ったパイ菓子「ガレット・デ・ロワ(Galette des Rois)」を食べる伝統がある。お菓子の中にフェーヴと呼ばれる陶製の小さな人形が隠され、ジャック・ドゥミ監督『シェルブールの雨傘』のワンシーンにもみられるが、切り分けて食べたとき、フェーヴが当たった人は王冠が与えられ、祝福を受けて、幸運が1年間続くといわれる。
公現祭(エピファニー)は、ギリシャ語のエピファネイア(現れ)を語源とし、復活祭、聖霊降臨祭とならびキリスト教の最も古い祝日のひとつ。異邦人である東方三博士の来訪により救い主イエスが見いだされた、つまり公に現れたことを記念するもの。7世紀からの伝承によれば、東方の三博士は三賢王で、メルキオール、ガスパール、バルタザールの3人であり、3つの大陸(アジア、アフリカ、ヨーロッパ)の象徴とのこと。
元来、クリスマス(12月25日)から数えて12日目の1月6日に祝うが、20世紀以降はフランスも含めて、1月の第一日曜日を公現祭とするところが多い。
「公現祭の日になぜガレット・デ・ロワを食べるのか」という素朴な疑問が生まれるが、どうやらガレット・デ・ロワとキリスト教とは宗教的な関係はなさそうだ。ガレット・デ・ロワの起源は古代ローマのサートゥルヌスのサートゥルナ―リア(農神祭)に遡り、餐宴で豆をひとつ入れたお菓子食べ分け、豆(フェーヴ)が当たった出席者を宴の王とする習慣があった。フランスでは14世紀頃から公現祭に豆やコインを隠したガレット・デ・ロワを食べる習慣が生まれるが、この習慣は異教的とみなされ、廃止する動きが幾度とみられた。それでも今日まで継承されたのは、ガレット・デ・ロワと隠されたフェーヴが東方三博士の供物の象徴とみなされたからであろう。
ガレット・デ・ロワは、フランスの地方ごとにレシピが異なるが、最も一般的なのはフランジパーヌが入ったパイ菓子で、ブリオッシュ生地で作るものはガトー・デ・ロワあるいはブリオッシュ・デ・ロワとも呼ばれる。いずれも、フェーヴを入れる習慣があるが、日本でいえば、おみくじの大吉のようなものであろうか。宗教に関係なく、当たれば嬉しいものである。