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「フォートナム・アンド・メイソン(Fortnum & Mason)ピカデリー本店に行かずしてロンドン随一の繁華街、ピカデリーを訪れたとは言えず」と言ったのは、かの無名なパーリーメイ、私です。
思わずこんなキャッチフレーズを勝手に作り上げてしまうほど、ロンドンを訪れたら外せない同店は、オーデニール(Eau De Nil)という水色のパッケージカラーや紅茶が特徴的で、1707年より伝統を脈々と受け継いできた老舗ブランドの旗艦店です。
食品以外も手がける現在では、“百貨店”と称されることもあります。師走を控え、早くもクリスマス仕様できらびやかなフォートナム・アンド・メイソン、ピカデリー本店の内側を案内します。
その名が示すとおり、フォートナム・アンド・メイソンとははじめ、王室の下男であったフォートナム氏とその地主であるメイソン氏が、雑貨並びに紅茶の商人として共同で事業を起こしたことから始まります。
その後、スコッチエッグ(固茹で卵をソーセージ肉で包み、パン粉で揚げた料理)を長旅の携帯食として考案、売り出したり(出典:Our History “Fortnum & Mason: The First 314 Years”Fortnum & Mason 2022.)、フォートナム氏のいとこが勤務していた貿易会社、東インド会社を通じて世界各国から輸入した紅茶や中国茶を国内に広める(出典:“Tea at FORTNUM & MASON Piccadilly since 1707” Ebury Press 2010: 11 Print.)など、イギリスの国民的な食べ物や飲み物を生み出しました。
アン女王の時代より、代々王室とのつながりが深い家系に生まれたフォートナム氏が経営する同社は、たびたび王室メンバー向けに独自ブレンドの紅茶を開発し、英国王室御用達の称号であるロイヤルワラント(Royal Warrant)を授かります(出典:“Tea at FORTNUM & MASON Piccadilly since 1707” Ebury Press 2010: 19 Print.)。
クリスマスの飾りつけがされた入口をくぐってピカデリー本店に1歩足を踏み入れると、床に敷かれた真っ赤な絨毯に天井から吊り下がるシャンデリア、色とりどりの商品パッケージが織りなす豪華な雰囲気に、目が眩みそうになります。
地下にはワインやチーズなどのほかに、生鮮品も取り扱う食料品売り場が、グランド・フロアー(1階)には紅茶やビスケットといった贈りものにピッタリの食品があります。
以降1階(日本でいう2階)から3階(4階)まで雑貨や文具、インテリア用品から宝飾品まで揃っています。最上階はアフタヌーンティーが人気の「ダイアモンド・ジュビリー・ティーサロン」になっています。
今回の本目的は、頼まれていたこちらの板チョコ「In her footprints we follow(£6.95)」。米粉や豆乳、ココナッツが原料のヴィーガン仕様です。
チョコレートもあり過ぎて店内をウロウロしていると、すかさず店員が声をかけてくれました。教えてもらった棚にようやくたどり着きますが、今度は同じシリーズの違う種類が大量にあり、ぱっと見お目当てのものを見つけるのはなかなかに困難でした。
そこでちょうど棚の整理をしていた別の店員に聞いてみると、当然ながら手早く見つけてくれたうえに「ヴィーガンをお探しなら、あちらのトリュフコーナーにもいくつか取り揃えてあります。私もヴィーガンなので、おすすめですよ」と案内してくれました。
板チョコはほかにもプラネリやウイスキー入り、タルトやキャロットケーキ味などめずらしいものがたくさんあったので、備忘録のためにトリュフコーナーとあわせて撮影させてもらいました。軽くてかさばらず、チョコの形も崩れにくいでしょうから、気軽な土産にピッタリだと思います。
日本語ウェブサイトの社史によりますと、フォートナム・アンド・メイソンの経営管理者たちは、「お客様に楽しんでいただくためには、まず現場の従業員に手厚い待遇を施す必要があるといち早くから理解していた」そうです。
そのせいか、同店ではていねいな接客をする店員をほかにも見かけました。問い合わせのあった買い物客に対し、ただ「あちらです」と伝えるだけでなく「あちらのベストを着た店員のいるカウンターですと、いろいろ相談に乗ってもらえます」など、ちょっとしたひとことを添えていました。
イギリス土産の定番、紅茶コーナーでもそれは同じで、噂に聞いていた名前ラベルつきの特注ブレンドティーについても、詳しく説明してもらいました。
値段は一律£25で、「グリーン・ティー」か「ブラック・ティー」を選んだあと、数種類の茶葉を自由にブレンドしオリジナルの紅茶を特注できます。グリーン・ティーの場合はフローラルなジャスミンと煎茶を、ブラック・ティーならキャラメル、レザー風味?!、バラ、ヘーゼルナッツの4種を適宜混ぜるとよいそうです。
グリーンかブラックの枠を越えて選ぶことも、欲張りに6種類全部を混ぜることも可能とのことです。茶葉の選択から好きな名前を入れたラベルの印刷まで、締めて10分ほどで完了します。
日本にも支店がけっこうあるフォートナム・アンド・メイソン、イギリス現地で買うメリットはズバリ値段の安さと商品ラインアップの豊富さです。
日本の公式ウェブサイトで確認したところ、現地ではその多くが半値程度のようです。この事実を知ってから「買っておけばよかった!」と後悔したものは、こちらの「ハイグローヴ(Highgrove)」シリーズ。
チャールズ国王によって設立された、社会環境への貢献を理念としているオリジナルのオーガニック商品ブランドで、イギリスではフォートナム・アンド・メイソンのみが取扱いを認められているそうです。
たっぷり買い物して帰る頃にはちょうど、「フォートナム時計」の鐘が鳴り響きました。建物正面につけられているこの時計は1964年に設置され、ビッグベンと同じ鋳造工場で作られた18個の鐘が15分おきに鳴ります。
毎時ごとにフォートナムとメイソン両氏の人形も姿を現すので、来英の際は彼らの待つピカデリー本店にて日本への土産、クリスマスプレゼント、自分用のものを探しに覗いてみてはいかがでしょう。