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ロンドン南部のセルスドンにあるレストラン「バーベイン(vervain)」は、珍しく「イギリス式」を前面に出したブラッスリー。
バー・カウンターもありミシュラン星シェフによる本格的な料理が楽しめますが、子供も歓迎の落ち着いたレストランです。
実はこちら、ホテルの一部でコロナ前には私の両親が併設のゴルフ場「De Vere Selsdon Estate Golf Club」でプレーしたことがあります。懐かしいだろうと思い、3年ぶりに再びイギリスにやって来れたふたりのために、こちらのレストランを予約しました。
ところが、到着してみてビックリ! 以前はきれいに芝が刈られたゴルフコースだったところがいまは草が生い茂り、かなり“ワイルド”な状態に。
ところどころに置かれたベンチや草っ原に人々がのんびりと座っており、ゴルフ場だった面影はすっかり消え去っていました。驚いた両親がスタッフに訊ねたところ、ちょうど今年2023年からブティック系ホテルの「Birch」に経営が移り、新しく生まれ変わったことを教えてくれました。
バーチ(birch)とは樺の木の一種で、レストラン名であるバーベインは、クマツヅラとして知られるハーブのことです。こうした名前が示すとおり、バーチ・グループ(セルスドンは2ブランド目のホテルです)は自然との調和を大切にし、この一見「草ボーボー」に見えるガーデン周辺も“ワイルド化”プロジェクトの一貫のようです。
15歳以下は利用できないもうひとつのシックなレストラン「Elodie」と比べて、バーベインは「B」というホテルのロゴつきシャツとジーンズというスタッフの出立ちを見てもわかるように、家族連れでも入りやすい気軽な雰囲気です。
オレンジがかったサーモンピンクが基調色の店内には観葉植物が随所に置かれ、なんだかリゾート風。さすがは郊外、この雰囲気にしては良心的な値段で、お得なキッズメニューも揃っているのがうれしいです。
ホテル名を冠した「Birch Soup(£8)」はミルクピッチャーのような陶器で店員がわざわざ注いでくれる、冷たいスープ。
同名同額の「Birch Salad」もコーンウォール産の白身魚のムニエル(Line Court Cornish Cod(£19))も、とにかく色鮮やかです。バーチのワイルドな庭園では、植物のほかにハーブや野菜なども育てているようなので、かわいらしい食用花も自家製栽培されたものかもしれません。
あらかじめ頼んでおいた、父親へのメッセージつきデザートプレートもバッチリ用意してもらえ、おかげで両親のイギリス滞在“最後の晩餐”にふさわしい、素敵な夜を過ごすことができました。
「伝統的なイギリスの郊外型ホテルではない」と、胸を張って主張するバーチの客室にはテレビと執務机がなく、かわりに大型のベッドが備えつけられています。
騒がしい世間のノイズから逃れ、ありのままの姿に返したガーデンや快適なベッドでゆっくりしてほしい、というこだわりのコンセプトを持つホテル、バーチ。宿泊も魅力的です。