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【フランス リヨン便り n°67】
こんにちは、マダムユキです。フランスのリヨンからお届けしています。
先日、ドーヴィル観光局のステファンさんから電話をいただきました。
ステファン:マダムユキ、ボナネ・エ・ボンサンテ*(あけましておめでとう)!
マダムユキ:あら~、ステファンさん、メイヤーヴー(あけましておめでとう)!
ステファン:リヨンもコロナ感染者数が急増しているけど、マダムユキは大丈夫?
マダムユキ:おかげさまで、体は元気なのですが、オミクロン株の出現で心がしょぼしょぼです…
ステファン:そうだと思ったよ、ノルマンディ地方も感染者数が急激に増えているよ、2021年とは比較にならない数だ
マダムユキ:うなぎのぼりよね
ステファン:うなぎ?
マダムユキ:…(なんて説明しよう)
ステファン:ところで、今年もドーヴィルに招待したいな!
マダムユキ:わ~、行きます!
ステファン:あのとき(2021年3月)は、飲食店の店内営業が禁止のうえ、夜間外出制限が発せられていたから、町が閑散としていたけど、ぜひリゾート地として活気あるドーヴィルをみてほしいんだ
マダムユキ:お洒落なマダムが日傘を差して、犬を連れて散歩しているのかな?
ステファン:いまは冬だから、日傘よりは雨傘だけどね。それよりレ・フランシスケーヌがバージョンアップしたよ
マダムユキ:わ~、絶対、行きます!
ステファン:アンドレ・アンブール美術館もオープンしたよ
マダムユキ:わ~、わ~、絶対、絶対、行きます!
ステファン:そういって、来なかったことが何回かあったような…(不信感)
マダムユキ:う~~~(うめき)
*直訳すると「健康でよい年になりますように」
直訳すると「ご多幸をお祈りいたします」
オミクロン株が猛威を振るい、旅行業に従事する身としては、のれんはかけても客のいない「開店休業状態」が続き肩を落としていたところに、ステファンさんからの電話で元気を取り戻しました(げんきん過ぎるぞ~)。
新年の旅ブログはリヨンではなく、ドーヴィルからスタートです。
昨年の春、ドーヴィル観光局のステファンさんがオープンしたばかりの「レ・フランシスケーヌ」を見学しないかと誘ってくれました。ちょうど新型コロナウイルス感染の広がりで人の行動が制限され、旅行などできる環境になく、仕事が全くなかった時期だったので、ドーヴィルを訪れる時間が十分ありました。
リヨンから列車に揺られ、パリ経由でドーヴィルへ(列車の旅は楽しい~)。ステファンさんが誘ってくれたおかげで、長年あこがれていた高級リゾート地ドーヴィルを訪問することができたのです。そのときの様子を旅日記としてブログに綴っていますので、お時間のある方はご訪問くださいね。
そうこうしているうちに、当初の目的だった「レ・フランシスケーヌ」は未定稿のまま、新年を迎えていました(泣)
レ・フランシスケーヌを見学してから早や10ヵ月。ステファンさんからの年賀コールで最終回がまだだったことを思い出し、急がなきゃ! と慌ててブログ投稿した次第です。
まずは、レ・フランシスケーヌのメインホールをご覧ください。
まるで高級ホテルのレセプションホールではありませんか!
