シチリアのエトナ山を望む第2の都市カターニアの歴史と観光ガイド
さまざまな人種が集まっているカターニアの町は、シチリアでパレルモに次ぐ二番目に人口が多く、経済活動が盛んだ。そしてヨーロッパ最大の活火山、エトナ山を擁し、度重なる噴火を繰り返してきた活火山とともに生活してきた町としても有名だ。
ドゥオーモ広場Piazza Duomoやアントニーノ・ディ・サン・ジュリアーノ通りVia Antonino di San Giulianoを横切るクロチフェーリ通りVia dei Crociferi はシチリア・バロック建築が都会的な雰囲気で交じりあい、情趣ある町並みになっている。またカターニア出身の作曲家ベッリーニの生い立ちを知ることができるベッリーニ博物館や、にぎやかなカルロ・アルベルト広場Piazza Carlo Albertoのメルカート(市場)には特産の柑橘類や野菜が豊富に並ぶ。
シチリアの経済都市 カターニアの今昔
『カタネ』と名づけられていたカターニアの町は、紀元前8世紀後半にギリシア植民地として建設された町のひとつであった。ポエニ戦争時代の紀元前263年にローマに征服され、長い間豊かな時代をはぐくんでいった。その後、ビザンチンの征服の後イスラム教徒に占領されオレンジ、レモンなどといった柑橘類の新しい農作技術が浸透し、農業や商業の発達が進んでいった。ノルマン人の征服以降、フリードリッヒ2世の時代には皇帝の力の象徴として町にウルシーノ城が造られた。
またカターニアにたびたび宮廷を定めていたアラゴン家の時代になると、シチリアにおける最初の大学がカターニアの町に創立された。1669年の火山噴火、1693年の大地震とふたつの大災害により幾度かの危機に立たされたが、19世紀から再建が本格的に始められ、工場、農作物、人口ともに増え、シチリアの経済都市として重要な町となっている。
カターニアへの行き方
シチリアの交通の要所 カターニア
空と海のシチリアの東の玄関、カターニア。プルマン(長距離バス)路線も充実しているので、シチリア島東部の旅はここから始めるのが便利。
空路
ミラノ、ローマをはじめイタリア、ヨーロッパ各地からアリタリアやライアンエアーなどが運航。空港から町へは約7㎞と近いのが魅力。ターミナルを出ると、シチリア各地へのプルマン乗り場があるのも便利だ。また、レンタカーの駐車場も近く、高速を下りてからのアクセスがわかりやすい。
海路
カターニアにはサレルノからGrimaldi Linesが毎日運航。サレルノ22:00発でカターニア着翌11:00。逆方向はカターニア発21:30、サレルノ着翌10:30(料金/€27~72)。ナポリ・カターニア間はTTT Linesが運航。
陸路
鉄道で行くには
出発地 | 鉄道名 | 所要時間 |
---|---|---|
ローマ | fs線 IC | 10時間~11時間 ICN(夜行)約11時間 |
ナポリ | fs線 IC | 7時間35分~7時間52分 ICN(夜行)8時間21分 |
メッシーナ | fs線 IC.RV.R | 1時間25分~2時間4分(30分~1時間に1便) |
パレルモ | fs線 IC.R | 3時間~3時間14分(1~4時間に1便) |
シラク―サ | fs線 IC.RV.R | 約1時間~1時間30分(1~2時間に1便) |
バスで行くには
出発地 | バス会社 | 所要時間 | 料金 |
---|---|---|---|
パレルモ | SAIS | 2時間40分(平日13便、土12便、日祝9便) | €13.50、往復€24 |
メッシーナ | SAIS | 1時間35分(平日31便、土21便、日祝18便) | €8.40、往復€13 |
シラク―サ | INTERBUS/ETNA | 約1時間25分(平日1時間に1便、日祝1~2時間に1便) | €6.20、往復€9.60 |
車で行くには
●パレルモ→(S113/A119)→カターニア
●アグリジェント→(S640/A19)→カターニア
●メッシーナ→(A18)→カターニア
●シラクーサ→カターニア
空港から市内へ
空港からALIBUS457番がドゥオーモ、カターニア中央駅、バスターミナル、コルソ・イタリア、コルソ・シクリなどを運行。
