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イタリア料理の主食で知られるパスタ。パスタは腹持ちがよく消化が悪いといわれますが、茹で方や一緒に食べる食材、調理法などにも大きく左右されます。イタリア人と一緒に料理をすると、「アルデンテで大丈夫?」「アルデンテの方が早く消化するよ」「茹で時間の〇〇分プラス1分程度で火を止めて!」などとアドバイスを受けることがしばしばあります。今回は、おいしいパスタを消化よく食べるには、どのような工夫をしたらよいのか見ていきましょう。
イタリアでは紀元前よりパスタが食べられています。
大きなスーパーでは、パスタを売るコーナーが何メートルも続き、イタリア国内では、ご当地パスタも含めれば700種類ほどのパスタがあるといわれています。パスタは基本的に、保存ができる「乾燥パスタ」と手打ちをしたばかりの「生パスタ」があります。生パスタはお総菜コーナーで売られていたり、2週間ほど保存がきく真空パックになっている商品があります。
パスタには、さまざまな形状のものがあり、ラザニアやニョッキ、ラヴィオリなどもはいります。パスタは腹持ちがよい食べ物として知られていますが、消化にはどれくらいの時間が必要なのでしょうか?
パスタは、ソースや調味料と一緒に食べるのが一般的です。サラダパスタなどは、パンやうどんなどの料理に比べてヘルシーなイメージもありますが、食べ過ぎると消化が悪くなることがあります。これは、パスタに含まれる粘りのある成分のグルテンが、消化に時間がかかることが主な原因です。グルテンは、小麦などの穀物の胚乳に由来するたんぱく質と水が結合することでできる物質で、粘着性がある網目状の結びつきのある構造になっています。小麦粉に水を加えてこねることで、グルテンが作られます。パスタの原材料となるデュラム小麦はグルテンの含有量が多く、消化するためには多くの消化酵素が必要です。パスタの消化には、平均して4時間ほどかかるといわれています。
また、油をたくさん使って調理することでも消化に時間がかかります。料理時のオリーブオイルを適度な量にし、パスタソースを脂っこいものではなく消化吸収のよい食材を使ったものにすることで改善されます。
パスタを茹でるときに聞く言葉「アルデンテ」は、イタリア語では「al dente」と書き、冠詞前置詞の「アル(al)」と、歯を意味する名詞「デンテ(dente)」からきています。アルデンテは「歯ごたえのある」という意味で、茹でたパスタを輪切りにしたときに、おおよそ髪の毛1本分の白い部分(茹でていない部分)がある状態です。日本人には、麺に少し芯が残る硬さのアルデンテはあまり好まれないかもしれません。しかし、消化には、茹ですぎたパスタよりもアルデンテの方がよいことが分かっています。
パスタのグルテンは、茹でると分子の網目構造が緩み、消化酵素が入ってより働きやすくなります。逆に茹ですぎてしまうと、分子の結合が弱まることからでん粉が茹で汁の中に溶けだし、グルテンの成分だけが残ります。グルテンのみが残ったパスタは消化が悪いため、アルデンテか、それより少しだけ柔らかく茹でるようにするのが消化もよくおすすめです。また、アルデンテの硬さで茹でることにより、パスタの栄養素が水に溶け出してしまうことも少なくなります。
パスタを茹でるときに入れる塩は、麺に下味をつけうま味を出すだけでなく、胃液などの分泌を促し、消化を助ける働きがあります。
パスタに含まれるでん粉は、加熱をすると糊化し、消化しやすくなります。パスタを茹でるときは、必ずたっぷりの沸騰したお湯を使います。パスタを大きな鍋で茹でるのは、小さな鍋よりも、沸騰したお湯の温度が安定し下がりにくいためです。一方、パスタをぬるい湯で茹でると、でん粉が糊化しません。
パスタは暖かいうちにいただきましょう。茹でたパスタが冷めると、一度糊化したでん粉が硬くなり、結合を強めてしまいます。すると、グルテンに消化酵素が十分に混ざらずに消化に時間がかかってしまいます。
パスタは、一般に消化に時間のかかる食べ物ですが、消化の早い食材や、消化を促進するものと一緒に摂ることで改善できます。例えば、唾液の分泌を促す成分を含むレモンを添えたり、整腸作用のあるヨーグルトを使用します。ばら肉のように脂質や、きのこや海藻のように食物繊維を多く含む食材は、消化に時間がかかるため、胃腸が弱っているときは避けた方が無難です。卵は、半熟にすると消化がよくなります。
消化のよい食材:
にんにく、玉ねぎ、レモン、ヨーグルト、白身の魚、キャベツ、ブロッコリー、ほうれん草、小松菜、ナス、鶏のささみ肉など
消化のされにくい食材:
バラ肉、ベーコン、きのこ、海藻、タコ、イカ、ウインナー、きのこ、たけのこ、セロリ、とうもろこし、ナッツ類、生卵
おすすめのレシピ:
-トマトソースのスパゲッティ(皮なしトマト)
トマトの皮は消化がよくないため、トマトの中身のみ、もしくは市販のトマトソースを使って作るパスタです。にんにくやツナ、アンチョビなどを入れてもよいでしょう。子供から大人まで大好きなトマトソースで簡単にできるパスタです。
-サーモンとブロッコリーのパスタ
ブロッコリーは、茹でることで消化がよくなります。緑黄色野菜とオメガ3が多く含まれた鮭の栄養たっぷりのパスタです。鮭は、抗酸化作用のあるアスタキサンチンを含み、ビタミン豊富でタンパク質も摂れるため、おすすめの一品です。
-キャベツのパスタ
胃薬「キャベジン」からも、全国的にキャベツの効用が知られることになりましたが、キャベツには、胃の粘膜の修復を助けるビタミンUが豊富に含まれています。パスタには、小さく切ったハムやしらすなどを入れてもおいしくなります。さらに、パスタにレモンを添えると、唾液の分泌を促し消化を助けてくれます。
その他には、パスタに梅干しを和えたり、大根おろしを添えても、消化と健康のために有効です。
また、食事中に水を飲み過ぎると、消化液が薄まり十分な消化が行えません。適度な量の冷たすぎない水を飲むことが大切です。
パスタは、よく噛んで食べることで、唾液が混ざります。理想的な回数は、一口に30回以上噛むことといわれています。唾液に含まれる消化酵素アミラーゼが、でん粉のマルトースへの分解を助け、胃腸での消化の負担を軽減します。また、パスタの茹で加減をアルデンテにすると、麺が硬く歯ごたえがあるため、噛む回数を増やすことができます。
パスタは、グルテンを含むため消化に時間がかかります。
消化をよくするためには、麺は沸騰したお湯でアルデンテかそれより少し柔らかく茹でます。ソースや具材は、消化されやすい食材を使用して調理すると完璧です。パスタはビタミンB1などの栄養素も含み、誰でも簡単に調理ができるとても便利な食べ物です。イタリアでは、「パスタ・ビアンカ」といって、胃腸の具合の悪い時に、ただ茹でただけの白いもの(ソースなどが何もない状態、すなわち“ビアンカ”で白色の意味)を食べることがあります。
おしゃれで見た目もよく、おいしいパスタ。調理法を工夫して、楽しく食べましょう!