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歴史を感じるシドニーの国立美術学校とアートギャラリー

Eri オーストラリア

Eri オーストラリア

オーストラリア特派員

更新日
2023年8月3日
公開日
2023年8月3日
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シドニーには無料で楽しめる美術館がいくつもありますが、国立美術学校 (National Art School) の中にもアートギャラリーがあります。

LGBTIQA+中心地でもあるオックスフォードストリートにあるダーリングハースト裁判所 (Darlinghurst Courthouse) の裏手にあり、テイラースクエア (Taylor Square) のすぐ近くです。

ダーリングハースト裁判所

その国立美術学校がある建物は、19世紀から20世紀初期までダーリングハースト刑務所 (Darlinghurst Gaol)として使われていた場所でもあり、2021年にニューサウスウェールズ州遺産リストに登録されました。

学校があるダーリングハースト周辺にはおしゃれな飲食店やお店がたくさんありますので、シドニーカルチャーを感じつつ、歴史やアートも堪能してみませんか?

※ この記事の画像は、国立美術学校から使用許可をもらって掲載しています。

住所
156ForbesSt,DarlinghurstNSW2010
入場料
アートギャラリー:無料
開館時間
アートギャラリーは作品展開催中の月〜土午前11時〜午後5時
閉館日
日曜日、イースターの4日間(金〜月)、アンザックデー※何も展示されていない期間はオープンしていませんので、こちらから予定をチェックしてください。
ウェブサイト
https://nas.edu.au/
行き方
MuseumStationから徒歩約15分。389のバスがBurtonStの美術学校前に、311がDaringhurstStに停まり、そこからだと3分くらいです。

ダーリングハースト刑務所と国立美術学校

こちらが国立美術学校です。

この場所がダーリングハースト刑務所として使用されていたのは1841年から1914年の73年間で、オーストラリア植民地時代のごく初期に建てられた最も古い刑務所のひとつでした。その間、著名な作家や当時のシドニーでは名を馳せたブッシュレンジャー、先住民のアウトローなど、様々な人たちが収容され、中には絞首刑になった人たちもいます。

礼拝堂を中心にして放射線のように建っている建物

そして、美術学校がこの場所に移動して来たのは1922年のこと。もともとはイーストシドニー工科大学の一部として知られていましたが、1996年に独立した国立美術学校になりました。

(ただし、シドニー周辺の土地のもともとの所有者はエオラ民族ガディガルの人々 (Gadigal of the Eora Nation) であり、この場所も例外ではありません。この美術学校を含む現在のオーストラリアでは、土地を使わせてもらっている感謝の気持ちを忘れないように、常に敬意を払っています。)

NASアートギャラリー

そんな一角にあるNAS アートギャラリーは、作品展がある時は月曜日から土曜日の午前11時〜午後5時まで、一般の人でも無料で入れます。

現在はブリスベンの proppaNOW というグループによる「OCCURRENT AFFAIR (2023年6月24日〜8月5日)」の作品展が開催中です。ここでの作品展は間もなく終了しますが、2023年から2025年の間は各地の博物館や美術館を巡回するとのことですので、この展示及びアーティストを見かける機会があるかもしれません。

ということで、少しだけアーティストや作品を紹介したいと思います。今後の予定を確認したい人はこちら からどうぞ。

ブリスベンを拠点とする先住民アーティスト集団「proppaNOW」

TheproppaNOWartistcollective(lefttoright):GordonHookey,JenniferHerd,TonyAlbert,MeganCope,RichardBell,VernonAhKee.Photo:RhettHammertonNote:TheproppaNOWcollectivealsoincludesthelateLaurieNilsen.

proppaNOW は、都市部を拠点とする先住民アーティスト集団で、2003年にクイーンズランド州ブリスベンで設立されました。先住民アートや文化、そして現代の先住民芸術家とは何であるかなどを探求し続けています。

「OCCURRENT AFFAIR」展は、政治や社会問題などを中心に、すべてのオーストラリア人に関係する先住民コミュニティに影響を与える現在も進行中の問題、状況などに焦点が当てられた作品展です。

2021年にブリスベンのクイーンズランド大学美術館 (University of Queensland Art Museum) で展示されていましたが、現在はここニューサウスウェールズ州のシドニーに巡回中です。

その中の作品4点を紹介します。

「OCCURRENTAFFAIR」の作品

©︎︎LaurieNilsen,DollarDilemmaFlag,2020/Photo:CarlWarner digitalprintontextileInstallationview,OCCURRENTAFFAIR,UQArtMuseum,2021.ReproducedcourtesyoftheartistestateandFireWorksGallery,Brisbane.

