初めてのワシントンDC旅行。アメリカ在住日本人がおすすめする観光スポット5選

公開日 : 2022年12月08日
最終更新 :

皆さんは、ワシントンDCにどのようなイメージを持っているでしょうか。アメリカ合衆国の首都だということは知っているけれど、いまいちどんな観光スポットがあるのかイメージが湧かないという方もいるかもしれません。そんな方におすすめなのが、まずワシントンDCの中心部に位置するモールを訪問すること。モールは、東は国会議事堂から西はリンカーン記念館まで東西約4kmの広さの公園で、多くの歴史的な記念館や記念碑が集まっています。今回は、モールにある5ヵ所の観光スポットをピックアップして紹介します。丸1日あれば回ることが可能なので、ワシントンDC旅行の参考にしてみてください。

第16代大統領リンカーンを記念して建てられた「リンカーン記念館」

モール(ナショナル・モール)の西端に位置するリンカーン記念館は、南北戦争の終結間際の1865年4月15日に亡くなった第16代大統領のエイブラハム・リンカーンを記念して建てられました。リンカーン記念館の建築には古代ギリシャの建築スタイルが取り入れられ、アテネのパルテノン神殿にインスピレーションを得た建築家ヘンリー・ベーコンが携わりました。

リンカーン記念館
リンカーン記念館

館内の中央には、高さ約5.8mのリンカーン像があります。この座像は、マサチューセッツ州出身の彫刻家ダニエル・チェスター・フレンチのデザインから生まれ、ジョージア州の大理石でつくられました。

彫刻家ダニエル・チェスター・フレンチのデザイン、大理石でできたリンカーン像
彫刻家ダニエル・チェスター・フレンチのデザイン、大理石でできたリンカーン像

リンカーン像だけでなく、記念館の建築にはアメリカ各地から産出されたさまざまな石が使われています。テラスの花こう岩はマサチューセッツ産、上部の階段と外側のファサードの大理石はコロラド州産、堂内の淡いピンクの大理石の床はテネシー州産、内壁と柱はインディアナ州の石灰岩、天井にはアラバマ州の大理石が使われました。

リンカーンの座像を囲む内壁の2ヵ所には、文字が刻まれていることをご存じでしょうか。ひとつはゲティスバーグの演説、もうひとつはリンカーンの第2回就任演説からの引用です。その一節、“that government of the people, by the people, for the people(人民の人民による人民のための政治)”は聞いたことがある方も多いかもしれません。これらを含む館内の装飾彫刻には、ダニエル・チェスター・フレンチの弟子のエヴリン・ベアトリス・ロングマンが携わりました。

館内は、長さ約18m、高さ約3.5m、重さ約270kgのふたつのキャンバス壁画で飾られています。これらふたつの壁画は、リンカーン大統領時代の偉大な成果と、解放と統一を表しており、壁画家ジュール・ゲランによって彫られました。また記念堂の外観には、建築彫刻家アーネスト・C・ベアストウによる州、花輪、花綱、ワシなどの彫刻が施されています。ベアストウは、ゲティスバーグの演説、第2回就任演説、リンカーン像の上のロイヤル・コルティソスの称号のレタリングにも携わりました。このようにリンカーン記念館は多くの人々が建築に携わっており、完成にはなんと1914年から1922年までの8年を要しました。

記念館の前には、かつてマーティン・ルーサー・キングJr牧師が“I have a dream(私には夢がある)”と演説したテラスがあり、このテラスからは、記念館前に広がる人工池、リフレクティング・プールの向こう側にそびえるワシントン記念塔が眺望できます。

キング牧師が演説したテラスから眺めるワシントン記念塔
キング牧師が演説したテラスから眺めるワシントン記念塔

リンカーン記念館には小さなお店があり、葉書やリンカーン記念館に関する書籍、マグカップやキーホルダーなどを買うことができます。記念館を見終わったら、ぜひおみやげ選びを楽しんでみてください。

アメリカ建国への立役者をたたえる「ジェファソン記念館」

タイダルベイスンに建つ白亜のジェファソン記念館
タイダルベイスンに建つ白亜のジェファソン記念館

モールの南にはポトマック川が流れており、タイダルベイスンと呼ばれる池が隣接しています。そのタイダルベイスンの南側に建つ円形ドームの建物が、ジェファソン記念館です。

この記念館は、アメリカ合衆国第3代大統領トーマス・ジェファソンを記念して1943年に建てられました。26本のイオニア式柱で支えられた円形のドームが特徴です。

入り江を挟んだ対岸からのぞむ館内のジェファソン像
入り江を挟んだ対岸からのぞむ館内のジェファソン像

ジェファソン記念館の内部は、白いジョージア大理石で作られ、床はピンク色のテネシー大理石でできています。そして内部中央には、ジェファソンのブロンズ像が堂々と直立しています。