バスターミナルへはカターニア中央駅の次の停留所下車が便利。切符(€4)は車内やタバッキなどで販売。所要約20分、4:40~24:00に約20分間隔の運行。
市内観光に使えるお得な共通券
ベッリーニ博物館、エミリオ・グレコ美術館、ウルシーノ城内市立博物館などとアリバス、市バス、Circumetnea線に共通のパス
- 1日券
- €12.50 (€23)
- 3日券
- €16.50 (€30.50)
- 5日券
- €20 (€38)
※( )はファミリー券、大人2人と13歳以下の子供2人まで有効。購入は各見どころや空港内インフォメーションセンターをはじめ各所のインフォメーションセンターで。
おもな見どころ
町のシンボル象の噴水〈ドゥオーモ広場〉
町のふたつの大通りエトネア通りVia Etneaとヴィットリオ・エマヌエーレ通りVia Vittorio Emanuele Ⅱが交差するこの広場には、町のシンボルでもある象の噴水 Fontana dell' Elefanteが建っている。
象の上にオベリスクが乗っているもので、象はローマ時代の溶岩を使い、オベリスクはエジプトから運ばれ、町の守護聖人アガタ像の象徴を乗せている。1736年に彫刻家ヴァッカリーニが手がけたもので、火山と立ち向かうこの町の象徴だという。
ドゥオーモ(Duomo)
ローマ時代の浴場跡に建てられた大聖堂で、1078年から1093年にかけてロジェール伯爵により建立された。創建当時には、防御のためにやや高い位置に造られたという。18世紀には、ヴァッカリーニによりファサードが再建されたが、創建当時の意匠を残した高さや二重の円柱を重ねた威風堂々としたファサード、それを囲む聖人像が、まるで舞台装置のような美しい面持ちだ。教会の内部、右側廊の2番目の柱には、音符の模様が彫られたヴィンチェンツォ・ベッリーニの墓や、聖堂内陣の右側には聖アガタの礼拝堂Cappella di Sant'Agataがある。聖具室Sacrestiaには1669年のエトナ山の噴火を描いたフレスコ画が飾られていて興味深い。
- 住所
- Piazza del Duomo
- 電話番号
- 095-320044
- 営業時間
- 7:30~12:30、16:30~19:00。日曜日のみ7:00~12:00、16:00~19:00
- ※
- 宗教儀式の際は拝観不可
旧市街の見どころ
クロチーフェリ通り(Via dei Crociferi)
バロック様式の教会が並ぶ趣のある通り。1704年に造られたサン・ベネデットのアーチS. Benedettoをくぐると、両側には優美な装飾と階段のついた入口のあるサン・ベネデット教会やサン・ジュリアーノ教会S. Giulianoだ。さらに真っすぐ進むと、クロチーフェリ修道院Convento dei Padri Crociferiがある。
ベッリーニ博物館(Museo Civico Belliniano)
作曲家ヴィンチェンツォ・ベッリーニ(1801~1835)が生まれてから16歳まで住んでいた家。彼が
3歳から始めたピアノやオリジナルの楽譜、愛用のアクセサリー、恋人の写真、デスマスクまで彼にまつわる、さまざまな物を展示。独身の生涯を送ったもののプレイボーイでもあったそうだ。彼のナポリ音楽学校時代の恋人の写真なども飾ってある。
- 住所
- Piazza S. Francesco d' Assisi 3
- 電話番号
- 095-7150535
- 営業時間
- 9:00~19:00、日曜日9:00~13:00
- 休館日
- 祝日
- 入場料
- €5、学生、65歳以上€2(エミリオ・グレコ美術館と共通)
- ※
- サン・フランチェスコ・ダッシジ広場に面している建物に入口がある。
サン・ニコロ修道院とサン・ニコロ教会(Monastero dei Benedettini di S.Nicolo l'Arena e Chiesa di S.Nicolo l'Arena)
