シラクーサの魅力を満喫するための見どころと歴史を巡る完全ガイド
美しき古代都市、シラクーサ。今も、緑と花に包まれたギリシア劇場は静かに町を見下ろし、いたるところに古代遺跡が息づく。道を進むごとに、古代ギリシア、ローマ、ビザンチン、アラブ、ノルマン、アラゴン……と、3000年以上に及ぶ歴史の遺構が現れ、旅人を古いにしえの世界へ誘う。
一方、町の中心であるオルティージャ島の市場では、海の幸をはじめ色彩豊かな野菜や果物が山積みにされ、売り子の大きな掛け声が青い空の下にこだまする。かつては天然の城塞であった島には、幾重にも小路が迷路のように広がる。旧市街のドゥオーモとその周辺の広場はすっかり整備され、サンタ・ルチア教会にはカラヴァッジョの傑作が展示されるようになった。
夏の夜なら、オルティージャ島のマリーナ門P.ta Mariaからアレトゥーザの泉の間に延びる遊歩道Passaggio Adornoに足を延ばしてみよう。豊かな緑が生い茂る海辺のプロムナードをのんびり散歩する町の人たちに混じれば、南イタリアのゆったりとした時間が流れていく。
おもな見どころ
ギリシア、ローマ時代の発掘地域〈ネアポリス考古学公園〉
シラクーサ駅の北西700mあたり、ギリシア人とローマ人が活躍した時代の記念的建造物が集まる地域にある公園。1950年代に植林と歩道整備が行われ、古代の遺跡とオレンジの果樹園などが共存する、森のような広大な公園に生まれ変わった。安全面から、観光できる施設は限られるが、考古学地区の北を走る、眺望のよいリッツォ通りViale G.E.Rizzoからは、シラクーサの町と海を背景に、ギリシア劇場、天国の石切り場などが点在する雄大な公園を望むことができる。
- 住所
- Via del Teatro Greco/Via Paradiso 14
- 電話番号
- 0931-66206
- 開館時間
- 8:30~16:40、日・祝日8:30~13:40(切符売り場は閉場1時間10分前まで)
- 料金
- €10、パオロ・オルシ考古学博物館との共通券€13.50
ギリシア劇場(Teatro Greco)
紀元前3世紀、ヒエロン2世の時代に造られ、シチリア1の規模を誇る。岩山を削り出し(くり抜き)造られており、直径138mの半円がすり鉢状に重なっている。当時の収容人数は1万5000人。もともとは61段あった石段は46段を残すのみで、往時の規模の半分以下。
観客席や建物は、オルティージャ島の要塞建材に調達され16世紀に取り壊された。この劇場では、ギリシア悲劇(ギリシア三大詩人のひとり、アイスキュロスの「ペルシャの人々」の初演など)の上演が行われ、時には市民集会の会場にもなった。ギリシア劇場を見下ろす岩場からは、シラクーサの町並みとイオニア海の紺青の絶景がまぶしい。
天国の石切り場(Latomia del Paradiso)
考古学公園の南側に広がる灰白色の洞窟群は、シラクーサの町の城壁を作るために切り出された石切り場の跡。もっとも有名なのがこの「天国の石切り場」。これらの広い洞窟は、今では樹木の茂る庭園へと姿を変えている。
ディオニュシオスの耳(Orecchio di Dionisio)
高さ25m、幅5~11m、長さ65mの人工洞窟が、「ディオニュシオスの耳」と呼ばれるのは、シラクーサの僭主ディ
オニュシオス(「走れメロス」に登場する暴君!)が、捕虜をここに閉じ込め、上からその話を盗み聞きしたという伝説に基づくという。17世紀の放浪の画家カラヴァッジョの命名と言われる。
縄ない職人の洞窟(Grotta di Cordari)
湿気が多いこの場所で、数世紀にわたり縄をなう作業が続けられてきたことから、名付けられた。奥行きは深い。
古代ローマの円形闘技場(Anfiteatro Romano)
帝政時代(3~4世紀)の建造物。一般的な円形劇場とは形状が異なり、岩場を掘って作られた楕円形のすり鉢状の劇場。自然のなかでは小さく見えるが、ヴェローナのアリーナ(円形劇場)に匹敵する大きさだ。
州立パオロ・オルシ考古学博物館(Museo Archeologico Regionale Paolo Orsi)
シチリアで活躍した考古学者パオロ・オルシの名を冠した、シチリア島で最も重要な博物館。緑の多いヴィッラ・アドリアーナにあり、F.ミッシ設計のモダンな三角形の建物だ。館内は円形の中庭を囲んで、5つのセクション(区)に分かれる。
A区は、先史・原始時代から旧・新石器時代を経て青銅器時代まで。シラクーサ近くのパンタリカ文化に注目。B区は、シチリア各地のギリシア植民都市を、イオニア人とドーリア人のものに分けて展示。C区は、シラクーサの建設した植民都市と先住民の定住地の文化。テラコッタ製の「玉座のデメテル」(農耕の女神)が興味深い。2階D区の1室は、「アフロディーテのヴィーナス」Venere Anadiomeneに充てられていてじっくり鑑賞できる。2014年に新設されたF区の、サン・ジョヴァンニのカタコンベから運ばれた「アデルフィアの石棺」Il sarcofago di Adelfiaがすばらしく美しい。
- 住所
- Viale Teocrito 66
- 電話番号
- 0931-489511
- 営業時間
- 9:00~19:00、日・祝日9:00~14:00(切符売り場は閉館1時間前まで)
- 定休日
- 月曜日
- 料金
- €8、ネアポリス考古学公園との共通券€13.50
サン・ジョヴァンニ・エヴァンジェリスタ教会
正面にバラ窓が飾る教会。1693年の地震の被害を受けつつも、3つのバランスのよいカタロニア式アーチが教会の立体感を強調している。教会の外、右側の奥の入口へ行くと、ギリシア時代からのカタコンベに通じている。カタコンベにあった美しい石棺が修復され、州立博物館で展示されている。
- 住所
- Largo S.Marciano 3
- 電話番号
- 0931-1561472
