【編集部のこんな旅】イタリア・サルデーニャ島の休日~1枚の風景写真に誘われて
ティレニア海に浮かぶサルデーニャ島は地中海の数ある高級リゾートの中でも世界中の「超」セレブがヴァカンスを過ごすコスタ・スメラルダ(エメラルド海岸)があるため、華やかでゴージャスなビーチリゾートのイメージがありますが、お隣(わずか20KMほど、フランス領)の「海の中の山」と称される、コルシカ島同様、険しい石灰質の岩山が連なる山岳地帯、地中海らしい灌木地帯、エメラルドブルーの海に滑り込むような断崖絶壁・・・と実に起伏に富んだダイナミックな景観の島でもあります。私が「ここへ行ってみたい」と決め手になったのもこのTavolara島の風景写真を見たことでした。もちろん日本からのアクセスはいずれかの都市を経由しなければならないのですが、ローマ・ミラノ・バルセロナ・パリなどからLCCを中心にフライトが出ていますので、前後の行程との兼ね合いで選択すればよいでしょう。(私はバルセロナからカリアリIN、オルビアOUT→パリでした)都市間の移動は鉄道・バスもありますが、周遊したり海辺に宿泊するにはやはりレンタカー利用が効率的です。観光の範囲であれば悪路もなく、高速道路含めて交通量も多くはないので技術的に難しいことはないと思います。但し、カリアリ・オルビア・アルゲーロ市内での駐車スペース確保は極めて厳しいので、市内のホテルに滞在する場合は事前に駐車場の有無を確認することをお勧めします。
坂のある街、州都カリアリ
カリアリに到着した旅行者はまず青空に向かって伸びる海岸通りのヤシの並木に南国を感じることでしょう。そして、振り返ればイタリアでおなじみのデパート、リナシャンテやレストラン・ショップが集中する駅前下町エリアから階段状に町が延び、高台の旧市街まで見通せる、カラフルで舞台装置のような印象的な風景が広がります。サルデーニャの州都にして最大の町カリアリですが、市内観光は徒歩でカバーできる規模です。(お馴染みの観光オープンバスはポエットの浜やカリアリを一望する高台まで行くので、これに乗って起伏具合やロケーションを把握するのも有効と思います。大人12€)
荘厳な旧スペイン軍の砦の上に築かれたまさに「市民の憩いの場」 大理石の長い階段を登り切ると広大な広場が。名前通り、テラスからの海をバックにした市内一望の大パノラマが楽します。空港は5~6KMしか離れていないので、着陸に向けて降下していく飛行機も見ることができます。そしてなんと言ってもおすすめは夕陽に赤く染まるカリアリ湾。サンセットのタイミングを見計らい、広場周辺のバールやカフェでスプリッツァタイム(2ドリンク+ピザ、サラミ、チーズなどのおつまみセット=12€くらい)で涼むのが地元流。
駅前のバスターミナル(と言うよりバス停)から路線バスで20分ほどで行ける海水浴場。都市近郊としてはヨーロッパでも最大のビーチの一つだそうです。訪れたのは6月中旬ですでにシーズンでしたので、バスは始発の駅前からすでに満員に。老若男女、みな楽しそうな笑顔です。無料の砂浜、レンタルのパラソルやチェアを備えた有料エリア、各自がそれぞれの停留所で下車して行きます。島北部のセレブ用プライベートビーチとは対照的な庶民の海水浴場ですが、遠浅の海と白砂が8kmほど続く美しい海岸線です。まるで澄んだ川の水のようで自分の足がそのまま透けて見えます。午前中をビーチで過ごしたら、街へ戻り、冷えたスプマンテかビールで遅めのランチなんてことも可能ですので、短期滞在の旅行者でも充分楽しめます。
