キーワードで検索
コーンウォール旅行の始まりにふさわしい食べ物といえば、コーニッシュパイを除いてほかにないでしょう! と、思わず言いきってしまうほど、片手で食べやすい手軽さも相まって、滞在中は毎日のように食べていました。
「コーニッシュ・ベーカリー(The Cornish Bakery)」は、店の横道がそのままティンタジェル城に繋がっているので、その立地のよさからいって、集客には困らないのではないでしょうか。実際私も、いかにもたくさん歩きそうな城を訪れる前の腹ごしらえとして、さっそく買ってしまいました。もっともスタンダードで定番の「トラディショナル(£4.2)」タイプで、パイの中には角切りビーフに芋、カブが入っています。
そしてスコーンに欠かせない、クロテッドクリームの代表格として知られている「ロダス(Rodda’s)」社の創業地もまた、コーンウォールです。向かい側の道沿いにあったパン屋さんらしき店「ペンジェンナ・パスティーズ(Pengenna Pasties)」には、ロダスのショートブレッドとファッジ(キャラメルに似た見かけの砂糖菓子)が缶入りで売られていました。
クロテッドクリームしか知らなかったので、こんなものもあるのかと驚き、日本の家族へのおみやげにもと、複数個買いました。ところが、帰宅後に日本でも百貨店やオンラインで気軽に買えると知り、逆カルチャーショックを受けましたが、きっと現地価格でお得に買えたことでしょう。
また、パン屋さんだと思っていたペンジェンナ・パスティーズは、これまたコーニッシュ・パイ専門店で、しかも1985年創業という老舗でした。お腹に余裕があれば、各店の味を食べ比べてみるのもよいですね。種類を間違えないよう、どの店でも具材ごとに皮の表面にナイフで印をつけたり、パイ生地で飾りをつけて区別している点も、各店さまざまで興味深いです。
ティンタジェル城の駐車場がある周辺は村の中心地で、クラフト・マーケットが開かれていたり、屋外席でジョッキを傾ける客などであふれ、ひときわにぎやかです。そんななか、少し周りとは違うオーラを放った石造りの、小ぶりな建物が目に入りました。
いびつに波打った屋根が特徴的なこちらこそ、以前は岬の一部だけを指す名称「ティンタジェル」を村全体に広めた公共施設「ティンタジェル旧郵便局(Tintagel Old Post Office)」です。
14世紀後半に建てられたこちらはもともと家畜の飼育農家で、ヴィクトリア時代は建屋の一部が八百屋さんや仕立て屋さんなど、商店としても貸し出されていましたが、最終的には郵便局としてその役目を終えました。
1870年に、村への郵便物を受け取るだけの施設として開設されたこの郵便局は、それまでの呼称トレヴェナではなく、一帯をティンタジェルと呼び始めたそうです。たった8年でその幕を閉じて以来、建物は老朽化が進み、一時は取り壊し騒動まで起きましたが、1895年に地元の住民団体が寄付を募り落札したため、難を逃れました。
その後も改修費用に充てるため、主要な美術品は売り出されてしまいましたが、1903年には歴史的建築物の保護を目的に設立された機関、ナショナル・トラスト(関連記事)に引き渡され、(参照: “The house and its history” National Trust.)より入念に保護されるようになりました。
中世当時、生活用水を得る場所、ハーブ園、あるいは家畜の飼育エリアだったのではと想像されている裏庭は現在、ヴィクトリア朝のコテージ・ガーデン様式に生まれ変わっています。
本当にお屋敷でもなく、個人宅のように小さい庭ながらも、奥に木製の丸バツゲームやイギリスで定番の無人古本販売所があったり、アクティビティ・シートが用意されていたりと、子供が楽しめるコーナーがありました。なかでも気に入ったのは、旧郵便局の建物全体を後方から眺められるテーブルセットと、建物のミニチュアです。
コーンウォール中で、初めてナショナル・トラストに保護された施設であるとともに、おそらく同団体が所有する施設として最小規模ではないかと推測されるこちらの旧郵便局、表の喧騒から逃れ、静けさのなかホッとひと息つける癒しの場でもあります。
旧郵便局の先もティンタジェル村のメイン通りは続き、お菓子屋さんに喫茶店、みやげ店、教会に公民館、一般住宅も町並みに調和した石造りで見ていて飽きません。
アーサー王記念館のようなものまであり、イギリス人らしき一家も嬉々として記念撮影をしており、行楽日和の好天とともに皆、それぞれ楽しいひとときを過ごしているようでした。