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先月2021年1月以来、イギリスで家庭学習(関連記事)を続けているわが子の勉強をつきっきりでみるのはたいへんですが、そのぶん嫌でも学習内容を知ることになり、これがなかなか勉強になります。
先週は課題プリントに「Black History Month(黒人歴史月間)」という見慣れぬ文字を見つけました。1915年に始まったこの記念行事はまたの名をAfrican American History Monthと言い、黒人への人種差別が特にひどかったアメリカで生まれたものです。
黒人歴史月間の成り立ち
1976年からは米大統領により、毎年2月を黒人歴史月間にすると正式に指定されましたが、その起源については自身もアフリカ系米国人で、ハーバード大学の歴史家だったカーター・G ・ウッドソン(Carter G. Woodson)博士による功績が大きいです。
博士は人種偏見の弊害を明らかにするだけでなく、アメリカをはじめ世界中のアフリカにルーツを持つ黒人による、さまざまな貢献をたたえることも目的として1926年に「national Negro History week ニグロ歴史週間」を提唱しました。この週間が月間に延長され、今日まで広く浸透するようになりました(参照:History.com Editors "Black History Month" History 2021)。ちなみに、2月となった理由は奴隷解放宣言によって奴隷を解放した、第16代米大統領のエイブラハム・リンカーンと、元奴隷で奴隷制度廃止論を唱えて積極的に活動を展開したフレデリック・ダグラスの誕生月だからです。
イギリスでの黒人歴史月間
イギリスの民族構成は2011年統計で(10年ごとの見直しなので、ちょうど今年2021年が再調査となりそうです)白人が86%と圧倒的多数ですが、そのほかにもアジア系が2番手で7.5%、黒人系は次に多い3.3%(出典:"Population of England and Wales by ethnicity" GOV.UK 2020)ほどいます。
この黒人歴史月間を正式に祝う国はカナダとイギリスだそうですが、私はこれまでまったく見聞きしたことがありませんでした。それが今年はこうして、わが子の課題により初めて知る機会を得ました。
小学校で教えられる黒人活動家:ローザ・パークス
学校から用意された音声ビデオになにげなく耳を傾けていると、どうやらバス車内での白人と黒人のやりとりのよう。その昔、アメリカではトイレやバスの席などが白人とそのほかの人種では区別されていたという話を、そういえば耳にしたことがあります。
けれど日本で生まれ育った私には、あくまでもその程度の知識しかありません。それを、アメリカやイギリスではこうして明確に、過去に黒人がどのように世間から扱われてきたかということを授業で、はっきりと教えています。
今回の教材で取り上げられていたのは、もともとは一市民に過ぎなかった黒人女性、ローザ・パークス(Rosa Parks)についてでした。1955年の12月1日、彼女はバス車内で白人の乗客に席を譲らなかったという理由で逮捕、罰金を科されました。当時、白人と黒人が座る席は明確に分けられており、パークスさんがとった行動は規則違反でした。
市民が政府を動かすまで:デモ運動
パークスさん逮捕に異議を唱えた人々はバスの乗車拒否をし、代わりに歩いたり自転車を使ったりしてバスのボイコット運動を始めました。381日間も続いたこの運動はバス会社に多大な経済的損失を与え、ついに政府も動かざるを得なくなりました。
このような人種による分離は数あるうちのひとつに過ぎませんでしたが、とりあえずはこの運動以降、バス車内では誰でも好きな席に座ることが許されました。この大きな運動のキッカケとなった、小さな抗議の行為の主であるローザ・パークスは、のちに「公民権運動の母」と呼ばれるようになりました。
アメリカのいくつかの州では、パークスさんが逮捕された12月1日と誕生日である2月4日は「ローザ・パークスの日(Rosa Parks' Memorial Days)」として祝日となっています。
わが子の課題が出されたのも先週の2月4日でしたが、これで納得がいきました。この日は各自のプリントだけでなく、オンライン授業でも先生による講義がありました。日本でもしこういったテーマが取り上げられたとしても、どこか遠い世界の話、という感じが否めずピンとこなかったかもしれませんが、いまのわが子が通う学校ですと生徒の中には黒人もいるので、いったい彼らはどういった気持ちでこの話を聞いているのだろう、と気になりました。
日本を含め、どこの国にも直視したくない過去の過ちや出来事があるはずですが、今回の授業のように事実を教え教訓にさせることは、とても大切だと思いました。