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イタリアのグランド・キャニオンと呼ばれる「ラーメ・ロッセ」

阿部 美寿穂

阿部 美寿穂

イタリア特派員

更新日
2024年8月27日
公開日
2024年8月27日
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長い歴史を持つ国、イタリア。さまざまなタイプの見どころが全土に広がり、何度訪れても決して飽きることはありません。しかしイタリアには、遺跡や文化遺産だけではなく、驚くべき自然の名所が存在するのです!その中でも、イタリア版「グランド・キャニオン」と称される場所が、フィアストラのラーメ・ロッセです。今回は、この素晴らしい自然の絶景を訪れる方法や、その魅力について紹介します。まだまだ知る人も少ないですが、今後、イタリア旅行を予定している方や自然愛好家にとって、必見のスポットとなっていくことでしょう。

イタリアのグランド・キャニオン「ラーメ・ロッセ」とは?

新型コロナウイルス感染症の拡大以降、特に健康と体力維持(気力も)には人一倍気をつけていた筆者。日頃からなるべく歩くようにはしていたが、さすがに砂利で覆われた斜面をノンストップで登っていくのには息が上がる。

筆者は、だいぶ前に、イタリアにはグランド・キャニオンのような壮大な場所があることを耳にしていました。
その後、すっかりその存在を忘れていましたが、今回イタリア人の友人が「ねえ、一緒にグランド・キャニオンにハイキングに行かない?」というのです。
グランド・キャニオンと聞いて真っ先に頭の中に浮かぶのは、アメリカのアリゾナ州の峡谷グランド・キャニオン。どこまでも続く赤茶色の断崖がそびえ立つ景色が脳裏をよぎり、大変なハイキングになりそうなのだが(?)と返答をせずにいると「グランド・キャニオンってねえ、マチェラータの方にあるの。地元のアルペンクラブが、毎週いろいろなスポットに行くエクスカーションをやっていて、そのツアーでみんなでいけば大丈夫だし安全だよ。お弁当も作って持っていこう。お昼もみんなで食べるんだよ。お友達もできるよ」と友人。
「なるほど、みんなで行くのなら大丈夫かもしれない」と思い、早速友人に2名分のツアーの申し込みをしてもらい、グランド・キャニオン”ラーメ・ロッセ(直訳するとイタリア語で赤いナイフの刃)”に登るための荷作りを始めました。エクスカーション当日の朝の出発時間が早いため、前日にローマから友人が住むペルージャまで行き、一晩泊まらせてもらうことにしました。

このイタリア版グランド・キャニオン「ラーメ・ロッセ」は、イタリアにある20の州のうちのひとつ、マルケ州(Regione Marche)のマチェラータ県(Provincia di Macerata)のフィアストラ(Comune di Fiastra)という場所にあります。マルケ州は、イタリアの地図をブーツの形に例えると、ふくらはぎのあたりに位置する州です。
ラーメ・ロッセは、フィアストラ市にあることから「ラーメ・ロッセ・ディ・フィアストラ(Lame Rosse di Fiastra) / フィアストラのラーメ・ロッセ」とも呼ばれます。
友人によると、マルケ州とウンブリア州にまたがるシビリーニ山脈国立公園(Parco Nazionale dei Monti Sibillini)にあるラーメ・ロッセは、古くからイタリア人によく知られており、春から夏にかけては何千人もの人々が訪れる場所だそうです。豊かな自然に街から比較的簡単にアクセスできるため、人気のスポットとなっています。

グランド・キャニオン「ラーメ・ロッセ」の行き方-ツアーガイドの利用がおすすめ!

写真奥に見えるのがフィアストラ湖。当日のハイキングツアーの参加者は約40名。犬も4~5頭いたが、犬によっては、途中の山道で疲れて歩けなくなってばてていた(ほかの犬が励ましていた)。それぞれがフィアストラ湖の前に車を停め、このツアーの待ち合わせ場所まで歩いてきた。ここからハイキングがスタートする。ツアーに申し込んだ人が全員そろうのを待っているところ。

ラーメ・ロッセへは路線バスが通っていないため、車で行く必要があります。個人や家族でハイキングに行く方も多いため、自分たちで行っても危ないスポットではありませんが、イタリアのボーイスカウト団体や環境団体、山岳クラブなどが主催するガイドつきの一日トレッキングツアーなどに参加する方法が一番簡単でおすすめです。ツアーガイドを利用すると、専門のガイドがラーメ・ロッセの歴史や魅力を丁寧に案内してくれます。初めて訪れる方や、自然に詳しくない方にとっては、安心してハイキングを楽しむことができます。

ラーメ・ロッセは、マルケ州マチェラータ県フィアストラ市のサン・ロレンツォ・アル・ラーゴ村のフィアストラ湖の上にあるフィエーニ山 (海抜:1323メートル) とペトレッラ山 (海抜:1155メートル) の間に位置しています。ラーメ・ロッセに登るにはさまざまなルートがありますが、最も一般的なのは、フィアストラ湖から出発する短いルートで目的地に到達するコースです。今回、筆者が参加したツアーもこのコースのものでした。車は、フィアストラ湖の前に駐車しておきます。
このコースで頂上まで(終点のラーメ・ロッセまで)山道を歩いていきますが、それほどきつくはありません。筆者も大丈夫でしたので、普通に健脚で健康な方であれば、問題なく歩けるかと思います。途中の森の中からは、湖が垣間見え、素晴らしい風景が楽しめます。森の中は何カ所か湧き水が流れ、小鳥がさえずり、かわいいお花もたくさん咲いています。