ジェファソンの像
ジェファソンの像

ルドルフ・エヴァンス作のジェファソンのブロンズ像は、左手に独立宣言が書かれた紙を丸めて持っている様子を表しています。像は、ミネソタ州産の黒い花こう岩の台座の中央に置かれており、ジェファソンの生年月日と死亡年月日 (1743 年 - 1826 年) が刻まれています。

ジェファソンの名言の数々が刻まれた記念館の壁
ジェファソンの名言の数々が刻まれた記念館の壁

壁には、ジェファソンの著作からの引用文が刻まれています。ジェファソンの残した言葉の中で、最もよく知られているものは独立宣言の一節ではないでしょうか。独立宣言からの抜粋は南西の壁に、そして1816 年にサミュエル・ケルシュヴァルに宛てて書かれた手紙からの引用文は南東の壁に刻まれています。奴隷制の悪と教育の必要性に対する信念を示した文は北西の壁に、宗教的自由を訴えた「バージニア信教自由法」からの引用文は北東の壁に含まれています。

また記念館の内部のフリーズ部分(内壁上部)には、ジェファソンがベンジャミン・ラッシュに送った1800年の手紙からの抜粋、「わたしは神の祭壇の前で、人間の心に対するあらゆる形態の専制政治に対する永遠の敵意を誓った (I have sworn upon the altar of god eternal hostility against every form of tyranny over the mind of man). 」という引用文が刻まれています。

ベンジャミン・ラッシュに送った手紙からの引用文が刻まれている
ベンジャミン・ラッシュに送った手紙からの引用文が刻まれている

ジェファソン記念館を訪れた際は、じっくりと壁を眺め、ジェファソンの残した言葉を読んでみてください。

ジェファソン記念館の下の階には、ジェファソンや独立記念のころのアメリカを描いた歴史関連の書物、記念グッズなどを購入できるお店があります。

また、タイダルベイスンを取り囲むかたちで咲き誇るポトマック公園の桜は世界的に有名です。園内には約3800本の桜があり、70%がソメイヨシノで13%はクワンザンで占められています。3月下旬から4月初旬、桜が咲くころには盛大なチェリーブロッサムフェスティバル(桜まつり)も開催されますので、ぜひこの季節に訪れてみてはいかがでしょうか。

ホワイトハウスのすぐ近くに建つ「ワシントン記念塔」

アメリカ合衆国の初代大統領ジョージ・ワシントンを記念して建てられたワシントン記念塔は、コンスティテューション・アヴェニューを挟んで、大統領が住み執務を行うホワイトハウスの南側に位置します。

高さが目印!どこにいても辿りつけるワシントン記念塔
高さが目印!どこにいても辿りつけるワシントン記念塔

星条旗に囲まれ、縦に長く伸びるこのモニュメントは、1885年2月21日に完成の除幕式が行われし、1888年に初めて一般公開されました。エジプトのオベリスク(先のとがった石柱)の形に建てられたこの建築物は、ロバート・ミルズによって設計され、最終的にトーマス・ケーシーと米国陸軍工兵隊が完成につなげました。ケルン大聖堂を上回る169.2mの高さは、完成当時世界一でした。

当時、塔の頂上まで到達するのに10~12分かかっていた蒸気駆動のエレベーターは、1901年に電気エレベーターに代わり、さらに1964年、1998年から2001 年、2011年から 2014年、2016 年から 2019 年と段階を分けて修復工事が行われ、今では約70秒で展望デッキに到達することができます。リンカーン記念館やジェファソン記念館のように無料で見学できる施設もありますが、ワシントン記念塔に入場し展望デッキに行くためにはチケット(整理券)を入手する必要があります。

デッキからは国立公園が一望でき、リフレクティング・プールを挟んで建つリンカーン記念館を眺めることもできます。チェリーブロッサムフェスティバルが開催される春には、モールの見事な桜並木を見下ろすもできます。またイベントのひとつとして凧揚げ大会も催されるので、この時期の予約をしてみてはいかがでしょうか。

なおワシントン記念塔内では、トイレや食事ができるレストランなどはありません。最寄りのトイレは、15 番街沿いのワシントン・モニュメント・ロッジにあります。また通りにはたくさんのフードワゴンが出ているので、小腹が空いたらフードワゴンで軽食をとることができます。

ホワイトハウスのそば17番街のフードワゴン
ホワイトハウスのそば17番街のフードワゴン
17番街の道路沿いにあるお土産販売のトラック
17番街の道路沿いにあるお土産販売のトラック

チケット情報

<現地で入手する場合>
場所
ワシントン・モニュメント・ロッジ
※マディソンドライブとジェファソン ドライブの間の 15 番街にあります。
開館時間
8:45 – 18:00
料金
無料
※1人6枚まで取得可能。2歳以上は入場時にチケットが必要です。
<前売チケット>
オンラインの場合
recreation.gov
電話の場合
877-444-6777
※訪問日の30日前から事前予約が可能です。
毎日10:00に限られた枚数だけ前売チケットが販売され、翌日の訪問に使うことができます。
例:10月1日の10:00に取得した場合、10月2日の訪問に利用可能

