ニューヨークNo.1の日本人酒蔵「カトサケワークス」!『地球の歩き方』がつないだ縁

公開日 : 2024年06月14日
最終更新 :

現在、ニューヨークで最も注目を集めているお酒といえば、Sake(サケ)といえるかもしれません。今回ご紹介する「カトサケワークス」は、Sakeブームのニューヨークにおいて、初の日本人個人による醸造所。人づてに取材依頼をいただき、事前調査してみるとニューヨーカーに高い評価を得ていることがわかりました。『地球の歩き方』で人生が変わったというオーナーが営む、ブルックリン・ブッシュウィックにある酒蔵を取材してきました!

アメリカや海外での日本酒の立ち位置は?

和食が鮨や天ぷらのみならず広く浸透した今、和食のベストパートナーとして日本酒のニーズは高まる一方。

ニューヨークにも大手酒造メーカーが進出しており、新潟県の八海醸造は「ブルックリン・クラ(Brooklyn Kura)」(ニューヨーク市ブルックリン)と業務資本提携を結び、2023年9月には山口県の旭酒造がニューヨーク州ハイドパークに酒蔵を開設し、山田錦米使用の「獺祭ブルー(Dassai Blue)」を生産開始しています。

日本日本酒焼酎メーカー協会によると、2022年時点でアメリカは日本酒の総輸出量1位にランクインしているとのこと。想像以上にアメリカで日本酒が親しまれていることがわかります。海外において日本酒の輸出金額は13年連続で過去最高額を更新し続ける人気ぶりで、アメリカのほかに中国、韓国、台湾、香港、カナダ、シンガポールが輸出量の上位を占めているのです。

日本酒ブームのなか、初の日本人による醸造所をオープン

ブルックリンのブッシュウィックに醸造所を構える「カトサケワークス」
(C)Hideyuki Tatebayashi ブルックリンのブッシュウィックに醸造所を構える「カトサケワークス」

Sake(日本酒)はアメリカ人にもすでに浸透しており、ニューヨーク市内の和食レストランの日本酒セレクションは日本に負けず充実しています。世界的に「和食は美味しい」の評価を得ている今、和食の味をさらに高める日本酒の需要が高まっています。日本から有名ブランドの日本酒は輸入されていますが、長距離輸送の途中で味が落ちるのか、筆者には日本で飲む味とは同じには感じないのです。価格と質が釣り合わないので、日本酒については諦めていたところ、ニューヨークに醸造所が登場し始めました。

まず2018年に金融系エキスパートと生化学者のアメリカ人ふたりが始めた「クラ(Kura)」がブルックリン・インダストリーシティに誕生。次いでコロナ禍の2020年に、今回ご紹介する日本人の加藤忍(かとうしのぶ)氏が「カトサケワークス(Kato Sake Works)」をブルックリンのブッシュウィックに誕生させています。

日本発祥の酒ですから、やはり日本人経営の醸造所は信頼度が高く、嬉しいですよね。なお、日本酒という呼称は、原料の米に日本産米を用い、日本国内で醸造したものに対して使われています。そのため、ニューヨーク産の清酒についてはSake(サケ)と表記しています。

「清酒」と「日本酒」について

令和2年6月国税庁
日本酒造組合中央会

「清酒」(Sake)とは、海外産も含め、米、米こうじ及び水を主な原料として発酵させてこしたものを広く言います。「清酒」のうち、 「日本酒」(Nihonshu / Japanese Sake)とは、原料の米に日本産米を用い、日本国内で醸造したもののみを言い、こうした「日本酒」という呼称は地理的表示(GI)として保護されています。

国税庁

東京・高円寺に雰囲気が近いブルックリン・ブッシュウィック

ビルにはグラフィティが描かれ、スケボーに乗った通行人が通り過ぎる
(C)Hideyuki Tatebayashi ビルにはグラフィティが描かれ、スケボーに乗った通行人が通り過ぎる

東京都高円寺出身の加藤氏は、ブルックリンのブッシュウィックの雰囲気に似たものを感じ、店を開くならここと決めたそうです。ブルックリンは20〜30代のニューヨーカーに人気で、現在はマンハッタンより人の流れが多く感じます。ビルの壁には目をひくカラフルなグラフィティ、クラブやレストラン、ビンテージショップがあり、荒削りな勢いがあるのは高円寺に似ているかもしれません。

ちなみに高円寺は中央線沿いにありますが、筆者も日本では中央線エリアの住民で、子供の頃からニューヨークに移るまで、三鷹、吉祥寺、西荻、中野に住んでいました。そのため、ブッシュウィックが高円寺に似ているというのもなんとなくわかりました。

Googleレビューはなんと5点満点!

