アメリカでよく使われる道の名前は?【道路に関する旅雑学】

公開日 : 2024年08月18日
最終更新 :

アメリカで長く暮らして気づいたことのひとつに、「都市部や住宅地問わずどこでも交差点には道の名前の看板がある」ということがあります。道の標識や名称の由来を紐解くと日米の“道”の認識の違いがみえてきて面白いです。

1.ナビは道の名前で覚えるのが基本

みなさんは、自分が住んでいる家の前の道路の名称を正確に答えられますか? 日本の住宅地の中の道(市道XX号と正式な名称はついていることが多いですが)には道路名を記した看板があまり見当たらず、道案内するときも「この先まっすぐ行って3つ目の脇道を左折」などということがあるかと思います。

アメリカの場合、ほとんどの公道(私有地へのドライブウェイを除く車道一般)にはその道の入り口や交差点に必ず道路標識の看板が立っています。そのお陰で「XX通りを1マイル北に進んでからYY通りへ右折」という風に、道の名前を的確に道案内で伝えることができますし、自分で運転していても道路標識を確認しながら走れる利点があります。
カーナビが発達して道の名前をあらかじめ覚えなくても不便は少なくなりましたが、それでも道のひとつ一ひとつに道名の標識が立っていると道迷いも少なく安心です。

アメリカの一般的な道標識
アメリカの一般的な道標識

2.「道」の英語表記は実に多彩

アメリカの「道」にあたる表現について、実は英語表記はその道路の規模や形態によって実に多彩な表現があります。

例えば、物流の大動脈である州間道路にあたる「インターステイト Interstate」や高速道路に多い「ルート Route」や「ターンパイク Turnpike」、都市部の大通りに当たる「ブールバード Boulevard」「アベニュー Avenue」などはよく知られていますが、これが町中や住宅地などに入っていくと、「ストリート Street」「ロード Road」に始まり、狭い道や小さなエリアに入っていくと「ウェイ Way」「サークル Circle」「コート Court」「アリー Alley」「レーン Lane」など、道の規模や形態を細かく定義したさまざまな「道」を示す英語表記に出合います。

赤い道路標識は、鉄道博物館の目の前の道であることから掲げられた(ボルチモア市内の鉄道博物館前)
赤い道路標識は、鉄道博物館の目の前の道であることから掲げられた(ボルチモア市内の鉄道博物館前)

3. 歴史上の人物にちなんだ名前の道

アメリカの道の名前で、特徴を挙げるとしたら、「歴史上の人物や近現代の有名人の名前を冠した道名が多い」ことです。初代大統領のワシントン Washington、3代大統領のジェファーソン Jefferson、公民権運動の指導者のマーチン・ルーサー・キングJr.牧師 Martin Luther King Jr.の名前などが付いた道路などはその人物の出身地を問わずつけられていることが多いです。とりわけ、政治の首都ワシントンDCでは独立戦争など建国初期に活躍した将軍や政治家の名前が付けられた道も数多くあります。

一方で、バージニア州アーリントンには「リー・ハイウェイ Lee Highway」という、バージニア州出身で南北戦争時に南軍の総司令官として活躍したロバート・E・リー将軍(General Robert E Lee)に由来した主要道路(US29号線)がありますが、近年のアメリカ国内の歴史評価の変化もあり(=南北戦争時代の英雄扱いだった人物が時代背景に奴隷制度との関係があることから、各地で銅像の撤去を求める運動と反対派との衝突が社会問題となっている)、2022年に「ラングストン・ブールバード Langston Boulevard」と名称変更されたという例もあります。(新しい道名はバージニア州出身の初の黒人下院議員、John M. Langstonに由来する)

人物名ではありませんが、ワシントンDCのホワイトハウスから真北に位置する16th Streetの一部は、2020年に「ブラック・ライブズ・マター」の大きなデモ会場となったことからワシントンDC市当局により正式に「ブラック・ライブズ・マター・プラザ」と命名されました。このようにアメリカの道の名前は時代とともに変化しています。

  • 「ブラック・ライブズ・マター・プラザ」の道看板

    「ブラック・ライブズ・マター・プラザ」の道看板

  • 路面に巨大な文字が書かれており、上空から見るとBLACK LIVES MATTERと読み取れる

    路面に巨大な文字が書かれており、上空から見るとBLACK LIVES MATTERと読み取れる

4. 地元で活躍した人を顕彰するために道の名前をプレゼント

人名の道路にはまたこんなこともあります。メリーランド州ベルエアでは、同地出身のフィギュア・スケーターのキミー・マイズナー選手Kimmie Meissnerが2006年に世界選手権に優勝した際の凱旋パレードで、街の中心地に位置するペンシルバニア通りPennsylvania Avenueの一部をキミー通りKimmie Wayと命名されました。その標識は2024年現在も健在です。

5. 全米で最も使われている道の名前は?

アメリカ自動車協会(AAA)の2022年の記事によりますと、全米で最もよく使われている道の名前(命名ナンバーワン)は、「二番(通り)」Secondだそうです。人名や州の名前などが上位を占めると予想でしていましたが、意外にも実際に使われる道名は数字が多いのですね。ちなみに、「一番(通り)」Firstがトップでないのは、同意義にあたる、「メイン(通り)」Mainと命名されるケースが意外と多いのではないでしょうか。
数字でない道名のトップは「パーク」Park、人名のトップは「ワシントン」Washingtonとの結果ですので、全米各州できっと目にする機会があることでしょう。

※(通り)に該当する英語表記はStreet, Road, Avenueなど多彩であるため、AAAの記事でも道の種別の統計にはなっておりません。

「メイン通り」と冠した道名は全米で7番目に多い
「メイン通り」と冠した道名は全米で7番目に多い

筆者

アメリカ・メリーランド州特派員

ベスト加島 聡子

神奈川県出身で、在米20数年になります。現在メリーランド州北東部の町で、家庭菜園とクラフトアートを楽しんでおります。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。