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イギリス(イングランド)政府は2020年7月より、新型コロナウイルスの発生によって受けたさまざまな規制の緩和を段階的に行ってきました。社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)がとりやすい施設に関しては、それ以前よりすでに規制が解かれていましたが、ゴルフ場もそのひとつでした。
2020年5月13日の英政府による発表で、イングランド内各地のゴルフ場は、7週間の閉鎖を経て営業再開を遂げました。(参照:"Coronavirus Update" England Golf 2020)2020年9月現在、残念ながら日本から英国への渡航は中止勧告が出ていますが、ゴルフ場は開放的な空間が広がり密集度も少ないので、新型コロナウイルスがひと段落した際には、比較的安心して利用できるレジャー施設ではないでしょうか。
そのときに備えて、今回はわたしの両親から聞いた昨年度までの体験談と情報をもとに、イングランド・ゴルフ場の利用方法や、その魅力をお伝えします。
意外にリーズナブルなイギリスのゴルフ場
東南アジアなど物価の安い国では、ゴルフ場でのラウンドも比較的安く済ませることができます。意外なことに物価が高いといわれているイギリスでも、実はグリーンフィー(利用料)がお得なんです。近年ではタイのような「ゴルフ天国」といわれてきた国と比べても、ゴルフ場によってはイギリスのほうが安いくらいだとか。
当然、施設によって異なりますがカート代が£25ほどで、12時過ぎの午後スタートならひとり£25〜35で回れます。体力に自信があり、電動カートを使わずに自力で歩いて回れるのなら、さらに節約できます(2019年の相場です)。
場所はロンドン中心街から電車などの公共機関を使って行ける、ロンドン近郊や観光もかねて北アイルランドやスコットランドといった、遠くの地方に手配するのも旅気分が高まっておすすめです。こちらの記事では、わたしが暮らしているクロイドン(関連記事)周辺にある、ロンドン郊外ゴルフ場の様子について紹介します。
日本のゴルフ場との違い
まずは日本やそのほかの国と、イギリスのゴルフ場のおもな違いをいくつかあげてみます。イギリスのゴルフ場は、メンバーでなくてもゲストとして利用できる「パッブリック・コース」の場合、安いだけあってクラブハウスがけっこう質素に感じます(プライベート・コースはさすがになにかと豪華です)。タイなどでは立派な受付にロッカー、シャワールーム、レストランなどが整っていることが多いのですが、イギリスのそれは簡素な小屋のような外見で、カウンターのようなものとテーブルがあるだけ、というケースもあります。
スタッフらしき人が見当たらないことも。料金などの問い合わせをしようと直接足を踏み入れたことがあるのですが、誰もいないので置いてあったパンフレットだけを持って、スゴスゴと帰った記憶があります。こういうときは、別棟などにある「プロショップ(道具やウェアを販売しているお店)」に聞くべきでした。
「プロショップ」の重要性とプレー予約方法
イギリスではこのプロショップが重要で、各種グッズの販売以外にも、たいていプレー当日の受付も兼ねています。プレーの予約や問い合わせについては、外部の専門予約サイトなどを使う手もありますが、わたしの両親はゴルフ場に日本から事前に直接メールで連絡を入れ、入国後は毎回電話で予約をしています。それも、はじめは数日前からの予約だったのが前日、ついには当日電話するようにまでなりました。
基本的にメンバーしか入れない名門コースでも、個別に問い合わせるとビジターとしてどうぞ、と快く迎えてくれるところも多いそうです。
日本ですとプレーのスタート時刻は分刻みで厳格ですが、イギリスではゆるやかな予約システム同様、料金さえ先払いで済ませてしまえばあとはご自由に、「テキトーにどうぞ」といった雰囲気です。
次にグリーン(芝)の状態ですが、これまたクラブハウス同様に安いだけあって、一面みずみずしい緑で覆われているわけでもなさそうです。ひどいところは夏には暑さで芝が枯れてしまっており、それどころか芝がすでにない、土がむき出しの部分があったりするようです。
