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こんにちは。アントワープ特派員のマユミです。
まず、ベルギーでの新型コロナウイルス状況ですが、再び厳し目のロックダウン策を施したにもかかわらず、好転しません。暴動が起きたり、この先も不安がつのる状態です。
さて、ベルギーの特徴でもある美術芸術の世界。アントワープにも、たくさんの美術館が存在します。それぞれ個性があって甲乙つけがたいのですが、いまのところ私の中のかなり上位(1位かも?)の美術館、【Snijders&Rockoxhuis】を紹介します。新型コロナウイルスが収束したら、訪問ください。今回の写真はすべて美術館内になるため、【Snijders&Rockoxhuis】の承認を事前に得ています。
当ブログにもたびたび登場している、Nicolaas Rockoxは17世紀前半に活躍したアントワープ市長です。彼は美術愛好家として、またルーベンスの友人かつパトロンとしても知られる存在でした。彼が集めたルーベンス、ヴァン・ダイク、ヨルダーンス、ブリューゲルなどの絵画が展示されたこの邸宅には、1603年以降、妻のAdriana Perezとともに住んでいました。
また、隣には画家のFrans Snijders と妻のMargriete de Vosが住んでいて、改修工事によって、この2軒がつながりました。Snijdersは静物、動物、狩猟シーンに定評のある画家でした。
つまり、【Snijders&Rockoxhuis】はスネイデルスとロコックスの家を会場にした美術館。ベルギーの黄金時代、17世紀の上流階級の優雅な邸宅と、さまざまな芸術作品を同時に堪能できる場所になっています。
私がこの美術館が特に好きな理由は、豊富な芸術が生活の中に溶け込んでいると感じる点だと思います。絵画の展示も実際の壁や窓などと違和感なく配置されており、居心地よく感じます。それを演出するのに一役かっているのが、実際に使われていた家具調度品。
例えば、写真のタペストリー。16世紀前半に、ウールとシルクで作られた"Cabbage leaf verdure(キャベツの葉の新緑)"という作品です。この時代は貴族の地位が低く、中産階級が台頭していることから、絵画よりも安価なタペストリーに需要がありました。手前に置かれた棚(鏡がついているのでドレッサーでしょうか?)もたいへんに精巧な作りで目を奪われました。これらは、"ROOMS 4 De camer achter Tgroot Salet"にあり、ほかにも生活に直結する品々が展示されています。
また、同じく暮らしぶりを感じられる展示が"ROOMS 7-8 Keucken"でも見られます。こちらは食器や料理道具などキッチンにまつわるものが中心です。
【Snijders&Rockoxhuis】の芸術品は10の部屋に分けて展示されています。次に紹介したいのは"ROOMS 5-6 Twaschhuys"、エンターテインメントの部屋と名づけられた部屋には、上流階級の人々の余暇の過ごし方が見られます。
写真の絵は1559年に作られたPieter the Elderの忠実なコピーのひとつです。タイトルの通り、100以上のことわざで形成されています。17世紀の人々の生活を描いたものではありますが、人間の不条理や非論理的な行為も示しています。この絵のすぐ手前に各パーツの説明が見られる電子パネルがあり、興味深いです。
もう1枚は"東方の三博士の崇拝"というタイトル。美しいく静かな絵のポイントは意外にも右側中央に描かれたグレイハウンドという犬と鷹だそう。これらは上流階級の人々が好む娯楽のひとつ"狩猟"で使用される最も人気のある動物です。
最後に紹介するのは"ROOMS 10 Voorcamer aende"、音楽の部屋です。
楽器の展示もすばらしいのですが、暖炉のタイル、壁の色、調度品もすてきだな、ポルトガルっぽいなと思っていたら、関係がありました。
RockoxとSnijdersは、宝石商Gaspar Duarteと彼の家族をホストしていました。彼は、すばらしい歌声を持ち、バイオリンやチェンバロも演奏する音楽家でもあり、ポルトガルにルーツを持った人だったそう。高齢になると、家族とともにコンサートをしていました。
うれしい発見は、暖炉の部屋にモニターが設置されているのですが、画面にはクラシックの曲がいくつか表示されています。タッチすると演奏を聴くことができます。ベンチに腰掛けてゆったりと、まるで中世にトリップしたような気分になれます。