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ロンドンのウォータールー橋近く、テムズ河とストランド通りの間にある「サマセット・ハウス(Somerset House)」といえば、冬の間のアイススケート場やロンドン大学附属のコートールド・ギャラリーがよく知られていますが、今回は“映えスポット”ならせん階段と、まさにいまの時期にピッタリのレストラン名「スプリング(Spring)」を訪れました。
テンプル駅近く、ストランド通りにあるキングス・カレッジ横から正面入口を通り抜けると、壮大な建物をバックに立つジョージ3世の像がお出迎え。
建物と銅像、どちらもイングランドの重要指定建造物第1級に登録されるほど古い歴史をもち、旧サマセット・ハウスの初代家主だったサマセット公の死後は1553年以来、主に王族関係者の住居として使われてきました。
18世紀以降は次第に廃れ、1775年に取り壊されると政府の命を受けた建築家、ウィリアム・チェンバースが新古典主義(Neoclassicism)を取り入れ、再建に着手し始めます。
ネオ・クラシズムとは古代ギリシャとローマに刺激を受けた様式のことで、イギリスではジョージ王朝時代に作られたジョージアン様式の総称でもあります。
ギリシャ神殿のような柱や左右対称で直線的なデザインはバッキンガム宮殿やイングランド銀行などでもおなじみで、当時の主要な政府機関や王室関連の事務所を集めた新生サマセット・ハウスにもピッタリな格調高い建築様式です。
1801年の完成を経て20世紀後半から一般開放が進むと、コンサートやファッションショーの会場としても利用され、新棟にはアートスタジオが設けられるなど現在は役所に代わり、芸術文化の発信地となっています。
訪れた日の広場には竹やぶが出現! 香港拠点のアーティスト、ジェン・ボーが都会のなかに作り上げたこの竹庭は、2024年4月28日まで見られます。
サマセット・ハウスには有料のコートールド・ギャラリー内、それぞれ無料の西棟、南棟に計4つの素敵ならせん階段があります。南棟のスタンプ階段(Stamp Stairs)は扉から入ってすぐなので容易に見つけられましたが、お目当てのネルソン階段は西と南棟に挟まれた奥にあって探しづらかったのと、間の悪いことにこの日は一般公開前の国際アート展がプライベート開催されており、チケットなしでは通れなかったため、たったひとつしか見られないという予想外の展開に。
1789年より印紙局として使われていた場所に設けられたことから、スタンプ(印紙)階段と呼ばれるこちらは、青と白が基調の華やかなネルソン階段と比べると、地下の方などはいかにもオフィス仕様で少し無骨ともいえるデザインですが、ちょうどクラフト・デザイン展の巨大な手織り布がつるされており、シンプルな階段をバックに鮮やかな色が映えていました。
1855年まで国中の新聞がこちらに持ち込まれ、すべての新聞に徴税済みである証の印紙が貼られました。そのせいか、スタンプ階段はまるで印紙のように、正方形にらせんを描くさまがユニークです。
階段を見たあとはアート展同様、かなり混み合っていたカフェを避け、ゆったり落ち着けるレストラン「スプリング」にてランチとしました。
国内税収局が入っていた新棟で、オーストラリア出身のミシュラン星シェフ、スカイ・ギンジェル氏が開いた同レストランは今年2024年でちょうど10周年を迎えます。
旬の食材を利用し、環境にも配慮することに強い信念をもつギンジェル氏は、ヘレフォードシャーでバイオダイナミック農園を営むFern Verrowから食材の大部分を調達しており、頼んだセットコースの前菜もこちらの葉物野菜を使ったシーザーサラダでした。
ポレンタの上にミートボールが乗ったメイン料理は、濃厚ながらもシチリア風ソースのサルモリッリオがさわやかさを加え、飽きずに食べられるちょうどよい量です。
メレンゲとブラッド・オレンジのシャーベットがデザートについて£33(2コースは£29)とは、ロンドンでこの雰囲気のお店としては手頃ですが、タネが盛り盛り、味も健康にもよさそうなパンは別料金なことと、ドリンクが高めな点はお気をつけを。
季節の花、水仙やヒヤシンスが飾られたテーブル、かわいい制服を着こなす気さくなスタッフ、最後にちょこんと出てきたトリュフのチョコまでおいしいという、大満足のスプリング。
ビジネス・ランチが多そうで、13時が近づくにつれどんどん席が埋まっていきました。この日は普段以上に客足が伸び、8割ほどの稼働率だというので、予約なしで入れてラッキーでした。
テムズ河沿いに位置する南棟のエンバンクメント・ギャラリーでは現在、ハロー・キティなど日本の“カワイイ”も満載な「Cute」展が開催中(4月14日まで)です。
現代文化の特別展や、それぞれ違った魅力をもつらせん階段めぐり、こだわり食材を繊細に調理するレストランで舌鼓を打つなど、お好みの過ごし方でサマセット・ハウスを楽しんでくださいね。