▼レ・フランシスケーヌのメインホール
レ・フランシスケーヌとは
レ・フランシスケーヌをフランス語表記すると「Les Franciscaines」。フランシスコ修道会の女子修道者を意味します。1875年、2人のフランシスコ会女子修道者(アデルとジョゼフィーヌ)がドーヴィルに女子修道院を建設しました。修道院はいろいろな役割を担っています。
・女子修道者のための修道院
・孤児院
・無料診療所(後に私立病院に発展します)
・女子教育施設(のちに男女共学の職業高校になります)
余談ですが、男子教育は女子教育よりも早くフランスの公教育制度に組み込まれました。一方、女子教育においては、20世紀に入るまで、「良妻賢母」育成を目的とした、料理や針仕事に重きが置かれていたのです。女子教育施設はフランス語で「école ménagère」と称され、直訳すると「家事学校」となります。女子修道会が女子教育を担うことが多く、宗教的な教育も行われましたが、「良妻賢母」のみならず、女子の知育にも力を注いでいました。
ドーヴィルのフランシスコ会女子修道院は、創立後140年もの間、祈りの場としてのみならず、多目的な役割を担ってきたのですが、建物の老朽化が進み、改修する予算に乏しかったこともあり、2011年に修道院の建物をドーヴィル市に売却(400万ユーロ=約5億円)しました。
ドーヴィル市は、歴史遺産として高い価値をもつ女子修道院建物を修復・増築し、ドーヴィルの文化拠点にするというプロジェクトを立ち上げました。同年、ドーヴィル市は、画家アンドレ・アンブールの作品寄贈を受け、アンドレ・アンブール美術館の設立プロジェクトも加わりました。
▼レ・フランシスケーヌの外観
▼アーケードとピラスターで新古典主義を彷彿させる調和のとれた側壁
2021年、ドーヴィル市は、1700万ユーロ(=約21億円)の予算を投じて、ドーヴィルの住民のみならず、セカンドハウスでバカンス楽しむ人たちや短期旅行者も利用できる多目的文化センター「レ・フランシスケーヌ」をオープンさせました。
修復工事を担当したのは、180の応募プロジェクトなかから選ばれた「モアティ・リヴィエール事務所(agence Moatti-Rivière)」です。伝統を継承しながら、革新的な要素を取り入れ、オートクチュールデザイナーのジャン=ポール・ゴティエをはじめとする著名人のパリの豪邸や、エッフェル塔2階部分(フランス式1階)の改装を手がげて高い評価を得ている建築事務所です。
モアティ・リヴィエール事務所は、レ・フランシスケーヌの工事を担当するにあたって、「修道院という閉ざされた施設を公共に開かれた場にする」という使命のもと、次の点に重点をおいたそうです。
・歴史遺産とそのアイデンティを壊してはならない
・オブジェも芸術作品も書籍も音楽も映画も、あらゆる文化要素が切り離されることなく結集された場でなければならない
・訪問者が館内で自らの「知識の道」が築けるような設計でなければならない
・開かれた空間(オープンスペース)や閉ざされた空間(個室)を状況に応じて利用することによって、訪問者がいつもでくつろげる場でなければならない
伝統と革新を融合させた建築
修道院といえば回廊。美しい回廊は観光客に人気ですよね。
レ・フランシスケーヌは、3階層の回廊をそのまま残して、回廊に囲まれた庭園がメインホールに生まれ変わりました。驚きなのは、回廊に囲まれた、広さ400平方メートルの庭園部分にガラス屋根が設置されたことです!
ガラス屋根を支える鉄筋の柱は19世紀の建造物にもしっくり馴染み、上を見上げれば自然光を拡散させるためにガラスのパイプが巨大シャンデリアのように天井からぶら下がっていました。なんて斬新なアイディアでしょう!
このメインホールは読書室やイベント会場として利用されます。
▼かつては屋外だった場所がガラス屋根で覆われ、室内空間になりました
▼天井からぶら下げられたガラスのパイプが自然光を拡散させ、室内により多くの光が差し込みます
長方形をした広さ253平方メートルの礼拝堂は、ステンドガラスを巧みに利用して、オーディトリアムにリニューアルされています。映像・音響の最新設備が用意され、最大で230人を収容できるミニシアターとしても、カンフェランスルームとしても使用できます。階段式座席前には舞台空間が設けられていて、演劇の実演も可能です。
「礼拝堂はカクテルパーティ会場としても使用できますよ」とのことです。実は座席は可動式で座席を移動させれば、縦9.5m、横26mの広々としたスペースができて、立席で600人を収容するイベント会場になります。カクテルパーティでは400人まで収容できます。
▼落ち着いた色調のオーディトリアム
▼壁のステンドガラスがかつて礼拝堂であったことを物語っています
レ・フランシスケーヌでは、芸術を身近に感じてもらおうと、近代アートの特別展を充実させています。訪問した時、ちょうど、巨大な鏡のオブジェが設置されたところでした。美術作品を至近距離で鑑賞できるように配慮されています。レ・フランシスケーヌのマーケティング担当者がいろいろと説明してくれましたが、あれ~、また、マダムユキの姿が見えませんね~。
▼特別展と内装を説明するレ・フランシスケーヌのマーケティング担当者
▼人の話を聞かずに写真撮影するマダムユキ(ごめんなさ~い)
回廊の廊下部分を利用した読書室です。WiFiも完備されています。誰でも閲覧室として利用できるほか、飲食も許可されています。つまり、喫茶コーナーっていうこと? はい、つまりそういうことです。
▼奥のカウンターでコーヒーや軽食が販売されています
2階が市立図書館です。年会費を支払えば無料で本やCDを借りることができます。写真をご覧ください。図書館というよりも邸宅の書斎のような雰囲気ではありませんか。お洒落すぎる!
