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大分県日田市の豆田町は、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような昔ながらの古い建物が良好な状態で残っています。
平成16年12月には重要伝統的建造物群保存地区に選定され、歯医者や薬局、トイレまで瓦屋根の建物がレトロな町並みを作り上げています。
町のなかでもひときわ立派な店構えの「薫長酒造」は、試飲もできる酒屋です。
旅行の際は『地球の歩き方』をよく携帯すると言っていた店員さんにすすめられ、新酒とにごり酒の飲み比べをしました。
新酒は澄んだ飲みやすい味で、にごり酒はどっしり濃厚で飲み応えのあるタイプ。季節柄、新酒の方をいただくことにしました。
店の奥には日本酒の製造工程がパネルになった展示室や、江戸時代から大正時代に建築された酒蔵が残されています。
急な階段を昇って上がる2階の屋根裏には、巨大な樽桶や水切りザルといった当時の道具が保管されています。
なかには暖気樽、「きつね」「たぬき」「ねこ」といった名前のついた樽など、不思議なものもありますが、そのほとんどに説明書きがあるので助かります。
豆田町にはうなぎのオニギリ屋まであるほどうなぎ屋が多く、町中にタレのよい匂いが漂っています。
薫長酒造と同じ豆田上町通りにある「日田まぶし千屋」の日田まぶしはうなぎや材料、食べ方にまでこだわっており、ひとつのうな丼で3種類の食べ方が楽しめます。
テーブルに置いてあった紙によりますと、まずはそのまま、次に薬味を加えるのですが、この「日田名物ゆずこしょう」と一緒に食べるのは初めてでした。
シメはお茶漬けとなり、土瓶に入っただし汁がまたおいしく、ワサビをちょこんとのせて食べると最高です。
普通サイズは3500円で、ほかに大サイズ、うざく(うなぎの酢の物)、ほねせんべい、ゆびき(湯引きしたもの)、きもさしとうなぎ尽くしのメニューです。
きもさしはうなぎのキモの湯引きを酢味噌で和えたもので、1尾からひとつしかとれないぜいたくな一品だそうです。
店頭にきれいに積まれた色とりどりの下駄に誘われて「足駄や」に入ると、店舗2階まで届く高さの"日本一の杉げた"が目に飛び込んできました。
いただいたパンフレットによりますと、寒暖差の激しい日田で育った良質な日田杉を使った高さ4m以上、幅2m以上、重さ約1000kgのゲタで、記念撮影をしている外国人もいました。
店内には体のバランスを整え、エクササイズにもなるという「一本歯下駄」という珍しい商品もあり、スピードスケートのオリンピック選手がこの下駄で体幹を鍛え、見事金メダルを勝ちとったことが紹介されています。
家族全員分の下駄を買ったところ、本来は入館料100円の2階資料館に無料で案内されました。
日田市は下駄の3大産地として知られ、足駄やは古くから下駄の製造を行っている工場を備えていますが、全国各地から集めた資料館も兼ねています。
下駄は左右一対そろって役割を成すことから夫婦円満になるといわれていますが、その下駄を祀った神社がありました。
こちらは唯一、写真撮影OKの看板が出ています。薫長酒蔵資料館同様、展示はどれもたいへん古いものなので、作品には触れないよう気をつけましょう。
土産には小ぶりで軽い、まんじゅうはいかがでしょう。
「待鳥松月堂」では、日田名物の塩まんじゅうをはじめ日田ようかん、そばまんじゅうなどここでしか手に入らない和菓子を各種取り揃えています。
上記はすべて豆田上町通りの商店ばかりですが、道を隔てた1本隣の豆田御幸通りにも別の酒屋や羊羹、醤油にカステラと日田名物に特化した商店街が広がり、国指定重要文化財の草野本家もあります。
町は碁盤目に整備され歩きやすく、地元住民による清掃ボランティアがドブのゴミ拾いをするなど、とても清潔です。これから春に向けての行楽にピッタリの豆田町に、ぜひ足を運んでみてください。
※本記事内の写真はすべて、掲載許可を得ています。