ボールがいくらあっても足りない
イギリスはいわずと知れたガーデニング大国。町のあちこちに散らばる広大な敷地の公園を見てもわかるように、自然が大切にされています。そのせいか、イギリス人はあまり手を加えたくないのでしょうか。こちらのゴルフ場は、芝があまりきれいに刈り取られておらずボーボーだったり、よくいえば「あるがままの自然」、悪くいえば「手入れがいき届いていない」状態のことも。
そのため、ヒース(heath)というススキのような草の中にボールが入りこんでしまったりと、ロストボールになる確率がかなり高いようです。
また、他国では標準装備の全ホールが描かれているコースマップもなく、簡単な標識すら置かれていないので、進む方向すらわからなくなる状況もしばしばだとか。周りの環境との調和を重視するイギリス流のせいか、イギリスのゴルフコースは作りこまれたデザインではなく、「コースなのか単なる原っぱなのか、見分けがつかない」ほど簡素なものも多いと、わたしの両親は言っていました(記事中の描写はすべて私見です)。
コース上でさまざまな生き物(動物、近所の方、赤ちゃん)とご対面
一面の芝に覆われ緑豊かなゴルフ場では、他国でもリスや鳥、魚、亀といった動物や生き物が生息し、猫までのんきに闊歩していることは珍しくありません。
けれどイギリスのゴルフコースは近隣住民の散歩コースであることもあり、犬はもちろんのこと、ベビーカーを押すお母さん、はたまた乗馬スクールの馬まで通り過ぎていくので、はじめはカルチャーショックを受けました。プレーヤー以外の一般人が立ち入り可能なことにもビックリですが、そもそもコース内に公道が敷かれていることに驚きました。
コース内での移動についてですが、現地のプレーヤーは電動カートを利用しない人が多く、基本的には手引きカートやそのままゴルフバッグを担いで回るツワモノもいます。体格のよい欧米人ならともかく、わたしの両親のような年配のアジア人に勾配がきついホールは堪えます。
随所にあるなんらかのゲートもいちいちロックを手で外したり、「電動カートにキャディーがあたり前、手ぶらでプレー」といったゴルフ天国スタイルに慣れてしまっていると、なんでもセルフ方式のイギリススタイルでは体力を消耗してしまうかもしれません。
シャツはイン!厳しいドレスコード
最後にコース内での服装についてですが、さすがは紳士淑女の国、イギリス。各ゴルフ場で掲げている規定のドレスコードは、かなり厳しいです。たとえばとある名門コースでは「靴下は白オンリー、仕立てた(?!)半ズボンに襟付きのシャツ、裾は絶対に常に、毎回インで!!」という格好でないと、入れないことになっています。
実際には、オーソドックスなゴルフウェアであれば特に指摘はうけませんし、裾も女性の場合は、わたしの母なども普通に出していたので大丈夫でした。こちらの女性はドレスコードに準じた格好をしながらも、華やかな人をときおり見かけます。年配の女性プレーヤーでもバッグを担いでやり通すそうで、元気いっぱいです。
イギリスこそゴルフ天国
日本の都心在住ですと、ゴルフに行くのは1日がかりの大仕事ですが、イギリスでは空きさえあれば予約を柔軟に受け入れてもらえます。ゴルフ場近くに住む地元の人たちなどは「会社帰りにハーフだけ」といったかたちで、気軽にプレーを楽しむ人もいます。
なによりイギリスでのプレーは気候がすばらしいです。冬は別ですが、夏には過ごしやすい気温で爽やかな晴天のもと、日没も遅いので夜の21時過ぎまでプレーできます。途中、雨で切り上げになってしまった場合は、次回使えるクーポンをくれるところもあります。
イギリスも他国と同じく休憩などはなく、全ホールを一気に回るスループレーなので、午前か午後の半日で終わり、残りの半日を有意義に使うことができます。セルフサービスに慣れてしまえば、イギリスこそ「ゴルフ天国」として快適なプレーを楽しめそうです。
なお、予約方法や料金、服装、コース内での行動、移動などにつきましては、新型コロナウイルスのあとでは、記事内の状況と異なる点が多々あるかと思います。今後日本からイギリスへの渡航解除が出て現地を訪問される際は、イングランド・アマチュアゴルフ協会などのウェブサイトから現状確認をお願いします。