最寄駅から2駅以内のご近所さんが多いという利用客
(C)Hideyuki Tatebayashi 最寄駅から2駅以内のご近所さんが多いという利用客

筆者は取材する店の情報は、公式サイトのほか、Googleレビューを目安にしています。利用者の口コミで店が評価されており、カトサケワークスは5つ星の満点でした。筆者は、読者の皆さんに評価4.5以上の店や観光スポットを紹介することを心がけているものの、ニューヨーク市ではそのような高評価のスポットは実はそう多くはありません。そのため満点を見るのは初めてでした。

カトサケワークスの口コミを読んでみると、「今まで飲んだ中で、最高のSake(サケ)」「Sake(サケ)は苦手だったけど、ここのお酒で好きになった」「店の雰囲気がいい」「知識が豊富で、フレンドリーなスタッフ」「手頃な価格」「ドッグフレンドリー(愛犬家歓迎)」と利用客の印象はほぼ同じで安定しています。味・接客・雰囲気いずれも欠けることなく、満点評価とは驚異的ですね。

程よい広さの店内は、バーテンダーから話を聞ける「バーカウンター席」と通りを眺められる「テーブル席」があり、ゆったりした広さでリラックスでき、カフェのような気軽さです。

テイスティング・フライト 3種類(左から、純米、にごり、生)で20ドル(税込)
(C)Hideyuki Tatebayashi テイスティング・フライト 3種類(左から、純米、にごり、生)で20ドル(税込)

好みのお酒を見つけるためには、3種類を味比べできる「テイスティング・フライト」がいいかもしれません。

白ワインを思わせるスッキリした「純米」、酒粕である澱(おり)を残した弾けるような「にごり」、肉にも合う野性味を感じる「生」がセットになっています。日本から輸入された日本酒が気が抜けているように感じるのに比べ、ブルックリンの酒蔵でできたてのSakeは、口の中で飛び跳ねるような元気のよさを感じます。筆者は屋台でビーフのタコス(メキシコの軽食)を調達して持参したのですが、こちらのSakeと相性がいいことにびっくりしました。Sakeは食の垣根を超えたのです。

ほかには、甘みを感じる「みりん」やゆずジュースを加えた「ゆず」は女性に好まれそうですし、期間限定のお酒もあるので、好みや気分で選択できます。気に入ったら、ボトルで買うこともできますよ。

会社員だった加藤氏が、Sake(サケ)を造り始めるまで

醸造所オーナーの加藤忍(かとうしのぶ)氏
(C)Hideyuki Tatebayashi 醸造所オーナーの加藤忍(かとうしのぶ)氏

オーナーの加藤忍(かとうしのぶ)氏は、蔵元の家系の出自でもなく、日本で杜氏をしていたわけでもない、日本企業の会社員でした。ビジネスを学ぶために渡米し、その後アメリカで就職。友人を招いて料理でもてなす時、合わせるお酒がビールやワインでなく、おいしい日本酒だったら……と思っていたそうです。当時生活していたアメリカ・テネシー州では輸入品である日本酒は高価で、販売店も限られていました。加藤氏はおいしい日本酒が気軽に飲めないことに、ストレスを感じていたそうです。

そんなとき、アメリカで趣味として自宅でビールやワインを作る人がおり、自分も自宅で酒を造ることはできないかと思い付きました。インターネットで製造工程をリサーチ、自宅のキッチンを醸造所にして造ったSake(サケ)は、友人たちに大好評! 売って欲しいと請われるレベルのSake(サケ)ができた経験を活かし、ビジネスとしての道へ歩み始めました。本格的に醸造所を始めるため、2016年テネシー州から、憧れのニューヨーク市ブルックリンへ移住したのです。

2020年4月コロナ禍の真っただ中、ブルックリンのブッシュウィックでカトサケワークスがスタート。その後1駅隣のタップルームスペースのある、より広い現在の店舗へと移動しました。

店内奥にはピカピカに磨かれた設備の醸造所が見え、できたてのSake(サケ)を味わっているのだとテンションが上がります。見学ツアー(要予約、有料)もあるので、酒造りに興味のある方はぜひ参加してみてくださいね。

  • ピカピカに磨かれた設備

    ピカピカに磨かれた設備

  • 清潔感がある醸造所

    清潔感がある醸造所

  • Sake(サケ)の原料 カリフォルニア産の米「カルローズ」。ひとつのタンクに600kgを使用する

    Sake(サケ)の原料 カリフォルニア産の米「カルローズ」。ひとつのタンクに600kgを使用する

  • 仕込みタンクの中を見せていただく。酒がふつふつと呼吸していた。発酵期間は3〜4週間ほど

    仕込みタンクの中を見せていただく。酒がふつふつと呼吸していた。発酵期間は3〜4週間ほど

  • 温度管理された部屋で麹を育てる

    温度管理された部屋で麹を育てる

  • 瓶詰め作業も醸造所内で行う

    瓶詰め作業も醸造所内で行う

  • 米からSakeになるまで2ヵ月間かかる。出荷を待つSake

    米からSakeになるまで2ヵ月間かかる。出荷を待つSake

ニューヨークでは、日本人による初のSake(サケ)醸造所。応援したい
(C)Hideyuki Tatebayashi ニューヨークでは、日本人による初のSake(サケ)醸造所。応援したい

