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ここひと月ほど、なんだか周りが全国的にザワザワしているイギリスです。それも、珍しくコロナとは違う模様。一番初めの「異変」に気づいたのは、先月6月の上旬に受けたとある日程変更のお知らせから。
子供の習いごとながら、年次総会というけっこう重要なオンライン会議が、当初予定されていた日から変えるということでした。その理由というのが……
「その日はイングランドの試合があることを、すっかり失念しておりました。謹んでお詫び申し上げます」と、わざわざメール本文とは別の文書が添付されるほどの恐縮ぶり。
コロナで延期になったユーロ2020
このときはまだまったくなんのことか不明でしたが、その頃イギリスを含む周辺の欧州諸国では、16回目のサッカーUEFA欧州選手権が開催されていたのでした。「ユーロ2020」というのは、今年のオリンピックが「東京2020」となっているのと同じく、こちらの大会も本来は昨年の2020年に開かれるはずが、コロナで1年延期されたからです。
全部で24チームが出場していますが、イギリスだけは文化の違いなどからもともと国家統一のチームがなく、今大会では同じ国ながらイングランド、ウェールズ、スコットランドの3つに分かれて参加しています。ヨーロッパにおいてこの大会は、FIFAワールドカップと同様に重要なものだと認識されています。
今年2021年は晴れて開催にいたり、2021年6月11日からいよいよ初戦が行われたのですが、イギリスはサッカー発祥の地で全体のレベルも高いはずなのに、なぜだかこちらの大会とは縁がないようで、1960年の第1回からなんと現在まで優勝争いに絡んだことはありませんでした。
それが、準々決勝でウクライナ代表に快勝して6大会ぶりにベスト4進出を果たし、先週水曜日の七夕7月7日には、ついに初の決勝進出まで果たしました。
盛り上がる国民、世間の様子
ある日も車の屋根にふたつ旗をたなびかせ、車体の側面、ドアにはまるで商業用の広告並みに大きなロゴをつけたド派手なクルマが通りかかったので、思わず見てしまうと、運転席の窓がスルスルと開き、運転者がこちらに手を挙げてくるではないですか。
まさかの子供の学校の父兄で、グッと親指まで立ててきて熱狂っぷりが伝わってきました。準決勝を勝ち抜いた翌朝には、なんと旗がひとつ追加され、3つに増えていました‼︎
その頃から、校長直々に「異例のことではありますが、本日の子供たちへの宿題は通常のものではなく、イングランド・チームを応援するということにしていただきたい。特に保護者の皆さん、ぜひ観戦しましょう!」という熱いメールが届いたり、決勝戦の頃には教頭から「夏休みも間近なので、宿題はちょっと置いといて……今夜の試合でも子供たちに応援させるのはどうでしょうか」などとやはり連絡が来たり、大人の、特にイギリス人男性の熱の入りようは尋常じゃない感じです。
習いごとでも、試合の時間にかぶってしまっていると後日「内心どうしようかとヒヤヒヤしていたが、幸いにも少しは観戦する時間がわずかに残っていてホッとした」と主催者からの発言があったり。
試合中継を大型スクリーンで流すパブの飾りつけも、書き入れどきとばかりに日増しに派手になり、なんの変哲もないただの歩道にも国旗のバナーが張りめぐらされたりと、町全体がにぎやかになっていきました。
新たな祝日なるか⁈すべては決勝戦に
こういった市民の言動は、いつしか新たな祝日を制定するかどうか、という大きな話にまで発展し、準決勝戦後の先週7月9日金曜日にはイングランドが優勝した場合、8月に国民の休日を作るという嘆願書に32万人の署名が集まったと、9日付の英BBCニュースが報じました。
ただ、こちらは過去にも2018年のW杯ロシア大会時に同様の事象が起きており、実現にはいたらなかったので今回もどうなるかは、まずは優勝してみないことにはわかりません。
ただ、同BBCによると、イギリス労働組合会議の議長(TUC General Secretary)O'Grady氏は「試合翌日の月曜日に部下が遅刻してきても、上司は大目に見てあげて」と語り、大手スーパーのテスコやコープなどが、従業員のために試合当日の11日は通常より早い時間で閉店させるなど、労働者への配慮があちこちで見られます。
さて、こちらでは今晩7月11日の現地時間20時より、ロンドン北西部にあるサッカー専用のスタジアム、ウェンブリー・スタジアムにてキックオフです。イギリスのひさびさの明るい話題、日本では有料の衛星放送にて生中継、配信がされるようなので、観れる方はぜひご一緒に、この熱気を感じてみてください。