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ロンドンから南東へ約1時間半のカンタベリー(Canterbury)は、見どころがコンパクトにまとまり、歩いて回るのにちょうどよい町。それでいて、1988年にユネスコ世界遺産に登録された名所が3つもあります! 今年はたっぷりあるGW、首都圏を抜け出して訪れたい、歴史と風情あふれる観光地を紹介します。
597年、ローマ教皇により宣教師として派遣された聖オーガスティンが創建したカンタベリー大聖堂は、『カンタベリー物語』の舞台としても知られるイギリス有数の歴史的観光地です。
1170年にトマス・ベケット大主教が殉教し聖人化されたことをきっかけに、「奇跡が起きる地」としてイギリスのみならずヨーロッパ中から巡礼者が訪れるようになりました。
ホテルや商店に挟まれ、やや窮屈そうなチューダー・ゴシック様式の正門「クライスト・チャーチ・ゲート」をくぐると、そこにはイングランド国教会の総本山にふさわしい壮大なゴシック建築が! 教会へ入るための行列や、戦没者慰霊の庭園を散歩する人々でにぎわっています。
当初「クライスト・チャーチ」と名付けられたこの大聖堂は、最古の部分である地下聖堂に見られるように、初めはロマネスク様式で建てられました。しかし、火災や戦争による改修・再建を経て、次第にゴシック様式へと変化。南東の翼廊には、3つのうち1つだけゴシック様式に彫り直されたアーチがあり、建築技術の進化を感じさせます。
また、緻密なステンドグラスも見どころのひとつ。大聖堂の歴史だけでなく、建築様式の変遷に注目してみるのも面白いですね。 併設のギフトショップにはティータオルやカード、ご当地食品、キャンドルなど、おしゃれなカンタベリー・グッズが豊富に揃っていておすすめです!
◼️| カンタベリー大聖堂 Canterbury Cathedral
・住所 | 11 The Precincts Canterbury CT1 2EH
市壁の外側、大聖堂のすぐ東には大聖堂と同じく、聖オーガスティンがおよそ598年にケント王とカンタベリー大主教の墓所として建てた「聖オーガスティン修道院」の跡地があります。
当時すでにケルト系など、複数のキリスト教の宗派が入り混じっていたイングランドで、聖オーガスティンがアングロ・サクソン人のキリスト教徒化に励んだ甲斐あり、現在のイングランド国教会の基となったローマ・カトリック教会は1世紀を待たずにイングランド中に広まりました。
その間「聖オーガスティン」は、中世のヨーロッパにおいてもっとも重要な修道院のひとつとして、キリスト教信仰の中心となり、計3つの教会と果樹園や庭園、宗教学校から図書館まで作られるなど大規模な発展を遂げます。
その後イングランド国王ヘンリー8世がローマ・カトリック教会と袂を分かち、イングランド国教会を新たに結成すると、聖オーガスティン修道院は宗教改革のあおりを受け、1538年にそのほとんどが破壊されてしまいました。1989年に大聖堂と聖マーティン教会とともに、ユネスコ世界遺産に登録された修道院跡地には、いまも聖オーガスティンが眠っています。
◼️| 聖オーガスティン修道院 St Augustine’s Abbey
・住所 | Longport, Canterbury, CT1 1PF
・URL | https://www.english-heritage.org.uk/visit/places/st-augustines-abbey/
聖オーガスティン修道院から、さらに東へ5分ほど歩いた場所にあるのが、現役の教会としては英語圏で最古の「聖マーティン教会」です。
アングロ・サクソンの異教徒だった6世紀のケント王に、フランスから嫁いだキリスト教徒のベルタが礼拝所として使っていた教会で、布教のため40人の修道士とともにローマからやって来た聖オーガスティンが、大聖堂と修道院を建てる前の活動拠点として、最初に使用を許された場所でもあります。
現在の教会は手狭になってローマ産のレンガで増築されたもので、主要部分となる身廊はロマネスク様式の一種である、初期のアングロ・サクソン様式です。
聖マーティン教会は墓地を含めても5分で見て回れる小規模なものですが、ローマまでの巡礼地図パネルが示すとおり、かつてはイングランドのキリスト教における重要な場所のひとつでした。
◼️| 聖マーティン教会 St Martin’s Church
・住所 | Church Street (St Pauls), Canterbury, CT1 1NH
イングランドにおける「キリスト教発祥の地」として、カンタベリーは1000年以上にわたり、ヨーロッパ中のキリスト教徒にとって神聖で特別な場所でした。その歴史ある町並みを歩きながら、当時の面影を感じてみてください。