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スコットランドの冬は、暗く、寒く、そしてとても長いんです。そんな中で人々の気持ちを明るく幸せにする、冬の間の最大イベントがクリスマスです。人々の中にはクリスマスの1か月以上前から家の内外をキラキラに飾り付け、気持ちも雰囲気もどんどん盛り上げていきます。
そんな人々にとって大切なクリスマスですが、スコットランドでは4世紀もの長い間、クリスマスを祝うことが法律で禁止されていたことをご存知でしょうか。
今回はそんな歴史も含め、スコットランドのクリスマスを紹介していきたいと思います。
元々は海から渡って来たケルト人がスコットランド人の起源であるといわれています。ケルト人は自然信仰の民族で太陽信仰を主とし、星の位置、月の満ち欠け、ストーンサークルなどから1年、1か月、1日の周期を知ったり、自然にまつわる様々な祀りごとを行ってきました。
そんな中、12月の冬至の時期に行われていたのがNedithic Solstceという祀りごとです。これは1年で最も夜が長く日が短くなるこの時期に行われ、火を焚いて暗闇を明るくし、太陽が戻ってくるように、と祈る儀式であったようです。
その後スコットランドにバイキングが上陸するようになってからは、やはり12月の冬至の時期にViking Yuleというお祭りがされていたそうです。これもまた楽しく明るいイベントによって、スコットランドの暗く寒く長い冬を乗り越えるためにおこなわれていたそうです。
1500年ごろには、スコットランドではクリスマスの時期のお祭りは大変な大騒ぎになっていたようで、様々な問題も起きていたこともあり、ついに政府が1640年にスコットランドでのクリスマスのお祝いを法律で禁止してしまいます。そして1958年にクリスマス(12月25日)と翌日のボクシングデー(12月26日)が正式に国の祝日になるまでのおよそ400年間、スコットランドの人々はクリスマスを祝うことが許されていませんでした。クリスマスといえばキリスト教の最も重要な日であり、そのお祝いがつい70年ほど前まで法律で禁止されていたとは、私も大変驚きました。
その代わり、と言ってはなんですが、長い間クリスマスのお祝いが禁止されていたスコットランドでは、年末年始が重要な役割を果たしています。特に大晦日(12月31日)はHogmanayホグマネイと呼ばれ、人々はストリートパーティーで盛り上がります。エジンバラのホグマネイは世界的にも有名で、大きなストリートパーティーや花火、ボンファイヤーと呼ばれる大きな焚火で町中を明るくし、人々は夜通し歌って踊りながら新年を迎えるそうです。
昔はYule Bunsといういびつな形の長いパンを家族各々に焼き、そのうちの一つに銀貨を入れていたそうです。銀貨入りのパンに当たった家族には、幸運が訪れるといわれていたそうです。
また、Rowan twig(ローワンという木の小枝)を焚火で燃やすことで、人間関係を良くし、気分を穏やかにして過ごしていけることを願う習慣もありました。
その他には、First Footerといって、最初に訪れたゲストには幸運が訪れるといわれ、炭やウイスキー、塩やパンなどのプレゼントが贈られたそうです。
残念ながら現在ではこれらの伝統的な行事をする家庭はほとんどないようです。
大晦日であるホグマネイには、家じゅうの大掃除を行い、家の汚れを落として新年と共に幸運を迎え入れるという、日本と同じような習慣があったそうです。ちなみに大掃除といえば、イギリスではスプリングクリーニングといって春に行われるものなので、隣の国であっても習慣が異なるのが興味深いです。
そしてスコットランドの人たちは、大晦日には花火と焚火、近所の人たちが集まってパーティーをします。これは昔から現在まで続いている楽しい習慣ですね。
現在ではスコットランドにおいても、クリスマスは世界の他の国々と同じように祝います。
クリスマスツリーを飾り、ツリーの下にはプレゼントを置きます。クリスマスイブには子供たちは寝る前に、サンタクロースのためにミルクとミンツパイ(ラム酒漬けのフルーツがぎっしり入ったパイ)、トナカイのために水と人参を用意します。クリスマス当日は家族で過ごし、ターキーを主としたロースト料理を食べます。
(スコットランドを含む)イギリスのクリスマスは、日本のお正月と似た感じで、家族と一緒に特別な料理を食べて、賑やかで大切な時間を過ごす、という一日が普通です。
私にとって今年はスコットランドで過ごす初めてのクリスマスです。仕事の関係で今年は残念ながら家族とは別々で、夫と2人で過ごす静かなクリスマスになりそうです。それでもやはりクリスマスの飾り付けをし、ロースト料理を作り、家族を想いながら楽しい一日を過ごしたいと思います。
今回はスコットランドのクリスマスについて紹介してきました。今回調べるまで、私自身もスコットランドでは400年もの長い間クリスマスが法律で禁止されていたことを知りませんでした。とはいえ、クリスマス当日にお祭り騒ぎすることが禁止されていただけで、きっとスコットランドでも毎年クリスマスは家族で大切に過ごしていたのではないかな、と想像します。
意味は違っても、この時期に大昔から行われてきたイベントは、スコットランドの暗くて長い冬を明るくし、楽しく過ごすためのものであり、この地で暮らす人々にとっては重要なイベントだと思います。
私もスコットランドでの初めてのクリスマスを、楽しく過ごしたいと思います。
Nollaig Chridheil!( スコットランドのゲール語でメリークリスマス!)