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【フランス リヨン便り n°62】
こんにちは、マダムユキです。フランスのリヨンからお届けしています。
1934年、フランスの美食評論家で「食通の王」として知られるキュルノンスキーさんが「リヨンは美食(ガストロノミー)の都である」と讃えてから、世界中の美食家たちがリヨンの食文化に注目するようになりました。こうして、リヨンは「美食の都」として世界に名を広め、高級フランス料理から伝統料理まで、地産地消にこだわったクオリティの高い料理を堪能できる町として人気を集めています。
そんなリヨンで、2年に一度、食への愛着を結集させたビッグイベントが開催されます。「シラ」の名で知られる世界最大級の「国際外食産業見本市」です。
当初のスケジュールでは、2021年1月末に開催が予定されていましたが、新型コロナウイルス変異株による感染リバウンドが懸念され、5月末に延期となりました。3月に入ってまもなく、5月末時点でも大型イベントを開催できるまで感染状況が改善されるのは難しいだろうという見込みから、9月末に再延期されました。
シラの主催者はオンラインでのイベントではなく、PCR検査陰性あるいはワクチン接種済みという条件が付されたとしても、対面で商談ができる、マスクを外して世界の食材を試食できるという可能な限りベストコンディションで、リアルなイベントを開催することを望みました。
それが実現したのです。
シラ外食産業見本市に行ってきました
秋晴れで迎えた初日。待ちに待ったシラを訪問しました。
▼リヨン郊外にある「EUREXPO LYON」展示会場
「EUREXPO LYON」展示会場までは、公共交通機関(シャトルバスやトラム)が整備されています。リヨン国際空港からも、パリやマルセイユを結ぶTGV(高速列車)駅のパール・デュー駅やペラッシュ駅からも所要時間は40分ほどです。
自家用車で来場することも可能です。広大な駐車場が用意されていますが、会場周辺の道路が混み合うため、余裕をもってでかけたほうがよいです。
▼中央に掲げられた日本の国旗
シラ会期中、パン、パティスリー、料理など、いろいろな分野のコンクールが行われます。
今回も、地域予選を勝ち抜いた日本代表チームがパティスリーと料理のコンクールに参加します。日本は常連国なんですよ。だからでしょうか、中央に日本の国旗が掲げられていました。
▼衛生パスの提示を求める看板
▼ビジネス関係者限定と表示された看板
これまでと違うのは会場前に並べられたテント群です。
入場前に、衛生パス(※)を提示し、次に手荷物検査を受けて、最後に、入場バッジを提示して、会場内に入ることができます。
衛生パスも入場バッジもQRコードを読み取るだけで、とてもスムーズです。
▼展示会場マップ
展示会場マップをご覧ください。14万平方メートルの展示面積すべてを占有するという、世界的にも大規模なイベントです。出展社はホテル、レストラン、ケータリング、店舗用設備・機器、ディスプレイ、食品・飲料、食品加工、家庭用品、食卓用品、陶磁器、調理器具など幅広く、食のイベントを超えた「食の祭典」と称される所以です。
前回の2019年には3770社が出展、22万5000人以上の業界のプロフェッショナルが集まりました。
今回の2021年はヨーロッパ圏外からの出展社、来場者が少なかったものの、コロナ禍でありながら、2116社が出展、来場者数は14万9000人以上を記録しています。
パン&パティスリー展示ホールは楽園だ~
パンデミックが宣言された2020年3月以来、久しぶりに大規模な見本市です。
1日ですべてを見て回ることはできないほど広いので、初日は、パン&パティスリーの展示ホールを訪問することにしました。
パンは、日本人のごはんに相当し、欧米人の主食なのですが、料理にスポットライトがあたりがちで、どちらかといえば脇役です。
脇役なのですが、パンがおいしくないと、せっかくの料理も物足りなく感じます。だから、おいしいパンをサービスするレストランは常連客が定着するように、脇役にみえても重要なアイテムです。
それを裏付けるかのように、パン部門は見本市のなかでも広範なスペースを占有し、例年、出展社数も来場者数も高い数字を記録しています。
▼1872年創業の小麦製粉会社Moulins Joseph Nicot
パン(特にハード系)の基本材料は、小麦粉やライ麦粉といった穀物粉に水、酵母、塩など、きわめてシンプルです。おいしいパンづくりには、まず小麦粉のクオリティが大切です。会場内で大きな場所を占めていたのが製粉会社のブースです。小麦粉へのこだわりが伝わってきました。写真のように大きな製粉会社はパン製造も営み、自社製小麦粉を売りものにしています。