16世紀にサン・ニコロ教会付属の修道院として建造され、18世紀にヨーロッパでも屈指の大規模な物に改装された。後期シチリア風バロック様式の華麗さと各時代の建築様式を見ることができる。ふたつのキオストロ、庭園を結んで建物が配され、華麗な大階段、博物館、ローマ時代の遺構などが見学可能。現在は大学として利用されており、見学では一部制約がある場合も。
修道院に隣接(入口は別)して建つ教会は、入口両側の巨大な円柱が目を引く。広々とした内部はラテン十字形で、どっしりとした柱が並び、クーポラの高さは62mを誇る。1687年に建築が始まったものの、エトナ山の噴火と地震により中断され、今も未完成。内陣手前の床面には黄道十二宮の星座
を描いた日時計、内陣には18世紀の大きな内陣席と13年の歳月をかけて製作され、詩人ダ・ヌンツィオもその音色を賞賛した華麗に装飾されたパイプオルガンが置かれている。
エトネア通りとベッリーニ公園(Via Etnea e Villa Bellini)
かつて富裕層が好んで邸宅を建てたエトネア通りに面しているベッリーニ公園がある。カターニアはほとんどの通りが広く直交するが、これは1693年の大地震の後、噴火や地震に備え、住民が避難しやすいようにという、都市計画に基づいたもの。
エトネア通りもエトナ山に向かって延びる大通り。道の両側に商店やバールが並ぶにぎやかな通りだ。ベッリーニ公園はカターニアが生んだ大作曲家ベッリーニを記念して造られた広大な市民公園。とりわけ入口は美しく植栽され、南国らしくストレチアをはじめとする季節の花々が咲き、棕櫚(しゅろ)の木が影を落とす。段丘の上部にはコンサートが開かれる東屋や陸橋などが点在している。かつて貴族たちは馬を走らせ、馬車で散策を楽しみ、子供たちは侍女たちと遊びに興じたという。
ウルシーノ城(Castello Ursino)
円筒形の隅塔と空堀、城壁に囲まれた力強さを感じさせる男性的な城。
1239~1250年にかけてホーエンシュタウフェン家のフリードリッヒ2世が建造した物で、建築当時はカターニア湾に面して建ち、1699年のエトナ山の噴火により溶岩で周囲が埋まり、海から遠のいてしまった。今も城の周囲には溶岩が残っていることにも驚かされる。ほぼ当時のままに残されている内部は市立博物館となっており、カターニアの貴族から寄贈された考古学コレクションや修道院や教会から運ばれた絵画などを展示。地下と1階には、紀元前6~4世紀のギリシア彫刻、古代ローマの彫像、ギリシア、エトルリア、ローマの青銅製の埋葬品、色絵壺などが並ぶ。2階は絵画を中心に展示。
その他の見どころ
古代のカターニアは、エトネア通りの途中ステシーコロ広場に面して紀元前2世紀に造られた円形闘技場Anfi teatro Romano(通りから一部見学可。遺構は広場の地下に埋まっている)で容易に見ることができる。より保存状態がよいのが古代ギリシア・ローマ劇場と古代オデオン劇場Teatro Greco-Romano Odeon。
ギリシア劇場の跡に紀元前2~1世紀に建造され、7000人を収容。この裏手に半円形の音楽堂オデオンがあり、リハーサルの場や合唱席として使われた。いずれも各所に溶岩が用いられ、大理石や彫像などで飾られていた。
- 円形闘技場
- 住所
- Piazza Stesticoro
- 電話番号
- 095-7472268
- 開館時間
- 9:00~13:00、14:30~17:00
- 休館日
- 日・月曜日
- 入場料
- 無料
- 古代ギリシア・ローマ劇場と古代オデオン劇場
- 住所
- Via V.Emanuele 266
- 電話番号
- 095-7150508
- 開館時間
- 9:00~17:00
- 休館日
- 一部の祝日
- 入場料
- €8 ※毎月第1日曜日は無料
筆者
地球の歩き方ウェブ運営チーム
1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』のメディアサイト『地球の歩き方web』を運営しているチームです。世界約50の国と地域、160人以上の国内外の都市のスペシャリスト・特派員が発信する旅の最新情報をお届けします。
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