前もって予約する場合、チケット1枚につき1ドル(約144円)のサービス料がかかり、サービス料金は返金不可です。チケットの在庫には限りがありますので、できるだけ早くチケットをおさえておきましょう。

スミソニアン博物館群を巡るならまず訪れたい「キャッスル」

中世のヨーロッパを思わせるようなシルエットが魅力的
中世のヨーロッパを思わせるようなシルエットが魅力的

イギリスで化学・鉱物学の分野で功績を残した科学者ジェームズ・スミソン。彼がアメリカ合衆国政府に寄付した全遺産を基金として1846年に創設されたスミソニアン学術協会は、今日、1億4700万点の標本と遺物のコレクションを管理している世界最大級の博物館群です。ジェームズ・レンウィック・ジュニアが手がけて1855年に完成させたノルマン式建築のスミソニアン博物館群本部はインフォメーションセンターでもあり、「キャッスル(スミソニアン情報センター)」と呼ばれ親しまれています。

美しい景観を誇るノルマン式建築のキャッスル
美しい景観を誇るノルマン式建築のキャッスル

ワシントン記念塔と国会議事堂の間のモール地区には、キャッスルをはじめ、15以上の博物館や美術館、動物園などがあります。

モール、モール周辺にある主な施設

  • スミソニアン・アメリカ美術館
  • 国立自然史博物館
  • 国立アフリカ美術館
  • 国立航空宇宙博物館
  • 国立肖像画美術館
  • 国立アメリカ歴史博物館
  • 国立アメリカ・インディアン博物館
  • フリーアギャラリー
  • ハーシュホーン美術館と彫刻庭園
  • 国立郵便博物館
  • レンウィックギャラリー
  • リプリー・センター
  • 国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館

スミソニアン群の博物館や美術館はすべて無料で大人から小さい子供まで楽しめるスペースとイベントが満載です。独立記念日を祝って開催される「キャピトル・フォース」というイベントはモールエリアの広場で開催されるので、独立記念日である7月4日前後はキャッスル界隈が特ににぎやかです。

アメリカ政府の象徴で立法機関でもある「国会議事堂」 

ウィリアム・ソーントンによって設計された国会議事堂
ウィリアム・ソーントンによって設計された国会議事堂

モールの東、キャピトルヒルに建つ国会議事堂はワシントンDCの中心部にあり、ワシントンDCの住所の東西南北はこの議事堂を基準に定められています。議事堂敷地内には、ほかに上院と下院のオフィスビル、植物庭園と最高裁判所があります。

キャピトルヒルに隣接する植物庭園では約6万5000株の植物が管理されている
キャピトルヒルに隣接する植物庭園では約6万5000株の植物が管理されている

国の立法機関である国会議事堂は、1826 年に完成しました。2022年現在、新古典主義建築のドームを中心に外観の修復工事が続いていますが、ツアーを予約すればビジター センターに入ることができます。ビジター センターでは国会の歴史や名演説、話題となった議会について知ることができ、すべてのツアー、プログラム、アクティビティは無料です。予約が必要ですが、プロのツアーガイドによってクリプト(議事堂1階の円形の区域)、歴史的な絵画が飾られているロタンダ(円形大広間)、歴史上の著名な人物の栄誉を称えるために全米50州から寄贈された彫像のコレクションの展示場である国立彫像ホールが案内してもらえます。また、ギフトショップをのぞいたり、カフェで食事をしたりすることもできます。

ちなみに、議事堂の西側の芝生エリアでは、毎年12月の最初の水曜日にクリスマスツリーの点灯式が行われるので、アメリカのクリスマスの雰囲気が楽しめます。冬に訪問する場合は、点灯式の日程と合わせてみてはいかがでしょうか。

国会議事堂のクリスマスツリーの点灯式をお見逃しなく!
国会議事堂のクリスマスツリーの点灯式をお見逃しなく!

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は、初めてアメリカを訪れる旅行者の方におすすめのワシントンDCの中心部のモールにある観光名所5ヵ所を紹介してみました。リンカーン記念館、ジェファソン記念館、ワシントン記念塔、スミソニアンのキャッスル、議会議事堂の周辺にはほかにも見どころスポットがたくさんあります。もし1日以上時間がとれたら丸2日かけてスミソニアン博物館群をまわってみたり、観光バスやレンタル自転車でDCをまわるルートを探してみたりしてもよいですね。春のお花見、7月の独立記念日のお祭り、巨大なイルミネーションがきらめくクリスマスツリーの時期など、ワシントンDCでは四季折々の風景を楽しめます。ぜひ、ワシントンDCのモールを訪れてみてくださいね。

監修:地球の歩き方

筆者

アメリカ・ワシントンDC特派員

舞林鳥 恵

【地球の歩き方】では、2013年から、ワシントンDC周辺はじめアメリカ各地の観光名所や魅力的な穴場スポットの情報をお届けしています。

【記載内容について】

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