キーワードで検索
欧州議会は1月29日、イギリスの欧州連合(EU)離脱協定案を可決しました。欧州議会議員たちはこれを受け、肩を組み、手を繋ぎ「オールド・ラング・サイン」(「蛍の光」の原曲)を歌いました。(参照:BBC)スコットランドの詩人ロバート・バーンズによる歌詞は、旧友との思い出を懐かしみ、別れても決して忘れはしないという内容。
1月は折しもバーンズの生誕を祝う「バーンズ・ナイト」がある月で、2020年もつい先日イギリス各地で開かれたばかり。(関連記事)バーンズの誕生日である25日のたった4日後に、まさかこんな形で歌われるとは、なんたる数奇な運命でしょうか。
これまでの経緯
2016年6月23日の国民投票で決定してから早や3年以上、EUとの離脱交渉は双方がその条件を巡って譲歩せず、難解を極めました。すでに辞任したメイ前首相は、EUとの再交渉の結果をまとめた協定の修正案を下院に提出するも、三たび否決され決着が着かないまま離脱期限の延長を幾度もEUに求めました。
これに業を煮やしたのが多くの国民や議員たち。2019年6月7日にテリーザ・メイが党首辞任を表明したことを受け、保守党党首選挙が行われた。EU残留派が有利と見られていた下馬評を覆し、7月23日に生粋の離脱派であったボリス・ジョンソンがまさかの新党首に選出されました。翌7月24日、正式に首相となった後は「合意なき離脱」も辞さない姿勢を一貫し、当初昨年3月末だった離脱期限は延長を繰り返しましたが、離脱は急速に現実のものとして認識されはじめました。
ついに実現、運命の瞬間
そして、これまでの混迷に終止符を打つ日を迎えた2020年1月31日午後11時(日本時間2月1日午前8時)、EUをついに離脱しました。まさに、今、この瞬間に、です。
ここ数日、ロンドンでは離脱を迎えるにあたっての関連イベントが盛んで、2017年より改修が続いているウェストミンスター宮殿の時計塔、ビッグ・ベンでも鐘を当日鳴らそうと離脱を推進する団体がファンド・レイジングをしていましたが、目標の50万ポンド(約7178万円)には到達せず、断念しました。
午後10時からは、ダウニング街(首相官邸)の壁にカウントダウンの時計がプロジェクターで映し出され、その他の政府機関の建物もライトアップされました。これと同時にジョンソン首相が「This is not an end but a beginning」とビデオ・メッセージで声明を出し、ブレグジット党代表のナイジェル・ファラージ氏が歓迎する、離脱支持者らによる記念イベントが議会前広場で開催されました。(参照:inews)
ビッグ・ベンの鐘とともに花火も打ち上げようと計画していましたが、許可が下りずこちらも断念していました。小雨が降りしきる中ユニオン・フラッグ(英国旗)を手に、嬉しそうに合唱しているイベント参加者の姿がありました。
こうした歓迎派の陰には落胆している多くのイギリス国民や外国人がおり、複雑な心境にならざるを得ませんが、歴史的瞬間とこれまでの推移をこうして現地で目の当たりにしてきたことは、貴重な体験だったといえることでしょう。