- 開館時間
- 9:30~12:30、14:30~16:30/17:30、7~8月 10:00~13:00、14:30~18:00
- 定休日
- 11~2月の日・月曜日
- 料金
- €8
- ※
- ガイド付き見学のみ。毎正時のスタート
ドゥオーモ(Duomo)
オルティージャ島の中心、開放感のある華やかなバロック様式の広場に立ち、ひときわ目立つ存在だ。威厳ある堂々たる姿は、紀元前5世紀のアテナ神殿が7世紀に教会となり、その後たびたび手を加えられたもの。当時の列柱は今も左外壁や内部で見ることができる。バロック様式の主祭壇、天井のフレスコ画、ガジーニ一族による彫像などが厳かな空間を彩っている。
- 住所
- Piazza Duomo
- 電話番号
- 0931-65328
- 開館時間
-
4~9月 8:00~19:45、10~3月 8:00~19:00
※ミサなどの宗教行事の際は、拝観不可。 - 料金
- €2
サンタ・ルチア・アッラ・バディア教会(Santa Lucia alla Badia)
ドゥオーモ広場の南側に立つ、シラクーサの守護聖人サンタ・ルチアを祀る教会。15世紀に修道院の付属教会として創建され、18世紀はじめに再建された。主祭壇を飾るのは、シラクーサに逗留した晩年のカラヴァッジョによる『聖ルチアの埋葬』Seppellimento di S.Lucia。横たわる聖ルチアを囲み、墓堀人と死を悼む人々の姿が劇的に描かれている。
- 住所
- Via S.Lucia alla Badia 2
- 電話番号
- 0931-65328
- 開館時間
- 11:00~16:00
- 休館日
- 月曜日
- ※
- ドゥオーモ南側
ベッローモ宮州立美術館(Galleria Regionale del Palazzo Bellomo)
アレトゥーザの泉から島の内部に入っていく、細い道Via Capodieciにあり、カタロニア様式の趣のあるベッローモ宮に中世初期から現代までの絵画と彫刻を中心に展示。とりわけ名高いのはアントネッロ・ダ・メッシーナの『受胎告知』Annunciazione、ガジーニの浮彫り彫刻の『聖母子』Madonna col Bambinoをはじめ、カラヴァッジョの弟子のマリオ・ミンニーティMario Minnitiの作品など。
- 住所
- Via Capodieci 14
- 開館時間
- 9:00~19:00、日曜日14:00~19:30
- 定休日
- 月曜日
- 料金
- €8(ネアポリス考古学公園の切符提示で€7、州立パオロ・オルシ考古学博物館との共通券€12)
アレトゥーザの泉(Fonte Aretusa)
ピッツェリアやパピルス製品を扱うみやげ物店が並ぶアレトゥーザの泉は、地元っ子の待ち合わせの場ともなっている。川の神アルフェウスから逃れようと、妖精アレトゥーザが泉となったと言い伝えられている伝説の泉。泉の脇から海岸通りへ下りることもできる。
アポロ神殿(Tempio di Apollo)
魚や果物、野菜、雑貨などが並ぶ、にぎやかな市場の手前、パンカーリ広場に面して広がる緑の公園内に建つ。紀元前7世紀末、シチリア最古のドーリス式神殿の遺構だ。その後、ビザンチン教会、ノルマン人の聖堂などに改築され、現在もその痕跡が残る。
神殿前の坂道を上ると、ブティックなどが並ぶ町一番のメインストリートのマッテオッティ大通りだ。
シラクーサへの行き方
鉄道で行くには
出発地 | 鉄道名 | 所要時間 |
---|---|---|
ローマ | fs線 IC | 約11時間 ICN(夜行) 約12時間30分 |
ナポリ | fs線 IC | 8時間40分~9時間 ICN(夜行) 9時間40分 |
カターニア | fs線 IC.R | 約1時間~1時間20分(1~2時間に1便) |
メッシーナ | fs線 IC.RV | 2時間30分~2時間45分(1~2時間に1便) |
バスで行くには
出発地 | バス会社 | 所要時間 | 料金 |
---|---|---|---|
パレルモ | INTERBUS | 3時間20分(平日2便) | €13.50 |
カターニア | INTERBUS/ETNA | 1時間25分(平日30分~1時間に1便、日祝1~2時間に1便) | €6.20、往復€9.60 |
ラグーザ | AST | 3時間10分(ノート、モディカ経由) (平日17:15~19:00に4便、日祝運休) |
車で行くには
カターニア→(S114)→シラクーサ
筆者
地球の歩き方ウェブ運営チーム
1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』のメディアサイト『地球の歩き方web』を運営しているチームです。世界約50の国と地域、160人以上の国内外の都市のスペシャリスト・特派員が発信する旅の最新情報をお届けします。
【記載内容について】
「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。
掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。
本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。
※情報修正・更新依頼はこちら
【リンク先の情報について】
「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。
リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。
ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。
弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。