誰でも自由に本にアクセス!ドイツの「みんなの本棚」
環境意識が高いドイツでは、物がいらなくなったら捨ててしまう前にどこかに寄付したり誰かにあげたりすることがよくあります。
今回の記事では、ここ数年筆者の住むフランクフルトでも見かける「みんなの本棚」というアイデアについて紹介します。
注意:新型コロナウイルスの事態が収束したらぜひ訪れてほしいスポットを紹介させていただいています。この記事では現在のフランクフルトの様子をお伝えしたくて書いています。皆さまの次回のフランクフルト旅行の参考になれば幸いです。
フランクフルトに限らず、ドイツの町を歩いていると、このような棚を見たことはないでしょうか。
棚の中には本がたくさん入っています。
■町なかにある誰でもアクセスできる図書館
これがドイツにある「Öffentlicher Bücherschrank(公共の本棚)」。
意訳すると、「みんなのための本棚」という意味が近いと思います。
「みんなの本棚」の仕組みはいたってシンプル。
本棚の中の本は誰でも自由にチェックでき、気に入った本があればそのまま持ち帰ってOK。
まさに図書館のように無料で本を読める仕組みです。
本棚の中に置いてある本はかつて誰かが読み終わって持ってきたものだったり、団体の寄付だったり。
つまり、誰でも自由にいらなくなった本やみんなに読んで欲しい本を持って来て棚に加えることができるのです。
本棚からもらってきた本を読み終わったら、同じ本棚に返してもほかの本棚に戻しても大丈夫。
返さないといけない義務は存在しないので、そのまま持っておくこともできます。
ここが図書館とはちがうところで、より自由度が高く本棚にアクセスする人、皆に解放されているのがポイント。
■本に旅をさせる、というアイデア
実は筆者が初めてこのスタイルの本棚を見かけたのはドイツではなく以前住んでいたアメリカでした。
読み終わった本を次の人に送るというブッククロッシング(Book Crossing)というアイデアで、アメリカでは2000年代のはじめ頃から始まったと言われています。
ブッククロッシングのウェブサイト上でどの本がどの場所に置いてあるかの詳細がわかるようになっています。
ウェブサイトで見てみるとわかりますが、ドイツでは非常にポピュラーなようで、現時点では5000冊以上の本が登録されていて世界一!
ドイツ人のエコ意識と紙の本を愛する気持ちが人気につながっているのでしょうか。
■みんなの本棚の歴史はドイツで大きく発展
ブッククロッシングのコンセプトから派生してできたと言われているみんなの本棚。
先ほどアメリカでは2000年代はじめ頃から始まった動きと書きましたが、なんとここドイツでは文学をテーマにした交流として1990年代頃から「いつでも利用できる書庫を公共の場に設置する」という考え方がすでにあったそう。
90年代の終わり頃、フランクフルトの近郊にある町ダルムシュタットや、ニーダーザクセン州にあるハノーファーなどでドイツでは最初の本棚が「無料の野外図書館(kostenlose Freiluft-Bibliothek)」として設置されました。
そのあと、2000年代に入り当時マインツにいたインテリアデザインを学ぶ学生によってできた「みんなの本棚」のデザインがボンの市民財団によるコンペで入賞。
このデザインをもとに屋外でも使える耐久性を持つ本棚がさまざまな人によって製作され、ドイツのいろいろな町に置かれるように。
入賞したデザイン以外にも町によってさまざまな置き方や本棚の形があるようで、例えば電話ボックス型の本棚なども見つかります。
ハンブルクではローカル交通VHHのバスの中にも本棚があるそう。
ドイツの各地に設置された数百個もの本棚は非営利のプロジェクト。個人や財団、企業などのスポンサーによって支えられながら本棚を製作し、町の人と本をつなぐサポートをしています。
いらなくなった本のリサイクルを兼ねつつ、できれば誰かに読んで欲しい本があればそれを置いてみるというのも楽しいアイデア。自分の置いた本が誰かと出合い、その人の新たなお気に入りになるというのもおもしろいですよね。
もしドイツの町で本棚を見かけたら、ぜひ中をのぞいてみてください。
筆者
フランクフルト特派員
ユウコフランクフルト
フランクフルト在住グラフィックデザイナー。ドイツ旅行やドイツ生活に役立つ情報を発信中。
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