キーワードで検索
イギリスの子供の誕生日会は、日本のように自宅で開かれる場合もありますが、年齢が上がるにつれ招待客が増え、自宅では手狭で準備もたいへんになってきます。そのため、スポーツジムが入ったレジャー施設や公民館、教会のホールを貸し切るなど、外部施設を頼ることが増えてきます。
わが子がこれまで招待されてきた例をもとに、今回はおもに幼稚園児対象のイギリス式誕生日会を紹介します。
誕生日会によってはテーマがあらかじめ決まっており、ドレスコードがある場合もありますが、それ以外では好きな服を着ていきます。女の子ですと頭に大きなリボンをつけたり、プリンセスのようなドレスを着ておめかしする子もいますが、当日は皆大はしゃぎで動き回るので、特に男の子の場合、実用性重視で極めてラフな格好が多いです。
個人的に盲点だったのは、冬の服装です。慣れない当初は子供によく長袖を着せていたのですが、館内は空調設備が整っているうえハイテンションで走り回るので、冬でも汗ダクになり結局脱がせて荷物になりました。周りを見て気づきましたが、上着の下は通年Tシャツに半ズボンという子も多く、以来私も比較的薄着で行かせています。
プレゼントはだいたいにおいて持っていくことが普通ですが、イギリスでは購入した場所にもよりますが、ほとんどの場合包装サービスがありません。そのため誕生日会に呼ばれたら、自分でラッピングしたプレゼントに、こちらは必須アイテム、誕生日カードをしっかり表側に貼りつけた物を携えて会場に向かいます。
あるとき行われたパーティー会場は、ジムとして運営されているレジャー施設だったので、だだっ広い体育館のようでした。ふたつに仕切られたエリアには普通のトランポリンと、幼児用のビニール式大型トランポリン、“バウンシー・キャッスル”がそれぞれ設置されています。誕生日会の始まり方は施設によってバラバラで、ノンビリ来る家庭もあるので、来た子から自由に遊びます。
小1時間もたつと、各種アクティビティ(このときの場合はトランポリン)を切り上げ、2階のパーティールーム(といっても普段はジムのスタジオなので、飾り気のない簡素な部屋といった感じです)にゾロゾロと移動します。
すでに軽食が用意されたテーブルで、子供たちはしばらく食事を楽しみます。たとえばこのときはサンドイッチ、ソーセージロール、ジュース、スナック菓子の小袋、チョコバーがついており、デザートにはアイスクリームが出てきました。ほかの施設ではピザやフライドポテトなど、温かいホット・ミールを出すところもあります。あるいは食事は頼まず、親が自分で手作りの料理を用意したり、出前や買ってきた惣菜を利用したりするケースもあります。
最後はお待ちかね、それぞれ趣向を凝らした誕生ケーキが登場します。イギリスではアイシングで覆われたバターケーキが主流ですが、テーマに沿ったキャラクターものや、子供の写真をケーキに転写したオーダーメード、母親の手作りなど種類はさまざまなので、招待された子供たちも毎回どんなケーキかとワクワクしています。
バースデーソングは歌ったり歌わなかったりしますが、歌ったあとに聞き慣れないかけ声をかけることがあり、はじめはその意味がわかりませんでした。「ヒップ・ヒップ(hip hip)」というかけ声のあとに、皆が「フーレイ(hooray)」と応え、これを3回くり返します。
これは“スリー・チアーズ(three cheers)”というイギリス式のエールで、スポーツの試合時に選手の士気を高めたり、エリザベス女王(いまはチャールズ国王)への忠誠、エールをおくる際などに使われるようです。また、以前読んだ絵本のなかでも、冴えない主人公が大活躍し、最後はスーパーヒーローになるという場面で、このかけ声が周りから上がるシーンがありました。
誕生日会で出されたケーキは幼児の場合、会場の使用時間の都合上食べる暇がなく、持ち帰るケースが多いことにもはじめは驚きました。記念撮影を皆でしたあとに解散となりますが、出口では主催者が切り分けたケーキも入ったお返しのおみやげを渡してくれるので、順番に並んで帰りのあいさつをします。
今回紹介したケースはおもに幼稚園ぐらいまでの年齢の、比較的スタンダードなパーティースタイルですが、施設利用の有無、食事、プレゼントの渡し方、手みやげに関してなどはすべて主催者によるので、あくまでも1例として読んでください。なかにはプレゼントを辞退して、チャリティに寄付するための寄付制にすることもあります。
まだ年齢が小さいうちは、少人数クラスの私立校ですとクラス全員を招待する場合が多く、本人だけでなくそのきょうだいも参加したりすると、30人近くになることはめずらしくありません。インドやスリランカ、フィリピン系の家庭ですとクラスメイトだけでなく親の知り合い、親戚なども呼び、少々大げさに言えば(実際にいたかもしれません……)100人は下らなそうな会もあります。
費用はすべて主催者もちなので、招待客が増えるにつれ、当然予算も雪だるま式に膨れ上がります。数年前の話ですが、あるお母さんによると、25人程度の招待客に対して会場費、余興費(子供を楽しませるために、プロのエンタテイナーやフェイスペイントができる人を呼んだりする)、食費、手みやげ代などで£900ほどもかかったそうです。いまなら物価高で、さらにかかることは間違いないでしょう。
こう聞くと、イギリスで誕生日会を開くには気後れしそうですが(実際、私も行動に移すまで数年を要しました)、小学生低学年、高学年と年齢が上がるにつれ、招待するのは同性だけになったり、親も同席する必要がなくなるので規模がぐっと縮小されます。そのぶん、子供たちを遊ばせるためのアクティビティがより高度になり、費用もレベルアップしますが……。
たとえば、それまではトランポリン一辺倒だったのが、ボーリング、ボルダリング、シューティング・ゲームなどと、やたら本格的なスポーツになっていきます。特に男の子で多いのがサッカー・パーティー。会場施設が試合をとりしきってくれ、屋内コートがある場合(もちろん、ないことも)は悪天候でも可能なので、人気が高いです。
そのほかめずらしいものですと、水泳や家でテレビゲーム大会など、マンネリ化しないよう毎度知恵を絞る必要があり、なんとも保護者泣かせのイベントです。なにかの機会に招待されたり、逆に主催する際の参考になれば幸いです。