ポンペイ遺跡を歩く。2000年前の町並みと現代が共存する旅
2000年以上も前に栄え、べスヴィオ火山の噴火によって火山灰の下に埋もれてしまったポンペイの町。スポーツジムや共同浴場、居酒屋そして売春宿……。日常生活の基本的な部分は、現代とほとんど変わらない。馬車のわだちが残る石畳の道を歩きながら誰の家を訪問しようかと考えれば、遠い国からやって来た自分もまるでこの町の住民であったような錯覚に陥る。
そんなポンペイの遺跡は時間をかけてゆっくりと巡ろう。一都市を徒歩で回るのだからそれなりに疲れるが、考古学的な遺跡の魅力を味わい2000年前の空気の中にゆったりと溶け込みたい。
ポンペイ豆知識(災害直前のデータをもとに)
人口 | 約1万5000人(自由民60%、奴隷40%) |
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道 | 歩道の高さ30㎝。大きな溶岩のブロックで道路は舗装されていた。 |
水 | サルノ川から引かれていた。人口増加に伴い道路の下に水道管が引かれた。裕福な者には個人宅、庶民のためには町の噴水、公共浴場へ水道がつながる。 |
フォロ | 神殿、公共広場、裁判所など町の主要機関が集まっていた。本来は町の中心地にあったが、町が東側に拡張していったため西の端にある。 |
アトリウム | 家の中心にある雨水槽で、採光のために開けられた天井から落ちてくる雨水を貯めていた。中央には家内安全を見守る祭壇などが置かれていた。 |
彫刻 | 装飾用、宗教・埋葬用、選挙宣伝用などの実用的な小さなものが多い。帝政期以降は、皇帝やその家族の像が造られるようになった。 |
遺跡の東端の野外闘技場の向こうには、新市街の中心にあるマドンナ・デル・ロザリオ聖堂Santuario della Madonna del Rosarioの尖塔が見える。毎年5月と10月にべスヴィオ火山ふもとの村から巡礼者が、何時間もかけて徒歩でこの聖堂に集まる。主祭壇に祀られる宝石で飾られたマリア像“マドンナ・ディ・ポンペイ”は、ナポリ圏の人々に深く信仰されている。新市街を訪れると、過去と現在が共存するこの土地の運命的な生命力を感じる。
経済発展に伴ったポンペイの隆盛
べスヴィオ火山の過去の噴火によってできた溶岩の丘に最初に町を築いたのは、紀元前8世紀、カンパニア州の原住民であるオスク人だといわれている。後にサルノ川に近く、海までの距離が500m(現在は約2㎞)ほどで交通が便利であったことから、ギリシア人の植民地としてポンペイの町の商業活動は盛んになった。紀元前5世紀中頃は、出土品に書かれた文字などからエトルリア人が政権を握っていたことがわかる。その後山岳民族サムニテス人がこの町を支配するようになった頃、ポンペイはようやく城壁をもつ1都市の形を取るようになった。
ローマ帝国の支配を受けるようになったのは、彼らが紀元前343~290年のサムニテス戦争で勝利を収めてからだ。自由な商業活動が認められていたポンペイは、ワインやオリーブオイルの生産で経済的大発展を遂げ、紀元前2世紀には公共施設や私邸が次々と建設されていった。紀元前90年に始まったローマに対する市民権回復闘争(同盟市戦争)は、ローマのスッラ将軍によってローマの同盟市として市民権を与えられる形で沈着した。
紀元前80年まではローマの4人の行政官によって治められ、円形闘技場や劇場が設立された。
帝政期に入り町は平和な繁栄を続けていたが62年、噴火の前ぶれともいえる大地震が起こった。その復興作業も終わらないうち、歴史的大惨事べスヴィオ火山の噴火により79年8月24日、ポンペイの時は止まった。
観光の便利情報
ポンペイ詳細情報をゲット
ポンペイ遺跡の地図、ガイド(日本語あり)、遺跡内見どころの最新の開場情報などは公式HPから検索可能。
- 営業時間
- 4~10月 8:30~19:30、11~3月 8:30~17:00
ポンペイへの行き方
鉄道
- ナポリから①
- ポンペイ・スカーヴィ・ヴィッラ・ミステリPompei Scavi Villa Dei Misteri駅 ベスヴィオ周遊鉄道(ソレント行き)約40分(約30分に1便)€2.80
- ナポリから➁
- ピアッツァ・ガリバルディ駅)→ポンペイ 地下鉄Metropolitano(fs線)38分(約30分に1便) €2.80
- エルコラーノから
- ポンペイ べスヴィオ周遊鉄道(ソレント行き、一部トッレ・アンヌンツィアータTorre Annunziataで要乗り換え) 約20分(約30分に1便)
- サレルノから
- ポンペイ fs線 地下鉄Metropolitano 45分 €2.40
下車駅に注意
CV線でナポリからポンペイ・ヴィッラ・ミステリ駅やエルコラーノ駅へはソレントSorrento行きの利用が便利。
ただし、始発と終点が同じでも、経路が異なる場合がある。エルコラーノからポンペイ(またはその逆)へ向かう場合は、一部の直通列車を除き、トッレ・アンヌンツィアータでの乗り換えが必要。乗車前に自分の下車したい駅で停車するか確認しよう。ポンペイと告げただけで、ヴァッレ駅で下車したりすると、遺跡へはかなり遠回りになってしまう。
混雑を避けるには
周遊鉄道の夏季限定列車カンパニア・エクスプレで。ナポリからポンペイまで片道€6、往復€11。手前のエルコラーノでの途中下車もOKだ。
車
- ナポリから①
- (A3 サレルノ方面)→ポンペイ
- ナポリから➁
- (SS18)→ポンペイ
ポンペイ周辺の遺跡
ポンペイ周辺には古代遺跡が数多く残り、『ポンペイ、エルコラーノ、トッレ・アンヌンツィアータの考古学遺跡』として世界遺産にも登録されている。整備が進むトッレ・アンヌンツィアータのオプロンティスの遺跡のほか、ボスコレアーレ、スタビアの遺跡を紹介。いずれも、ポンペイの遺跡と同様にべスヴィオ火山の噴火により一瞬に灰に覆われ、後年発掘されたもの。周囲の自然をとり込んだ別荘や邸宅のたたずまいは、当時の優雅な生活様式をヴィヴィッドに伝えてくれる。
筆者
地球の歩き方ウェブ運営チーム
1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』のメディアサイト『地球の歩き方web』を運営しているチームです。世界約50の国と地域、160人以上の国内外の都市のスペシャリスト・特派員が発信する旅の最新情報をお届けします。
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