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スノードロップ見たさに訪れようとしていたロココ・ガーデン(関連記事)に行く途中、「ペインズウィック(Painswick)」という小さな村に迷い込みました。
本当に道に迷ったわけではありませんが、そんな言葉がピッタリなほど静かで現実離れした、おとぎの国のような場所でした。
イギリスのコッツウォルズといえば、日本でも人気の観光地だとこちらに来て知りましたが、まだ来たばかりの頃にさっそくメジャーな村を訪れてしまったこともあり、予備知識のないままつい最近まで、コッツウォルズとはひとつの町名ではなく、いち地域のことだということを知りませんでした。
ペインズウィックはその“メジャーではない”、日本人にはあまり知られていない、マイナーなコッツウォルズの村のひとつだといえそうです。
地理的な位置としてはイングランド、グロスターシャー州のコッツウォルズ内にあるヴィレッジ、行政教区(郡のようなもの)ということになります。
以前訪れた“メジャー”なコッツウォルズ、「ボートン・オン・ザ・ウォーター」や「バイブリー」などには観光客がワンサカおり立派な一大観光地でしたが、車から降りてペインズウィックの町に足を踏み入れると……
シーン、と厳かなまでの静けさに包まれ、足音をたてるのがはばかられるほどです。バイブリーほどメルヘンチックではなく、より日常感のある建物が並びますが、レンガはコッツウォルズ地方でよく見られる象徴的な、ハチミツ色です。
村の看板によると新通り(New Street)には1429年当時、チューダー調(関連記事)のデザインでありながら、ジョージアン様式の正面デザインを取り入れた家々がいくつかあったそうです。チューダー調の1種である「ハーフ・ティンバー(柱や梁、筋交いなど木の構造材を外側にむき出しにし、その間を漆喰やレンガで埋めた外観)」は、現代でも一般の住宅家屋や商店によく使われる建築様式ですが、この通りにあった15世紀後半に建てられた郵便局もこのハーフ・ティンバーで、イングランドでもっとも古い郵便局だということです。
ペインズウィックは「コッツウォルズの女王(The Queen of the Cotswolds)」と呼ばれ、
「信じられないくらいにかわいらしい村」
Cotswolds Tourism Partnership
だと紹介されています。いわく、「商業に商店、飲食店、宿泊施設に困らない」ところだそうですが、このとき散策した一帯に限れば、ナショナル・トラスト(関連記事)所有のコテージやアートスタジオが入った町役場のようなもの以外には、観光客が利用できそうな施設といえばパブの「オーク・ペインズウィック(The Oak Painswick)」しかありませんでした。
店は満席なほど繁盛していたので、はじめはバーカウンターでドリンクだけ頼んで待っていましたが、気のよい地元客がいろいろと話しかけてくれました。
ひとりで切り盛りしていそうな女性スタッフも気さくで、ペインズウィックの印象がグッとよくなり、急に親近感が湧きました。内装もすてきで居心地がよく、食事は味にこだわったいかにもガストロ(関連記事)風、ケーキの甘さも適度で流行っているのにも納得です。中庭のテラスもおしゃれでした。
わずか1時間にも満たない滞在でしたが、コッツウォルズの雰囲気を再び肌で感じることができた、貴重な観光でした。知られざるコッツウォルズの魅力に迫る、静かな村ペインズウィック、コッツウォルズ好きの方には特に穴場のスポットです。