• Facebook でシェア
  • X でシェア
  • LINE でシェア

本物の芸術家に出会える!硲伊之助美術館

松岡 理恵

松岡 理恵

石川特派員

更新日
2021年2月3日
公開日
2021年2月3日
AD

金沢の周りはすてきな温泉だらけ。疲れた週末にふらっと温泉に行く地元民が多いです。

「加賀温泉郷」は金沢から車で1時間20分ほどで着くので特に人気。

加賀温泉郷の住宅街には、残念ながら地元の人にほとんど知られていない

すごい美術館があります。

その名は!

硲伊之助(はざま いのすけ)美術館

木々に覆われた小さな丘の上にぽつんとある美術館は硲さんのかつての家の隣に作られました。

1895年に東京で生まれた硲伊之助さんは、かつては岸田劉生と腕を競いあったという絵描きです。

26歳のときから約15年間ヨーロッパに滞在し、あのマティスに師事!!

49歳で東京美術学校(現在の藝大)の助教授になったあと、55歳で藝大を辞めて、マティスに会いにフランスへ。

その翌年、日本初のマティスやピカソの展覧会が開かれました。

この展覧会ができたのは硲さんがいたからこそ。

戦後の日本にヨーロッパの巨匠を紹介するという大仕事です。

そして帰国後、なぜか九谷焼を始めたそうです。

晩年は絵画よりも陶芸に自分の芸術の可能性を見たようです。

硲さんは67歳で九谷焼発祥の地「加賀」に移住し、82歳で永眠。

その住んでいた場所に美術館が建ちました。

美術館では現在も九谷焼を作っています!

現在はお弟子さんの硲紘一さんが美術館の館長をされています。

そしてこの煙突! 陶芸の釜の煙突でしょう。

ここでいまも硲さんから受け継いだ九谷焼が制作され続けているのです。

芸術が過去から現在へと受け継がれている場所だからか、ドラマティックな気配に満ちています。

硲館長さんは美術館のすぐそばに住んでいて、インターホンを押すと、そばの家から歩いて出迎えてくださいます。

なんというアットホームさ!

絵の解説や硲さんの生涯について館長さんにたっぷり質問でき、すてきな美術館をひとりじめした気分になれました。

硲さんはマルチアーティストの先駆け。

油絵、版画、本の装丁、『ゴッホの手紙』という本の日本語訳もされています。

直木賞で有名な直木三十五の本の装丁を手がけるなど、著名な方々と交流があったそうです。

九谷焼の大皿を硲さんが絵付けした作品が並んでいました。

マティスの絵に通じる躍動的なデザイン。

そして色が皿からあふれ出てくるような活気のいい色をしています。

九谷焼の特徴はなんといってもその色鮮やかさ。

絵の具はどうしても絵にすると色あせてしまうけれど、陶芸の色は不滅に思えます。

そうした点からも、油絵から九谷焼に心を移したのでしょうか。

マティスに師事するほどの画家が陶芸に魅せられ、東京でのアートの仕事から遠ざかり、その発祥地である田舎に移住して晩年を過ごしました。

シニアになっての第二の人生。

まさに現代の日本人が憧れる、精神的な豊かさを求める生き方。

そんなことをお弟子さんで館長さんの硲さんと話す至福の時間。

知られざる偉人が日本にはまだまだいます。

歴史に名を残すほどのすばらしいことをしたとしても人々はその人を忘れ去ってしまいます。

だとすれば、いまを懸命に生きて、自分の本当にしたいことをしていくのがいいと思います。

令和のコロナ禍だからこそ、すごく響いた出会いでした。

硲さんの油絵の女性は誰がモデルなのでしょう。

昭和の女性の品のある色香が時を越えてまぶしく惹きつけられました。

この美術館にはピアノがあって、コンサートをすることもあるそうです。

山間の美術館で聞く音色はとてもロマンティックでしょう。

硲さん作品のユーモアとかわいらしさと品のバランス

九谷焼としては非常に珍しい土の色の作品。

この色を出すのにかなりの試行錯誤があったでしょう。

とてもお気に入りの一枚。

私も絵と陶芸の絵付けをしています。

ラジオのパーソナリティもしていて、金沢市の行政機関で地域おこしをし、商店街のためのイベントを手がけ、YouTubeも作りとにかくいろんなことをしています。

どの仕事も楽しいけれど、一本に絞った方がいいのではないかと常に迷いながら生きています。

この美術館に来て、かつて地元に住んだ硲さんから、「もっともっと挑戦せよ」と背中を押された気がしました。

この美術館は本当に知る人ぞ知る場所なのでどうかこの記事を読んだ方は訪ねてほしいです。

自分にだけ語りかけてくれるようなそんな美術との出会いを保証します。

■硲伊之助美術館

・TEL: 0761-72-0872(硲伊之助美術館)

・住所: 〒922-0822 石川県加賀市吸坂町4-3

・アクセス: JR大聖寺駅より車で約5分、JR加賀温泉駅より車で約7分、北陸自動車道加賀I.C.より車で約10分

・見学可能時間: 10:00~17:00/標準所要時間60分

・見学できない日: 火曜、水曜、木曜

※休館日でも連絡すれば見学可能

・料金: 大人500円、高校生以下無料

※本記事の写真は許可を得て掲載しています

トップへ戻る

TOP