ご近所に愛される店の雰囲気

Sake(サケ)の魅力を、利用客へ丁寧に説明するスタッフ
(C)Hideyuki Tatebayashi Sake(サケ)の魅力を、利用客へ丁寧に説明するスタッフ

カトサケワークスのおもな客層は、2駅以内のご近所さんが多いと聞きます。散歩ついでにふらりと立ち寄れる気安さがいいのでしょう。愛犬散歩の折にも寄り道できる、ドッグフレンドリーの店でもあります。

定番メニューのほか、店でしか飲めない限定メニューも見逃せない
(C)Hideyuki Tatebayashi 定番メニューのほか、店でしか飲めない限定メニューも見逃せない

単にSake(サケ)を楽しむだけでなく、ライブミュージックやフードのポップアップイベントも開催されます。基本的にフードメニューはありませんが、不定期のポップアップイベントで、ラクサやたこ焼き、カレーパンなどを味わう機会があります。

また近所には日本風のパンやお弁当、寿司、お惣菜が買えるタカハチ・ベーカリー(Takahachi)やタコスの屋台などがあり、好きなフードの持ち込みが可能です(飲料の持ち込みは不可)。

お酒とともに、ライブミュージックが楽しめる日もある。スケジュールはインスタグラムでチェック
(C)Hideyuki Tatebayashi お酒とともに、ライブミュージックが楽しめる日もある。スケジュールはインスタグラムでチェック
  • イベント告知のポップ

    イベント告知のポップ

  • メニュー

    メニュー

  • 酒粕も販売予定

    酒粕も販売予定

『地球の歩き方』が僕をニューヨークへ導いた

『地球の歩き方』にはお世話になりました
(C)Hideyuki Tatebayashi 『地球の歩き方』にはお世話になりました

今回の取材でオーナーの加藤氏にお目にかかったとき、「『地球の歩き方』にはお世話になりました」と感謝の意を伝えてくれました。『地球の歩き方』のライターだと挨拶すると、多くの日本人から同じ言葉をいただきます。筆者も同様に、旅行者時代にはニューヨークの行きたい場所や店のページにポストイットを貼り、マーカーを引き、ここも行きたい、あそこも行かなきゃとワクワクしました。記事を書かせていただいていることで、いまだにお世話になっています。

加藤氏が海外へ出るきっかけは、『地球の歩き方』というという信頼のおけるガイドブックがあったからで、日本からニューヨークへの道標になったのですね。読者の皆さんには「ぜひ海外へ出てください、楽しいことがいっぱいありますよ」というメッセージをいただきました。

カトサケワークス

自分の好みの酒が探せる、テイスティングフライト。量はたっぷりなので、結構酔いますよ〜
(C)Hideyuki Tatebayashi 自分の好みの酒が探せる、テイスティングフライト。量はたっぷりなので、結構酔いますよ〜
英語名
Kato Sake Works
住所
379 Troutman St, Brooklyn, NY 11237
エリア
ニューヨーク市ブルックリン区ブッシュウィック
店内飲食スペース
あり。テーブル席およびカウンター席
店内飲食提供
なし。持ち込みOK。食のポップアップ・ショップやイベントは、インスタグラムでチェック
https://www.instagram.com/katosakeworks/
営業時間
火〜金 16:00〜22:00 土日 12:00〜22:00 月休
おすすめ
テイスティング・フライト(3種類)20ドル(税込)

まとめ

店内では、Tシャツや前掛けのオリジナルグッズも販売
(C)Hideyuki Tatebayashi 店内では、Tシャツや前掛けのオリジナルグッズも販売

筆者はニューヨークでカトサケワークスの酒蔵を見学し、Sake(サケ)への敷居がグッと低くなったのを感じました。カトサケワークスは、Sake(サケ)へのハードルを低くして、「気軽に」「おしゃれに」「おいしく」飲める環境をつくり出したのです。雰囲気のいいカフェに立ち寄る感覚で、Sake(サケ)に親しめることにより、これからますます人気が高まりそうですよ。

ニューヨークでSake(サケ)を味わうのは貴重な経験ですので、ぜひ足を運んでみてくださいね。ニューヨークでお待ちしています!

TEXT:ニューヨーク特派員 青山 沙羅
PHOTO:Hideyuki Tatebayashi
*Do not use images without permission.
監修:地球の歩き方

※掲載写真は、オーナーの許可を得て撮影しています。
※掲載情報は2024年5月時点の情報です。価格や商品構成などは変更になる場合がありますので、事前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
※2024年5月現在、1ドル:約157円です。

筆者

アメリカ・ニューヨーク特派員

青山 沙羅

はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。