海岸沿いの下町(チッタバッサ)の路地裏にはたくさんのレストランがあり、日が落ちた21時くらいからはどの店も大変な賑わいを見せます。やはりシーフードは外せず、メニューには日本人好みの料理が並びます。観光地の宿命で、驚くほど安い!というわけにはいきませんが、肉厚の伊勢えびが半身まるまる乗ったパスタや、味つけの塩代わりにシーアスパラガスを添えた赤身マグロさっと炙り、グレープフルーツやセロリなどと合わせた山盛りカラスミなど、ボリューミーなお料理が一品15€程度で味わえますので内容からすれば日本の半額、といった感覚でした。この季節は絶対に「外」。狭い路地裏なので優雅なテラス席というわけにはいきませんが、多少テーブルがガタついたりするのもご愛敬。どの店もフレンドリーで感じの良い接客でした。
ヨーロッパ全般に言えますが、特にサルデーニャのようなリゾート地は気候が安定する夏でありながらバカンスが本格化する前の6月中下旬は観光ベストシーズンな気がします。カリアリは大型クルーズ客船の寄港日には下船観光する乗客でごった返すようですから、ピークシーズンはなおさらでしょう。
旅のハイライト Tavolaraを目指して
カリアリからハイウェイを通り約3時間のドライブにて南の玄関口オルビアから20Kmほど下ったDonDiego半島へ。お目当てはほんの数キロ先の沖合に浮かぶTavorlara島。映画のセットのような人工物にも見えますが、高さは565メートル。長さ5Km、幅はわずか1kmの切り立った石灰岩の山です。ネットを中心に情報を集め、一番心惹かれた角度に見えたこのホテルを選択しました。島の東側に位置するため残念ながらサンセットは見えませんが、日の出時間のシルエットが堪能できました。滞在中は部屋から、プールから、レストランから、テニスコートから常にこのTavolaraを眺めて過ごし、今でもその姿は目に焼き付いています。かつては独立した王国でもあったそうですが、現在は海洋保護区としてわずかな人が住んでいるだけです。(その他レストランと売店が1軒づつ)希少な動植物の説明掲示板を読みながら、遊歩道を辿り、島の先端まで歩いても30分程度だったと思います。島の裏側(写真の反対側)は軍事基地になっており、立ち入り禁止のようですし、ビーチと呼べる場所は辛うじて1か所くらいなので、それほど長居は不要な感じでした。シーズン中はSan Paoloの港から所要20分程度、観光用の船が1時間おきに出ています。港のチケット売り場前を含め、広い駐車場が何か所かあります。
交通量も少なく、見通しの良い道が続きプレッシャーの少ないドライブ。250Kmほどの移動でしたが、カーナビもスマホマップも不要でレンタカー会社でもらう地図と100円ショップで買った方位磁石、さらには標識のみで山を越え目的地に辿り着きました。
今日もいい1日になりそうな予感・・・
時計は22時近く。冬の日の短さの代償を払うとしても、「なんかいい」欧州の夏の夜。
ピタリとはまる色表現。
654段の苦行!「ネプチューンの洞窟」へ
島の西北端、高さ100メートル以上の断崖絶壁が海から垂直に切り立つカッチャ岬。ここにある鍾乳洞が「ネプチューンの洞窟」です。洞窟の入り口は海面すれすれにあるため鍾乳石は海水が混じっている珍しいものだそうですが、シャンデリアを想わせる鍾乳石が池のように溜まった海水に映る幻想的な空間はまさに地下宮殿。コンサートなども催されることがあるとか。音響効果に興味がありますね。サルデーニャの西の玄関口、アルゲーロの港からボートで訪れるツアーもありますが、まるで海に飛び込んでいくような絶壁沿いの急階段の写真を見た瞬間に「ここから行かねば!」と思ったわけです。入場口付近に数台分の駐車スペース(無料)があるだけなので、よほどタイミングが良くない限りは路上に縦列駐車となりますが最後まで大型観光バスも通行できる道幅ですので、超絶運転テクニックは不要です。レンタカーがNGの場合は同じくアルゲーロからの路線バスでアクセスできます。入り口にある唯一のカフェでランチを済ませたら、いざ654段の階段下りへ。目に飛び込んでくるのは吸い込まれそうな紺碧の海と空、そして白い航跡を描いていくクルーザー。PCやスマホ漬けの眼のコリが消えていくようです。第1コーナーをターンすると階段は海面に並行する形になるので、左手下は奈落。ところどころは手すりのみとなり、なかなかの迫力です。写真など撮りながら30分ほどで洞窟入り口に到着。係員がいますのでここでチケットを購入します。
