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アラン島はスコットランドの西側にある、人口5000人のスコットランドで7番目に大きい島です。
そら豆型の島の面積は432平方メートルで、愛媛県と同じぐらいの大きさなんですが、スコットランドの人々はこの島を「ミニチュアスコットランド」と呼びます。というのも、この小さな島の中には「スコットランドといえば」というもの(例えば山、丘、滝、ビーチ、城、ウイスキー、ゴルフなど)が全て揃っているからです。
アラン島はスコットランド本土からフェリーで約1時間と行きやすいこともあり、地元の人々や観光客の大人気のホリデースポットとなっています。
アラン島にはウイスキー蒸留所が2か所あります。1つは島の北側にある1995年設立のロックランザ蒸留所で、もう一つは島の南側に2017年に新しく設立されたラグ蒸留所です。どちらも独立資本でシングルモルトウイスキーをつくるために設立されたもので、現在世界で大人気のクラフト蒸留所のパイオニア的存在になっています。
元々水質が良いアラン島では1800年代からウィスキーづくりが行われていましたが、やはり物流が不便な「島」においては、質より量の時代にはマーケティングで競争できず、1840年には当時島唯一のウイスキー蒸留所であったラグ(Lagg)が閉鎖されてしまいます。
1993年に島の北側にある山の麓にウイスキーづくりにぴったりの良質の水源を見つけた島の住民が、アラン島に再びウイスキー蒸留所をつくろうと立ち上がりました。 独立資本型で、島の資源を使い、たとえ少量でも上質のシングルモルトウイスキーをつくることを決め、小型の4基の蒸留器を使って本格的にウイスキーづくりを始めました。 このロックランザ蒸留所は、1997年にエリザベス女王がアラン島を訪問したことで世界中にその存在が知られることとなり、2006年に遂にシングルモルトのアランウイスキー10年が完成しました。
2019年には島の南側にアランウイスキーとは全く別のタイプのシングルモルトをつくるために、新たにウイスキー蒸留所が設立されました。このラグ蒸留所は、スコットランドで最も新しい蒸留所となります。
ウイスキーづくりの過程において、ピート(泥炭)を使って麦芽を乾燥させる手法が用いられることがあります。ピートを使用することでウイスキーに特徴のあるスモーキーな風味をつけることができます。
スコッチシングルモルトのピーティーウイスキーとして有名なものとして、アードベッグやタリスカーがありますが、このラグ蒸留所でつくられるラグウイスキーも、ハイランド産のピートを焚き込んだ、ヘビーピーティッドと呼ばれるかなりスモーキーさが濃いウイスキーとなっています。
ちなみに泥炭はスコットランドに多く存在する湿原に蓄積された泥を原料としています。近年の自然破壊でどんどん湿原が減少しているそうです。このラグ蒸留所は、スコットランドの湿原地の保護活動にも取り組んでいます。
アランウイスキーはスコッチウイスキーの中で「アイランド」という地方のウイスキーに分類されます。アイランドのウイスキーは独特のスモーキーな風味が特徴ですが、このアランウイスキーはバランスの良い、飲みやすいウイスキーです。バーボンの甘く芳醇な香りがあり、満足感があります。
一方ラグウイスキーはスモーキーな香りを強めに押し出した、個性的なウイスキーです。
同じ島でつくられたシングルモルトですが、南北2つの蒸留所で蒸留されるウイスキーには大きく異なる個性があるので、飲み比べてみるのも楽しいと思います。