▼パン調理機器リーダー企業Bongard
パンやお菓子の製造に必要なプロ向け調理機器類のブースも訪問者でにぎわっていました。
▼冷凍パンのリーダー企業Europastry
パン作りのノウハウがなくても、冷凍パンをオーブンにいれるだけでおいしいパンが焼きあがるという、うれしい時代です。冷凍技術、焼き上がりの品質や味が追求され、冷凍食品は日進月歩しています。写真はeuropastry社のブースで、世界80ヵ国に販売網をもち、パン文化を広めている冷凍パンのリーダー企業です。
▼業務用・小売用チョコレートメーカーValrhona
リヨンから車で1時間ほど南下したところ、北ローヌワインのメッカでもあるタン・レルミタージュという町に1922年に創業したチョコレートメーカーValrhonaのブースは、商談するビジネスマンで埋まっていました。伝統製法でつくられるValrhonaの製菓用チョコレートは世界のトップパティシエやショコラティに愛用されています。また、Valrhonaはチョコレート技術専門学校を設立し、ショコラティエの養成にも力を注いでいます。
写真では伝わらないのですが、Valrhonaはシラのメインスポンサーだけあって、広い展示スペースを確保していました。
▼高級チョコレートメゾンWeiss
リヨンの隣町サン・テティエンヌで1882年に創業した老舗チョコレートメゾンWeissのブースも商談のひとだかりでした。
Weissといえば、カカオ豆の選別、焙煎、粉砕、精製、精錬、包装までのすべての工程を自社で行う「ビーントゥバー(Bean to Bar)」チョコレートで人気を博していいます。
▼パン屋さんのショーウインドーに魅せられて
フランスでは、野菜・果物はマルシェで、保存食品や日用品はスーパーで、パンはご近所のパン屋さんで、という人が多いです。写真は典型的なパン屋さんの内観で、どのパン屋さんも似たような陳列なのですが、どのパン屋さんもパンがおいしく見えるから不思議です。
▼ハード系のパンが勢ぞろい
ハード系のパンは、クラストと呼ばれる外皮が堅く、パリッとした食感のパンです。バケットが代表例で、噛みしめるほど味わい深いパンです。料理やチーズ、シャルキュトリー(ハム、サラミなどの肉加工品)と一緒に食するのに最適ですね。
▼チョコチップ入りやチョココーティングされたクロワッサン
バターをパン生地に練り込んで焼き上げたクロワッサンは、外がサクサク、中がふんわりした食感で、ほんのりした甘みが口に広がる、代表的なソフト系のパンです。ハード系のバゲットとならび、フランスで最も消費されるパンのひとつ。ところで、20年以上フランスに住んでいますが、写真のチョコレートフレーバーのクロワッサンをはじめて見ました(ただ、カロリーが気になるな~)。
▼ソフト系の定番カップケーキ
3時のティータイムにぴったりですね。
▼ドーナツのウォールアート
ドーナツも展示しだいではアートになります! ドーナツ屋さんのブースでした。
▼とってもキュートな展示
スイーツ系のブースは総体的に展示が凝っていましたよ。
▼ドルネ兄弟にバッタリ
ホール内を一周したところで、パン職人のコンクールが始まる時間になりました。
「コンクールの取材に行かなければ……」と、小走りしていたところにすれ違った男性ふたり組。
「あっ、ドルネ兄弟だ!」
前回のブログの「リヨンストリートフードフェスティバル https://tokuhain.arukikata.co.jp/lyon/2021/09/post_352.html」でも紹介していますが、今度はシラで再会するなんて……、「私たちご縁がありますね」。図々しくも、また写真をお願いしたら、ご覧のように笑顔で写真ポーズ。ご自身のスイーツ店「Dorner Frères https://www.dorner-freres.fr/」でも、お菓子を焼いたり、接客したり、電話注文を受け付けたりと、いつも忙しいおふたりですが、いつも笑顔なんです!
このように、会場内は熱気と甘い香りと、シラが開催されたという嬉しさに包まれていて、パンは欧米人の主食であり、パティスリーも日常の食生活に欠かせないアイテムであることを肌で感じました。
次回はパン職人のコンクールの様子をご紹介します。お楽しみに!
▶シラ外食産業見本市(SIRHA LYON)
・会期: 2021年9月23日~9月27日
・会場: EUREXPO LYON
・公式サイト: https://www.sirha.com/en
マダムユキより
※「衛生パス(Pass Sanitaire)」とは、ワクチン完全接種済みの証明書あるいは72時間以内に取得したRT-PCR検査または抗原検査に基づく陰性証明書あるいは過去11日前から6ヵ月以内に感染回復したことを示す証明書をもって交付されるQRコードのことです。