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パリ・オリンピックは一部競技がパリ以外の場所でも開かれます。そのうちの一つがセーリング。会場となる南仏マルセイユについて、町の雰囲気や滞在場所の選び方、競技場までの行き方などをまとめました。
マルセイユと聞くと「治安の悪い町」というイメージを持つ人も多いと思います。確かに、これはフランスに暮らす人々も同じイメージを持っていて、多国籍のスレた港町という印象はあながち間違っていません。
以前、南仏の他の自治体の観光局の人と話したときは、「フランスには唯一、知名度を上げるためのプロモーションをしなくても良い自治体がある。それがマルセイユ。あそこは何もしなくても、(犯罪で)常にテレビに出るから」とブラックな冗談を言っていました。
ただ、この印象のためにマルセイユを避けていると、フランスの魅力のいくつかを失ってしまいます。「治安が悪そう」というイメージは、同市の鉄道ターミナル駅であるサン・シャルル駅など中心部の市街区の雰囲気で、同じ市内でも中心部から少し沿岸部へ離れると、一気にリゾート感が強くなります。
パリ・オリンピックのセーリング会場「ルーカス・ブラン・マリーナ」のある地区は、マルセイユ市内にありつつも海浜行楽地の趣きがあります。
さらにここ最近は、マルセイユ市もイメージの向上に努めており、旧港周辺はヨーロッパ地中海文明博物館(MuCEM)などのデザイン性の高い現代建築が、歴史的建造物と調和して立ち並ぶなど、文化・芸術都市としての魅力が増しています。
セーリング会場となるルーカス・ブラン・マリーナ周辺は、海水浴場があるプラド海岸に隣接する、マルセイユ市民が手軽に通える日帰りリゾートです。訪れてみると、同じ市内でも、こんなに雰囲気が変わるのかと驚くと思います。
市内にありますので、程よく都会の便利さが散見できます。旧港などからのアクセスも良いですし、周囲にはスーパーマーケットもありますし、多くはないですがレストランなども立ち並んでいます。ただし、正直なところ海水浴場に面したいくつかの店舗は質の高いお店とは言えないため、ここでフランスのグルメを堪能という形では使わない方が良いでしょう。
五輪観戦にもっとも気をつけたいことは、暑さ対策です。パリ・オリンピックの前年、2023年夏に行われたテストイベントを取材する機会があったのですが、とにかく日光がきつかった記憶があります。
オリンピックのセーリング競技が開催される今年の7月28日〜8月8日も、とても暑くなる可能性が高く、当日はいろいろな場所で長時間待つことも多いはずです。帽子や日焼け止めクリームなど、対策を万全に行うことをおすすめします。
マルセイユでの、特にオリンピック観戦時の宿泊において、滞在に便利なのは、「サン・シャルル駅」「旧港」「ルーカス・ブラン・マリーナ」「スタッド・ヴェロドローム」の各周辺になると思います。
サン・シャルル駅は、マルセイユから各方面への長距離列車が発着する駅。移動が早朝や夜遅い場合の宿泊場所として重宝します。
旧港は、マルセイユ観光のハイライトというべき地区。前述したヨーロッパ地中海文明博物館に加えてコスケール・メディテラネ(マルセイユ郊外にある貴重な洞窟壁画を再現し体験できるアトラクション)、サント・マリー・マジョール大聖堂、マルセイユ歴史博物館、イフ島への船着場などがあります。
なお、ギリシャのアテネで採火された船でフランスまで運ばれるオリンピックの聖火は、2024年5月8日にマルセイユの旧港に到着します。また旧港からルーカス・ブラン・マリーナのある地区へは、海沿いを走る83番の路線バスで1本です(ただし、海へ行く人で混むことが多いです)。
ルーカス・ブラン・マリーナ周辺は、オリンピック会場まで徒歩でアクセス可能。ホテルもリゾート仕様のものが多いです。
スタッド・ヴェロドロームは、同地にあるサッカーチーム「オリンピック・マルセイユ」のホームスタジアム。周辺には大きなショッピングモールと都市型ホテルがあり、ルーカス・ブラン・マリーナがある海岸部までは路線バス1本ですぐ、もしくは徒歩でも行くことができます。
マルセイユは、巷に流れるさまざまな言説で、訪れる前は及び腰になってしまうこともあるかもしれない場所ですが、歴史、文化、食など知れば知るほど懐が深く、素晴らしさにあふれた町です。私個人としては、マルセイユはフランスのなかでも、好きな町の上位に入っています。
オリンピックを機会に、またそれ以外の訪問でも、財布やスマホなどの貴重品には十分に気をつけつつ、魅力を見つけてみてください。