【スコットランド】スコッチウイスキー
スコッチウイスキーは現在世界中で愛されているウイスキーで、日本では世界5大ウイスキーの一つに入ります。
スコッチウイスキーとはイギリスの最北端であるスコットランドで製造されるウイスキーで、原料であるモルト(二条大麦を水に浸して発芽させた大麦麦芽)を蒸留発酵し、樽で三年以上熟成させて造られたものをいいます。
中にはとうもろこしなどの穀類と混ぜたり、他の樽で熟成させたウイスキーと混ぜた「ブレンド」ウイスキーもありますが、
スコッチウイスキーとしてやはり最も有名なのは、一種類のモルトと水のみを使った「シングルモルトウイスキー」。シンプルな材料のみで造られるウイスキーには、産地や熟成方法によってそれぞれ違った特徴が現れます。
世界中のスコッチウイスキーファンたちの中は、そのバラエティーに富んだシングルモルトの利きウイスキーのために、スコットランド中を旅して回る人たちもいるほどです。
実は筆者もスコッチウイスキーの大ファンで、自宅にはスコッチウイスキーマップを飾り、試したウイスキーをマークし、評価を書きんだりするほどです。
今回は個別の銘柄ではなく、スコッチウイスキー全体の歴史や産地の特徴について紹介していきたいと思います。
スコッチウイスキーの歴史
ウイスキーの起源説としては、1169年のアイルランド説と1494年のスコットランド説があります。イングランドがアイルランドに出兵した際に、すでにウイスキーが飲まれていたと言われていますが、これには明確な記録が残っていません。一方、1494年のスコットランド説には、スコットランド王室においてウイスキーが製造されたという、ウイスキー製造最古の記録が見つかっていて、その証拠により現在のところスコットランドがウイスキー発祥の地といわれています。
最初は王室を中心とした上流階級でたしなまれる酒でしたが、徐々に薬酒として一般にも広がり始め、15世紀にはスコットランドで栽培される大麦を使ってウイスキーが大量に製造されるようになりました。
1707年にスコットランドはイングランドに併合され、この併合によってウイスキー製造に大きな課税が課せられることになりました。これを嫌うウイスキーの製造業者は山奥に逃れ、密造を始めました。
この密造が現在のスコッチウイスキーの産地による特徴の始まりです。例えば原材料の大麦麦芽を乾燥させるためにピートと呼ばれる泥炭を使用したことでスモーキーな香りがついたり、密造しているウイスキーをシェリー酒を貯蔵していた樽に入れて保管したことで、甘い香りがウイスキーに移ったりしたのです。
1823年に酒税法の改正によってこの密造時代は終わることになるのですが、この密造時代に現在のスコッチウイスキーの原型ができた、というのは大変興味深いです。
1824年には麦芽税を逃れるために、グレーンウイスキーという、とうもろこしなどの穀物を使ったウイスキーが製造されるようになります。個性の強いモルト(大麦)ウイスキーとクセが少なく飲みやすいグレーン(穀物)ウイスキーを混ぜてつくった「ブレンデッドウイスキー」は、現在においてもシングルモルトと共にスコッチウイスキーの主流となっています。
このブレンデッドウイスキーにより短期間でのウイスキーの大量生産が可能になり、スコッチウイスキーが世界に知られることになりました。
1853年、世界的に有名なスコッチウイスキー会社であるグレンフィディックがシングルモルトウイスキーの販売を始めました。当時世界のウイスキー市場の主流は、飲みやすくて大量生産が可能なブレンデッドウイスキーだったため、多くの人はこの個性の強いシングルモルトウイスキーが売れるとは思わなかったそうです。それが意外なまでの大ヒット商品になりました。
シングルモルトは蒸留所ごとの個性が強く出るウイスキーで、個性的な味や風味が多くの人々の心を掴みました。
このブームは一過性のものではなく、愛好家を中心に高値で取引されることも増え、現在も年々その市場を広げています。
生産地域による特徴
スコッチウイスキーは6つの産地(ハイランド、スペイサイド、キャンベルタウン、ローランド、アイランズ、アイラ)に分けられます。
ハイランド(Highland)は、スコットランドの最も北に位置する広い地域を指します。スコッチウイスキーの蒸留所の1/3程度がこの地域にあります。高い山脈、大きな川、海、寒い気候と自然環境に恵まれた美しい土地です。
