2024年は印象派150年、オルセー美術館で圧巻の特別展「1874年パリ、印象派の創造」開催中

公開日 : 2024年06月21日
最終更新 :

2024年は、現在「印象派」と呼ばれている画家たちが、1874年にパリのナダールのアトリエで「第1回印象派展(正式名称:画家、彫刻家、版画家などによる共同出資会社の第1回展)」を開いてから150周年を迎える記念年です。そのためフランス各地の印象派にゆかりのある場所では、さまざまな催し物が開かれています。特にパリのオルセー美術館にて2024年3月26日〜7月14日の期間で開かれている特別展「1874年パリ、印象派の創造」は圧巻の内容です。

特別展で印象派の夜明けを総ざらい

19世紀美術を専門とするオルセー美術館は、印象派作品を常設展で豊富に収蔵しており、印象派をテーマにした旅行では必ず訪れたい場所の一つです。「1874年パリ、印象派の創造」展は、そのオルセー美術館がオランジュリー美術館、そしてアメリカのワシントン・ナショナル・ギャラリー・オブ・アートと共同開催する印象派150年を節目に開いた渾身の特別展です。

印象派150年については、2023年12月に日本でも記者発表がありました。地球の歩き方のウェブでもその様子をレポートしています。

今回の「1874年パリ、印象派の創造」展ではモネ、ルノワール、ドガ、モリゾ、ピサロ、シスレー、セザンヌら約130点の印象派作品を展示。ナダールのアトリエで行われた第1回印象派展に出展され、美術界の新しい幕開けとなった初期印象派の作品が、一堂に会しました。

「印象派」というと、今では美術史におけるクラシックな1ページという印象ですが、当時は違いました。

1870年に始まったフランスとプロイセンの普仏戦争。フランスの勝利が大きく予想されたなか、結果はフランス第二帝政のナポレオン3世が捕虜となり、フランスは負けてしまいます。敗戦後のパリでは、労働者階級を主とする民衆によって世界初の社会主義政権であるパリコミューンが樹立。プロイセン軍の支援を受けたフランス政府軍により72日間でパリコミューンは崩壊しますが、そのような時代において、芸術を再考し新しい方向性の模索が行われました。

ドゥタイユ『モルスブロンにおける第9騎兵連隊の突撃』
ドゥタイユ『モルスブロンにおける第9騎兵連隊の突撃』

淡い色使いと軽いタッチで、生活のワンシーンや野外の風景を題材とする、今までの描き方からは一線を画す画家たちも現れました。印象派の萌芽です。当時の評価基準から外れていた彼らは、官展(ル・サロン)に対抗して共同出資をする形で、パリ市内ナダールのスタジオで展覧会を開き、自らの作品をアピールして買い手を見つけようとしました。そこから印象派の歩みが始まります。

ナダールのアトリエ
ナダールのアトリエ

今回の特別展では、1874年の第1回から、第3回までに開かれた展覧会において出された作品を、順に並べています。今回のオルセー美術館の展示の特徴としては、第1回の印象派展と同じ年の官展の違いを感じられるように、官展に出品された作品も見ることができます。そのため当時の人々が感じたであろう違いを、その場で比較できます。

2つの作品群を比べてみると差異は明らかです。官展の作品群はアカデミックで力強いタッチ。キリスト教や神話を題材に、当時良しとされていた描き方に沿った作品です。

一方で印象派は、気持ちを絵に入れ込み、当時の描き方のセオリーから外れた、見た目にもぼんやりとしたスケッチのような作品。当時も「彼らが求めているものは印象である」と前向きには評価されなかったそうですが、その揶揄された「印象」という言葉を画家たち当人は気に入り、自ら名乗って印象派という言葉が広がっていきました。

ピサロ『白い霜』
ピサロ『白い霜』

たとえば、今回の特別展のキービジュアルになっているモネ『日の出』は第1回に出品された作品。ノルマンディー方面へ向かうパリ側の始発駅サン・ラザール駅を描いた、モネの『サン・ラザール駅』は第2回、ルノワールの『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』は第3回の出品作です。

モネ『サン・ラザール駅』
モネ『サン・ラザール駅』

VRで印象派が集った当時にタイムスリップ

Place de l'Opéra_ Concept Art (c) Excurio – GEDEON Experiences – musée d’Orsay
Place de l'Opéra_ Concept Art (c) Excurio – GEDEON Experiences – musée d’Orsay

今回のオルセー美術館では、「1874年パリ、印象派の創造」とあわせて楽しめる、見逃せない催しが、もう一つ開かれています。VRゴーグルをつけて、第1回印象派展が開かれた1874年にタイムスリップする、イマーシブの没入型イベント「印象派の画家と過ごす一夜、パリ、1874年」です(要予約)。

内容は、ナダールのアトリエで開かれた第1回展覧会のヴェルニサージュ(オープニング)に参加。順に案内してもらいながら、そこに居合わせるモネ、ピサロ、ルノワール、デュガなどと交流して、当時の様子を疑似体験できます。1874年4月15日の午後8時、夕暮れのパリ市内カプシーヌ通り。今も面影が残る街並みを窓の外に眺めながら、これからフランスの画壇を席巻していく印象派画家たちが、理想に燃えて登場します。

Exposition - concept art (c) Excurio - GEDEON Experiences - musée d'Orsay
Exposition - concept art (c) Excurio - GEDEON Experiences - musée d'Orsay

私も実際にこのイベントに参加してみたのですが、とにかく楽しいです。「1874年パリ、印象派の創造」を観覧した後であれば尚更で、特別展の魅力がさらに増します。いずれのシーンも美しいのですが、特にル・アーヴルで『日の出』を描いているモネに出会えるシーンがあり、建物のテラスから出るとその向こうに美しいノルマンディーの夕暮れが広がる様子は、とても感動的でした。

絵画を鑑賞する特別展とあわせて、印象派150年の歴史を心ゆくまで堪能できる催しです。

Gare Saint-Lazare - concept art (c) Excurio - GEDEON Experiences - musée d'Orsay
Gare Saint-Lazare - concept art (c) Excurio - GEDEON Experiences - musée d'Orsay
名称
オルセー美術館(Musée d'Orsay)
住所
Esplanade Valéry Giscard d'Estaing 75007
期間
「1874年パリ、印象派の創造」2024年3月26日〜同7月14日
「印象派の画家と過ごす一夜、パリ、1874年」2024年3月26日〜同8月11日(要予約)

筆者

フランス特派員

守隨 亨延

パリ在住ジャーナリスト(フランス外務省発行記者証所持)。渡航経験は欧州を中心に約60カ国800都市です。

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