鍾乳洞入場は1時間置きに催行されるガイドツアーのみ(交互に英語・イタリア語解説)で可能です。少し早めに到着しチケットを購入しておきましょう。1回の入場には人数制限があるため、押し寄せてくるボートツアーの団体の後塵を拝すると、何もない岩場で次の回まで1時間待つはめになってしまいます。
道中は日差しを遮るものがなく、当然自販機などあろうはずもなく、サングラスと水は持参必須です。またトイレもありませんのでこれも入り口のカフェで。(要注文)
ポエットの浜もそうですが街中からすぐ近くにこんな綺麗な海があるのはうらやましいですね。
これが「超セレブ」が集うコスタ・スメラルダ(エメラルド海岸)
北東の玄関口、オルビアから北へ1時間も走れば世界にその名を轟かす、コスタ・スメラルダ。数あるセレブ御用達ビーチの中でもその中心に君臨するのがポルト・チェルヴォ。マリーナには世界中の大富豪の大型クルーザー・ヨットが停泊しています。エリア周辺の道路は花で飾られ、急にきれいになるので「来たな」と緊張感?が走ります。港の公共駐車場にさりげなく停めてあるランボルギーニには絶対に擦らないように、慎重に慎重に駐車し、散策に出かけました。ディズニーシー(発想が貧困ですみません)を彷彿とさせる商業施設にはいくつかのレストラン・カフェやヴィトン、エルメスなどのブランドショップが並んでいます。ただし、日中セレブたちは高台の別荘やプライベートビーチでお過ごしのようで、「いかにも」といった人たちを見かけることはなく、歩いているのはほとんど観光客のようでした。
テラスにあるソファが気になります。常連さんがシャンパンでも振舞われてくつろぐのでしょう。
旅の終わりはオルビアにて
コスタ・スメラルダなど島の北東部へのゲートウェイとなっているのがオルビア。空路のみならずローマ郊外のチビタベッキア港との間をフェリーが結んでおり、カリアリへ行くイタリア国鉄や各都市へ行く長距離バスの路線もあることから、サルデーニャ交通の要となっています。しかし、オープンテラスが軒を並べるメインストリート以外にはこれといった見どころもなく、サルデーニャへのIN/OUTの際にちょっと滞在でよさそうな感じでした。しかし、ビーチリゾートに比べればホテル代金の水準が低いので、オルビアを拠点にしてデイツアーを活用する手段もありそうです。街は強烈な日差しを受けて、人々がけだるげにカフェのパラソル下でビールを飲んでいる印象でしたが、日が暮れた22時ごろにはジェラード屋さんにも行列ができるほど。「いったいどこから出てきたの?」というくらいの人出で賑わい驚きました。夕飯に路地裏のよさげな雰囲気の店に入ってみましたが、料理はもちろん家族経営で接客も気持ちよく「当たり」でした。カリアリ同様、リーズナブルでおいしいレストランはたくさんありそうです。
現地で飲んだ白ワインはもれなくヴェルメンティーノ。主にサルデーニャやコルシカ辺りで栽培されているブドウ品種とのこと。ミネラル分を強く感じ、フレッシュでリゾート気分にピッタリのワインでした。
旅行時期:2019年6月
地球の歩き方編集室 柳正樹
筆者
地球の歩き方書籍編集部
1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。
【記載内容について】
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