キーワードで検索
先週末の2023年5月6日は、昨年即位したチャールズ新国王の戴冠式がロンドンで行われ、抗議活動などが一部であったものの、国中が祝賀ムードに包まれました。
イングランド南西端、コーンウォール地方の小さな町、ロストウィジエイ(Lostwithiel)にある「ダッチー・オブ・コーンウォール・ナーサリー(The Duchy of Cornwall Nursery)」は、チャールズ国王がコーンウォール公爵の頃に管理していた、コーンウォール公領内にある植物園芸店です。現在は新公爵となったウィリアム皇太子の下、自然のなかで飲食できる園芸施設として、引き続き高い人気を誇っています。
イギリスで「ダッチー」といえば、やはりチャールズ国王が皇太子時代に立ち上げ、現在は高級スーパーのウェイトローズで販売されている「ダッチー・オリジナルズ(Duchy Originals)」ブランドの、オーガニック製品が知られています。
ダッチーとは、英皇太子が代々コーンウォール公爵の称号(Duke of Cornwall)とともに与えられる王室所領のことで、コーンウォール公(爵)領(Duchy of Cornwall)は1337年にエドワード3世が憲章を発布し、息子のエドワード王子に相続させるよう設立されたものです。
植物園芸店の公式ウェブサイトによりますと、ダッチー・オブ・コーンウォール・ナーサリーは公領のひとつで、1960年代後半、もともと採石場だったところに植林し、1974年から植物を一般向けに販売したことが始まりです。その後はイングランド南西地域でもっとも大きく、注目される植物園芸店のひとつに成長し、ビジター、スタッフ、そして公爵といった“すべての人のためのナーサリー”が完成しました。
わが家は当初、同店の訪問予定はありませんでしたが、コーンウォール到着後とある地元の方に教えていただき、急きょ訪れることにしたのです。ログハウス風の建物に足を踏み入れると、なかもカントリー調で食器やカード、本、家具、オモチャ、服まで、細々とした雑貨やインテリアグッズが空間を埋めるように並べられ、やわらかな色の渦に囲まれました。
てっきりまずは苗などが並んでいるのだろう、と予測していたので、はじめからこのように充実した土産売り場の出現に、うれしい先制パンチを喰らった気分です。
そこまで大きなスペースではないですが、とにかくセンスのいい、ときに地元ブランドなど気になる商品が大量に並んでいるので、ひとつも見逃すまい、と目をこらして1巡するとあっという間に時間が過ぎてしまいます。
抑え込むのがたいへんな物欲をなんとか封じ、カフェを抜けてようやく“ナーサリーらしい”、苗木や花のプランターが置かれた屋外スペースに出ました。
同店は2011年以降大規模な変換を遂げ、いまでは自然が栄える園芸の聖地として多くの人々に親しまれていますが、どうやら人気が高まり過ぎて、今度は設備面で変貌する必要が出てきたようです。
到着時より、施設内のいたるところがシートで覆われ、作業中のようになっていることが気になったので、ちょうど通りがかったスタッフのアンさんに尋ねてみました。すると、近年同ナーサリーの人気がうなぎのぼりで、既存のカフェだけではさばききれないため、おもに飲食面での拡張に取り組んでいるとのこと。
また「どんな種を植えたらよいか」といった相談も受けるので、苗木ではなく種から植えるとどんな様子になるのか、実例を見せるため新たに専用の園芸スペースを設けるなど、全体的に施設の充実を図っているのだそう。
同店のウェブサイトには、スタッフが仕事内容とともに写真つきで紹介され「気軽にお声がけを」と書かれており、ビジターとの積極的な交流を心がけているようです。実際、土産ショップでも子供用のアクティビティをさせてくれたり、撮影、写真掲載のお願いをした際も、フレンドリーなスタッフばかりで“皆のナーサリー”というとおり、居心地がよかったです。
ほかに、園芸のイロハが書かれた立派なガイド冊子が入手できる温室「グラスハウス」や、テント型の休憩席「ティピ」が人気の軽食スペース「ウッドランド・テラス」、圧巻の渓谷ビューとリストーメル城まで見渡せる芝生、そしてアフタヌーンティーができる「オランジェリー」もあります。
「工事中の施設がオープンするのは5月初旬予定」と聞いたので、装い新たにさらにパワーアップしたダッチー・オブ・コーンウォール・ナーサリーを、機会があればぜひ実際に見に行ってみてくださいね。