ハイランドは広大な地域のため、「ハイランド」としてのウイスキーの明確な特徴はなく、蒸留所によってそれぞれ味の特徴が出るのも興味深いところです。
スペイサイド(Speyside)は、スコットランドの北東部にあるスペイ川の周辺地域です。
フルーティーで華やかな香りや風味を持つこの地方のウイスキーは一般的に飲みやすく、ウイスキー初心者でも親しみやすい、バランスに優れたウイスキーであるのが特徴です。
キャンベルタウン(Campbeltown)はスコットランドの西側の小さな半島で、以前は蒸留所が30以上もあるウイスキー製造の主要な地域でした。しかしながら品質の良くないウイスキーを乱造したことで評判が落ち、現在の蒸留所は3か所のみ。
この地のウイスキーは塩気と甘みが入り混じる独特な味わいが特徴的で、その強い個性のファンも少なくありません。
ローランド(Lowland)はエジンバラやグラズゴーなどの大都市がある、スコットランドの南側に位置する大きな地方です。この辺りではブレンデッドウイスキーに欠かせないグレーンウイスキーの大半がつくられています。
また、ローランドモルトはスコッチウイスキーでは珍しい3回蒸留(通常は2回蒸留)を取り入れるなど、酒質が軽く、穀物のフレーバーが強いのが特徴です。
アイランズ(Islands)はスカイ島やオークニー諸島というスコットランドの島々(アイラ島を除く)のことを指します。島はあちこちにあるので地域的なウイスキーの特徴はなく、蒸留所によってその特徴は違ってきます。
ちなみに筆者はオークニー諸島のハイランドパークが好きで、このウイスキーがスコッチウイスキーを知るきっかけとなりました。海辺を感じる塩気とマイルドさ、そして特徴的な形のボトルもとても気に入っています。
アイラ島(Islay)はスコットランドの西側にある島で、大きさは日本の淡路島を一回り大きくしたくらい。蒸留所の数は8つと少ないながらも、このアイラは「スコッチウイスキーの聖地」と言われています。
その理由は他に類を見ないとても個性的な風味で、好き嫌いは分かれますが、熱狂的なファンが多いことです。
アイラのウイスキーはピートという泥炭を多く使用しており、それによりスモーキーで独特の香りや風味が強く出ます。代表的な銘柄としてはラフロイグがありますが、筆者は最初にこれを口にした時、口に含んだだけで強烈な煙臭さが鼻に抜け、うっと唸り、飲み込んだ後には何とも言い難い塩気が残り、これがウイスキーか?と驚きました。
しかしながらなぜだかまた飲みたくなってしまい、唸りながらも何度も口にしていました。
まとめ
今回はスコッチウイスキーについて紹介しました。
現在世界で愛されているスコッチウイスキーが、時代による密造により確立されたというのは、とても興味深いですね。そして一括りにスコッチウイスキーと言ってもその生産地域や蒸留所によって特徴があるのも奥が深いです。
また、種類や熟成期間によって異なる琥珀色や、ボトルや箱のデザインも美しく、いろんなスコッチウイスキーを試してみたくなります。
また次の機会には、スコッチウイスキーの銘柄や蒸留所も紹介していきたいと思っています。
最後にスコッチウイスキーには、法律で定められた規定があり、それに達していないものしかスコッチウイスキーと呼んではいけないことになっているそうです。それによって品質とスコッチウイスキーというブランドを守っているんですね。
【スコッチウイスキーの定義】
・水、イースト、麦芽またはその他の穀物のみを原料とすること
・スコットランドの蒸留所で糖化、発酵、蒸留を行うこと
・アルコール度数が94.8%以下で蒸留すること
・容量700l以下のオーク製の樽で熟成させること
・スコットランド国内の保税倉庫で3年以上熟成させること
・アルコール度数40%以上でボトリング。水とスピリッツカラメル以外の添加は禁止
筆者
イギリス特派員
ベイトマン明子
2023年に引っ越してきたばかりのスコットランドのあちこちを訪れ、皆様に報告できることを楽しみにしています。
【記載内容について】
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