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スコットランドの人々にとって、毎年1月25日は特別な日です。この日は多くのスコットランド人がハギスを食べ、スコッチウイスキーを飲みながら、国民的詩人であるロバート・バーンズを想う、という日。スコットランド人ではない私たちからすれば、その意味を理解することは難しいのですが、スコットランドの人々にとっては大切な風習となっています。
さて、今回はスコットランドにしっかり根づく、この特別な風習「バーンズナイト」について紹介したいと思います
1759年1月25日、ロバート・バーンズは、7人兄弟の長男としてスコットランドに誕生しました。彼はスコットランドの言葉を用いた詩、作詞家であるとともに、スコットランドの民謡の風習や普及に努めた、世界的に有名な詩人です。
最も有名な作品としては「Auld Lang Syne」。日本でいう「蛍の光」が挙げられます。この曲は現在でも年末年始には必ず世界各国で歌われていて、特にスコットランドでは人々が腕を組みながらこの歌を合唱します。
1796年7月21日にロバート・バーンズが亡くなったあと、家族や友人が彼の死を悼んで、食卓を囲みながら彼の歌を歌ったことがきっかけとなり、後に彼の誕生日である1月25日に毎年彼を想いながら食卓を囲んだことが「バーンズナイト」のきっかけとなったようです。
スコットランドの人々は、毎年1月25日にロバート・バーンズが書いた「ハギスに捧げる詩」を読みながら、ハギスとマッシュポテト、カブのマッシュを食べ、スコッチウイスキーをのむという食事をします。
おかしな習慣に感じるかもしれませんが、毎年節分には巻きずしを食べ、端午の節句には柏餅を食べるという習慣をもつ日本人にとっては、「なるほど。1月25日はハギスを食べる日なんだな。」と、その習慣を自然に受け入れることができるのではないでしょうか。
この日、スコットランドの衣装であるキルトに身を包んだバグパイプ奏者たちを前に、役者がスコットランドの古い言葉であるゲール語で「ハギスに捧げる詩」を朗読し、ハギスを割って中身を出す、というパフォーマンスを行い、それがテレビ放映されます。そして人々は各家庭でハギスを食べ、腕を組みながら「蛍の光」を合唱してロバート・バーンズを想うのだそうです。
ハギスはスコットランドの代表的な国民食のひとつです。羊の胃袋に羊の内臓、ハーブ、オーツ麦を詰めて長時間蒸した料理です。内臓独特の臭みはありますが、味に深みがあり、個人的には好きですね。
このハギスと、マッシュポテト、マッシュしたカブを混ぜながら一緒に食べ、ウイスキーを飲みます。
最近ではベジタリアン用の「ハギス」も売られています。
今回はスコットランドの「バーンズナイト」という習慣を紹介してきました。最初は「詩人」がこれだけ世界的に有名になるものだろうか、と疑問に思っていましたが、娯楽が少なかった時代において、偉大な詩人は人々から称賛される存在だったようです。シェークスピアや小野小町といった存在でしょうか。
いまだに国民から愛される詩人を想い、ハギスを食べて彼のつくった歌を歌う。なんと平和で楽しい風習ではないでしょうか。
今年の1月25日は私もハギスを食べ、ウイスキーを飲み、蛍の光を合唱して過ごそうと思っています。