いざグランド・キャニオンへ出発!美しい自然を堪能しよう

林の中に咲くかわいらしい野生のシクラメン(Cyclamenpurpurascens)。イタリア語では森のシクラメン(CiclaminodiBosco)と呼ばれる。サクラソウ科に属するシクラメンの高さは10cmほどで、香りを放つ紫色やピンク色の花とハート形の葉を持つ。イタリアの標高2000メートルまでの山脈の森の中に自生している。

筆者が参加したツアーは、イタリア山岳クラブが主催する所要時間約3時間の初級レベルのツアーです。

開催者
イタリア山岳クラブ(ClubAlpinoItaliano)のペルージャ支部
ツアー名
マウンテンセラピー「ラーメ・ロッセとフィアストラ湖」
ツアーカテゴリー
ハイキング
参加料
一人15ユーロ
ツアー内容
フィアストラのラーメ・ロッセは、大気の物質の浸食のおかげで形成された、粘土とシルトによって結合され砂利で構成された尖塔と塔の形をした岩々です。マチェラータ県フィアストラ市のサン・ロレンツォ・アル・ラーゴ村のフィアストラ湖の上、フィエーニ山とペトレッラ山の間に位置しています。それらの下には、同じ名前の湖に源を発するフィアストローネ川が流れています。同じ道を往復する旅程は7キロメートル、標高差は200メートルです。最初は未舗装の道路を歩き、その後は、ほとんどシラカシの森の中の日陰を歩いていきます。ツアーの往復の所要時間は、約3時間です。フィアストラ湖のダムまで車でお越しください。ここから徒歩でスタートします。
所要時間
3時間(途中の休憩時間は含みません)
ルートの長さ
7キロメートル
難易度
T(観光)/E(ハイキング)レベル
用意するもの
ツアーに参加する季節に適した服装を着用のこと。トレッキングシューズ(できれば足首までの長さ)、杖やスティック、着替えはサーマルシャツ、スウェットシャツまたはフリース、K-WAYなど。水(少なくとも2リットル)。ルート中には、水の補給場所はありません。
集合場所
午前8時にペルージャのポンテ・サン・ジョヴァンニのバール「ベッラ・ナポリ」前に集合
参加方法
事前にイタリア山岳クラブ(ペルージャ支所)に電話かメールでお問い合わせ
URL(イタリア山岳クラブ)
https://www.cai.it/
URL(今回のツアーを開催したイタリア山岳クラブペルージャ支部)
https://www.caiperugia.it/index.php
ひたすら森の中を歩くこと1時間半。ひらけた場所に突然グランド・キャニオンのような様相の岩々が現れる。ガイドさんが「終点ですよ頑張って!」とみんなに声をかけ始めた。美しい色・形の岩に思わず見とれてしまう。

いよいよツアーのクライマックス、最後の部分まで来ました。森の中は日陰でずっと涼しかったのですが、一番最後の頂上部分はひらけていて、強い日差しが照りつけています。前方と左側を見ると、なんと岩に囲まれているではありませんか。地面は土から砂利になり、きつい上り坂になってきます。急斜面のため、後ろを向いたら転げ落ちそうで、前だけを見て一生懸命歩きました。

頂上に到着。ここで休憩をとった参加者たち。登ることに精いっぱいで後ろを見ていなかったが、振り返ると絶景が広がっていた。これから来た道を戻る。参加した犬たちは、全頭なぜか人間より疲れていた。
「イタリアにもこんな場所があるんだね!」と初めてラーメ・ロッセを見た参加者たちは大満足。名残惜しいが、グランド・キャニオン前で30分の休憩のあと、みんなで下山する。この日、グランド・キャニオンからの帰り道は途中でツアーが2つのグループに分かれた。筆者が参加した3時間のツアーは、スタートした地点まで真っすぐ戻る。分かれたもうひとつのグループは、さらに森の中を進み、ほかの場所も見学する。こちらのツアーは1日ツアーとなり、所要時間は7~8時間程度。

まとめ

イタリア版のグランド・キャニオン、フィアストラのラーメ・ロッセについてご紹介しました。イタリアの自然の美しさと魅力に触れることができるこの場所は、今後ますます注目を集めることでしょう。自然の息吹を感じながら、心洗われるひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。次回のイタリア旅行では、ぜひこれらの大自然が感じられるスポットも訪問場所としてリストに入れてみてください!

もし上記の「イタリア山岳クラブ」のガイドつきツアーを利用してラーメ・ロッセを訪れてみたい方は、筆者がツアーの種類や実施期間についてお問い合わせをいたします。ご遠慮なく、筆者のプロフィールページのメールアドレスまでご連絡ください。ツアーのガイドさんは、イタリア語のほか英語を話せます。「英語でコミュニケーションをとることができる健康な方なら、どなたさまもご参加ください」とのことでした。天気が悪天候でなければ、ツアーは催行されます。

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