▼市民図書館とは思えないモダンな設計です
壁のところどころにドーヴィル市が所有している絵画や写真が飾られています。本やCDを探しながら美術鑑賞できるということです。美術館と図書館を融合させるという新しい試みです。著名なアーティストの作品も展示されていました。ちょっとびっくりです。
▼ドーヴィルを象徴する海や馬をテーマにした作品が多く展示されています
「くつろぎの場」であることもレ・フランシスケーヌのコンセプトのひとつ。そのため、靴を脱いでごろんと横になって本を読むことだって可能なんです。1日中いても飽きない場所にしたかったそうです。
▼オシャレなカプセル型読書室!
▼2階にCD・書籍・小物などの売店もあります(工事中でした)
ふと窓に近づき外を眺めると、夕日に赤く染まるドーヴィルの家々の屋根が見えました。リヨンのアパルトマンで暮らして20年。屋根の見える景色に実家の田舎町が思い出され、しばし郷愁に浸ったマダムユキ。いつかドーヴィルで暮らしたいな~って思ったのですが、宝くじでも当たらないとドーヴィルで家は買えないよ~。
▼夕日に染まるドーヴィル
ステファンさんがメインホールでサプライズを用意してくれました。修道院回廊跡でカクテルパーティですよ。社会的距離を保つために1テーブルに1人、テーブルとテーブルは1mの距離をおいて設置されていました。テーブルにはフィンガーフィードとカシスのリキュールをシードルで割った食前酒がありました。やっほー。ブルゴーニュ地方の食前酒にキールというカクテルがありますが、ご存知ですか。カシスリキュール(クレーム・ド・カシス)をアリゴテ種の白ワインでカクテルにします。男女問わず、とても飲みやすく、フランスを代表する食前酒です(ついつい飲んでしまいますが、アルコール度が高いので要注意)。ノルマンディー地方ではカシスリキュールをシードルでカクテルにしたものが人気だそうです。シードルの甘さもあって、甘口なカクテルですが、とても飲みやすく、カシスとリンゴの相性がよかったです。うれしい発見でした。ステファンさ~ん、ありがとうございました。この場を借りてお礼を申し上げます!
▼見た目に美しいフィンガーフードは食べて美味しい
ドーヴィルを再訪できる機会があったら、アンドレ・アンブール美術館の見学とドーヴィル競馬場でレース観戦したいです!前回、閉まっていたホテル・ノルマンディ―のバーでグラスワインを楽しむこともひそかに狙っています。楽しい計画は明日への糧になりますね。
▼皆さまのこれからの1年に乾杯!
フランスでは、1月15日における1日あたりの新型コロナウイルス新規感染者数はおよそ32万人、過去1週間の1日あたり平均新規感染者数はおよそ29万人を記録しました。そろそろ感染ピークではないかといわれています。フランスは衛生パス(※)に代替するワクチンパス(※)の導入が国会で審議されています。このブログを投稿するころには可決されるかもしれません。ワクチンパスの導入により新しいルールが生まれます。ワクチン接種を巡って賛否両論、議論が続いていますが、それよりも、ワクチン不要な時代がくることを願うばかりです。
皆さま、オミクロン株にも気を付けて、引き続き、お身体をご自愛ください。
【数字でみるレ・フランシスケーヌ】
・改修工事費用:1700万ユーロ
・敷地面積:6200平方メートル
・メインホール天井のガラスチューブ数:1万2285本
・ガラス屋根のメインホール面積:400平方メートル
・最大収容訪問者数:1270人
・美術展示品:270品
・所蔵書籍:10万冊
・所蔵CD:1万枚
・所蔵DVD:4000枚
【施設情報】
■LES FRANCISCAINES(レ・フランシスケーヌ)
・住所: 145 B, Avenue de la République – 14800 Deauville France
・電話番号: +33 (0)2 61 52 29 20
・営業時間: 10:30~18:30
・休業日: 月曜日、5月1日、12月25日
(写真・文)マダムユキ
※「衛生パス(Pass Sanitaire)」とは、ワクチン完全接種済みの証明書あるいは72時間以内に取得したRT-PCR検査または抗原検査に基づく陰性証明書あるいは過去11日前から6ヵ月以内に感染回復したことを示す証明書をもって交付されるQRコードのことです。
※「ワクチンバス(Pass Vaccinal)」はワクチン完全接種済みの証明書をもって交付されますが、詳細は審議中です。