アボリジナルの旗の中に描かれたオーストラリアの$1コイン。これは有刺鉄線で作られたエミューでもよく知られている Laure Nilsen の作品で、旗に対する著作権の問題が反映されています。

黒がアボリジナルの人々、赤は大地、黄色は太陽を表すアボリジナルの旗は、1971年にアボリジナルアーティストであるハロルド・トーマスが土地の権利運動のためにデザインしたもので、1955年にオーストラリア政府によって公式にオーストラリア国旗として認められています。ですが、近年になって著作権をめぐってアボリジナルと非アボリジナルの人々の間で問題になり、2021年にオーストラリア連邦政府に著作権が譲歩されることで、すべてのオーストラリア人が使用できるようになりました。

次は、Megan Cope によるインスタレーションです。

©︎︎MeganCope,Deadwood,2021/Photo:CarlWarner paperbark,ricepaper,beeswax,inkInstallationview,OCCURRENTAFFAIR,UQArtMuseum,2021.ReproducedcourtesyoftheartistandMilaniGallery,Brisbane.

ペーパーバーグの木の皮に貼られた文字をよく読んでみると、オーストラリアの豊かな陸地や海などの管理に関する情報がびっしりと書き込まれています。これはオーストラリア大陸に西洋人が入植 (1788年〜) して来たことによる影響を示唆しています。

そして次は、2003年に Telstra National Aboriginal Art Award を受賞し、国内だけではなくアメリカやヨーロッパなどでも個展を開いているオーストラリアで最も重要なアーティストのひとり Richard Bell の作品です。

©︎︎RichardBell,Littlefisharesweet,2021/Photo:CarlWarner syntheticpolymerpaintoncanvas,andpaperbagInstallationview,OCCURRENTAFFAIR,UQArtMuseum,2021.ReproducedcourtesyoftheartistandMilaniGallery,Brisbane

彼は先住民と西洋人との関わりや政治的問題などを多く題材にしており、この作品は1968年〜1987年までクイーンズランド州の首相だった Sir Joh Bjelke-Petersen を描いたものです。彼の保守主義的な考え方や組織の腐敗、先住民やLGBTQI コミュニティに対する差別などの問題を示唆しており、赤いネクタイとブロンドの髪が元アメリカ大統領にも見えます。

最後の作品は Tony Albert がシドニー滞在中に目撃した、実際の事件がモチーフになった作品です。

©︎︎TonyAlbert,‘Brothers’series,2013/Photo:SharonBaker reproductionondi-bondCollectionofTheUniversityofQueensland.GiftofTonyAlbertthroughtheAustralianGovernment’sCulturalGiftprogram,2014.ReproducedcourtesyoftheartistandSullivan+Strumpf,Sydney.

裸になった体の上に、赤い的が描かれている若いアボリジナル男性の写真。これはキングスクロスで起きた発砲事件に対する抗議活動の時のことをイメージしたもので、アボリジナルの人たちに宿を提供するシドニーの Kirinari Hostel の協力を得て撮影されました。

2012年4月、シドニーの繁華街キングスクロスで、10代のアボリジナルグループの乗った盗難者が警察から逃げようとして歩道へ乗り上げ、歩行者をはねました。そのことにより警察は車内に向けて数発を発砲し、乗っていた2人が死亡。更に過剰な暴行をしたとして、その後アボリジナルコミュニティによる抗議活動が行われています。

いかがだったでしょうか。重くて難しいテーマが多いですが、観光だけでは見ることのできないオーストラリアの一面を感じることが出来る機会になればと思います。

国立美術学校はちょっと裏通りにあるので、シドニーに長く住んでいても知らない人も多いです。ですがシドニー中心部からわりと近いですし、シドニーの歴史も感じられるので、機会があれば行ってみてください。

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