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イギリス観光で避けては通れない災難といえば、気まぐれな雨模様の天気。年がら年中ではありませんが冬は特に連日降ることも多く、運が悪いときには終日雨、雨、雨……。
そう、ちょうどイングランド南西部の町、ブリストル(Bristol)を訪れたときのように。濡れそぼりながらも町歩きを敢行した様子をお届けします。
世界的に有名な覆面アーティスト、バンクシーの出身地としても知られるブリストルは、ロンドンのパディントン駅からBristol Temple Meads駅まで電車で約1時間45分と、ロンドンからの日帰り旅行も可能な港町です。
家族や友人から「適度に都会で見どころが多く、雰囲気もよい町」などと聞かされていたのですが、当日は傘も吹き飛ばされまったくの役立たず、ゴミと化すほどの突風が吹き荒れ、横殴りの雨が降る超悪天候。悠長にバンクシーの壁画を見ている余裕など、微塵もありませんでした。
しかしその後は絵本にも登場するほど有名な、黒ヒゲ(Blackbeard)という呼び名を持つ悪名高き伝説の海賊がカリブ海を荒らしたり、それに続くほかのブリストル出身の海賊が18世紀頃まではびこるなど、危険なイメージがつきまといました。
そうこうしている間に今度は17世紀に、その後歴代まで汚点となる黒人奴隷を使った大西洋三角貿易、いわゆる奴隷貿易の拠点のひとつとして栄え、さらにダークな印象が強まります(参照: “History of Bristol” Destination Bristol 2022.)。
ハーバーサイドのPrince’s Wharfはそんなブリストルの成り立ちを思い起こさせるエリアで、大小いくつものが船が停泊しています。壁には奴隷貿易について記されたプレートが掲げられ、きちんと過去と向き合っています。
少し歩いたところにやけに立派な建物があったので行ってみると、ブリストル大聖堂と市議会がありました。なかを覗いてみたかったのですが、大聖堂は礼拝する信者しか入れず残念でした。
旧市街のカフェでブリストルの地ビールを飲みながら雨宿りをしていると、だいぶ小雨になってきたので少し離れた新市街にまで足を延ばすことにしました。
と、なにやらやたら古そうな建物を発見したので道を渡って見てみると、「クリスマス・ステップス(Christmas Steps)」と書かれた標札が現れました。ステップと名のつくとおり、そこは坂道を階段で上る小径になっています。
両脇にはモノクロ写真をすてきにディスプレイした切手屋やパブ、アートギャラリー、ボードゲームができるカフェなど、おしゃれでどこか個性的な店が並び、独特の雰囲気をかもし出しています。
短い通りですが、こちらはブリストルのなかでも“もっとも古く、魅力的な場所”で、ちょっとした観光名所なんだとか。クリスマス・ステップスという特徴的な名前については諸説あるようですが、こちらはもともと「Queene Street」と中世より呼ばれていました。それがそのうち「Knyfesmyth Street」などとなり、最後は発音が似ていることからクリスマスという単語が出てきたというものがひとつ。
ほかには階段上にあるThe Three Kings of Cologne教会のステンドグラスにデザインされた、クリスマス降誕劇のシーンからきている、という説もあるそうです(参照:Jacks, P. “Christmas Steps”BBC Bristol, Jun, 2008.)。こちらの教会は併設された昔の私立救貧院(Foster’s Almshouses)とともに、1959年にイギリスの歴史的建造物リストのグレードII(関連記事)に指定されているので、クリスマス・ステップスとあわせて訪れる価値があるのではないでしょうか。
冬のイギリスは悪天候続きの日が多く、激しい風雨の際は傘が無用の長物と化すこともあります。イギリス人に倣ってフードつきの上着や洋服を着用し、ブーツなど耐水性に優れた靴で“雨にも負けず”、町散策を楽しんでください。