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イギリスのワイン、と聞いてもピンとくる人はあまりいないのではないでしょうか。本来は寒すぎる気候でブドウの栽培に適さなかったイギリスですが、最近では国際的な賞をとるワインメーカーも出てきました。ブドウ栽培が盛んなイギリス南部、サリー州にあるブドウ園「デンビーズ・ワイン・エステート(Denbies Wine Estate)」を紹介します。
1986年創業の「デンビーズ・ワイン・エステート(Denbies Wine Estate)」へは、簡単にアクセスできます。ヒースロー国際空港からは車で約40分、ガトウィック空港からは約25分、ロンドン中心部からは電車で1時間程度、最寄りのドーキング(Dorking)駅からは、徒歩で15分ほどです。
園内には、ワイナリーのほか、ふたつのレストランやギフトショップ、ガーデンテラスでのワインバー(夏季限定)、別棟のサリー州地元産にこだわった製品を置く食品ショップ、ファームハウスがあります。入園者はブドウ園散策が自由にできますので、都合のよい時間帯のアクティビティが取れなかったとしても、十分に楽しめる施設となっています。
「デンビーズ・ワイン・エステート」は、ほかの農園と比べても各種ツアー、季節ごとのイベントが充実しています。なかでも、定番のワインの試飲ができる屋内ワイン試飲ツアーは人気です。また、イギリス最大級のブドウ畑を丘から一望できるハイキング、サイクリング・コースなども評判です。
各種ツアーは、公式サイトからの事前予約が確実で望ましいですが、一部の人気ツアーを除き、空きのある時間帯であれば当日受付でも問題ありません。
また、ワインが飲めない大人や子供でも楽しめるプランが満載です。
一例として、朝はチーズ作りを地元の酪農家で学び、その後、デンビーズ農園でのランチ体験やブドウ鑑賞をしながら品種と地域についてのレクチャーを受けられるワインのワークショップなどがあります。
これからやってくる冬には、ヴィンテージ・コレクションをテーマにしたイベントやクリスマスのクラフト・フェアなども開催されます。
半日おすすめプランは、週末や特定の日時にしか開催されないツアーです。人気が高いので、事前予約は必須です。一方、ワイナリー定番の屋内ワイン試飲ツアーは、予約なしでも空きがあれば当日に申込ができますので、園内ハイキングと組み合わせるとちょうどよいです。
東京ドーム約23個分、265エーカーを有する広さのブドウ園は、自由に散策することができます。敷地内は平地だけではなく、木々が生い茂る傾斜面があります。その傾斜面で、しっかりとした装備をしてハイキングを楽しむ人、マウンテンバイクで駆け上がるサイクリストがいるなど自然を満喫できる環境があります。
これらのツアーに前後して、カフェやレストランでゆっくりランチをしたり、ツアーと散策の間にスコーンやケーキでお茶をするという過ごし方もできます。1階のレストラン「Conservatory」は、その名の通り、天井が巨大なガラス張りで、明るい日差しが降り注ぐ温室のようなレストランです。
カウンターには、サンドイッチや選べるお子様ボックス・セット、ローストなどの温かい料理、ケーキ類が並びます。システムは、自分でトレイに乗せて会計をするセルフ形式です。ツアーの時間が迫り、急いでいる時でもサッと利用できて便利です。
ワインの試飲ができる屋内ワイン試飲ツアーは、全行程で1時間ほどのツアーです。「デンビーズ・ワイン・エステート」の歴史をまとめた映像を観た後、ガイドの説明を聞きながらワイナリーをまわり、最後に3種類のクラシック・ワインを試飲します。
料金は、大人1人11.5ポンド(約1,600円)、2~17歳までの子供はジュースがついて3ポンド(約420円)です。ツアー開始時間は、通年、午前11時から午後4時まで。1時間単位で予約を受付けています。
開始時間の5分前にはスタートしている場合もありますので、10分ほど前には受付(Reception)付近で待機しておくのがよいでしょう。はじめにシアター室で「デンビーズ・ワイン・エステート」の成り立ちや創業者、ブドウ園の特徴などを説明した約20分間の映像を観ます。
3度目の編集フィルムとのことで、BGMや構成などが洗練されていてわかりやすいです。早くブドウ園を散策したいという気持ちにさせてくれます。
その後のワイナリー見学では、随所にあるモニター画面を見ながらガイドの話を聞き、いよいよお待ちかね、試飲タイムです。
照明がグッと落とされた雰囲気のあるワインセラーで、白、ロゼとグラスを重ねながら、引き続き名ガイドの話に耳を傾けます。途中、盛りあがったグループ客が注意されていたので、話は静かに聞きましょう。
壁にはブドウの品種ごとに細かく色分けされた農園マップがあり、さすがはイギリスで一番大きなブドウ園、種類が多いです。このようなひと目で判断できるマップを作成している農園はほかにあまりないそうです。
「デンビーズ・ワイン・エステート」はその大きさゆえ、収穫時の刈り取り用トラクターをイギリスで唯一所有している農園なのだとか。また、イギリス産ワインの1割を製造していること、試飲用ワインの味の説明や合う料理の紹介などの話を聞くと、ガイドの「デンビーズ・ワイン・エステート」への愛と誇りが伝わってきます。
また、少し先になりますが、春からはトロッコ型の車両を使ったブドウ園オリジナルのトレイン・ツアーが始まります(3〜10月限定)。
トレイン・ツアーは、ワイナリーの玄関口よりブドウ園全体が見渡せる丘の上まで遊覧する一周約50分のツアーです。大人1人7.5ポンド(約1,050円)、子供3ポンド(約420円)で、オプションのスパークリング・ワイン(12ポンド、約1,680円)をつける人が多いようです。
途中、眺めのよい撮影スポットで10分間停車し、ガイドが地形の説明をしてくれます。
サリー州などイギリス南部の地域では、ブドウ作りのカギを握る石灰質(チョーク)の地層が多く、気候はフランスのシャンパーニュ地方と似ているそうです。そのため、イギリス産ワインは、スパークリング・ワイン(発泡性ワイン)が生産量の68%(2017年)を占めているのだとか。
収穫用トラクターは、傾斜を上れず、平地のみの利用になります。傾斜部分のブドウは、必然と手摘みになり、より繊細さが求められるスパークリング・ワイン向けに利用されることになります。
「デンビーズ・ワイン・エステート」のスパークリング・ワインは、瓶詰めしてからさらにボトル内で熟成させる瓶内二次発酵の時間が、シャンパンより1年ほど短いそうです。しかしながら、味や品質などに大差はなく、ほぼ同等に近い、と自信を持っていました。
その後、頂上の丘でさらに数十分、のどかな風景を眺めるなどして、めいめい休憩します。スパークリング・ワインは、この時にプラスチック製グラスで配られます。さらに別オプションのアフタヌーン・ティーを申し込めば、この丘で楽しめます(6〜9月限定)。
「デンビーズ・ワイン・エステート」では、広大なブドウ畑を利用したランニング・イベントが多いのも特徴です。毎週土曜日には朝9時から参加費無料のパーク・ランという5kmのマラソンが開かれます。
また、秋恒例のハーフとフルマラソン大会は、景色を眺めながらワインを飲み、ゴール後にはバーベキューで打ち上げ、という楽しさを第一に掲げたユニークなイベントです。ウォーキングでの参加もOKで、ウェディングドレスなどのおもしろコスチュームで走ってみたり、給水地点ならぬ給ワイン地点が設けられていたりと、ワイワイと楽しめます。
そのほか、5kmや10km、ハーフなど多種のコースから選べるマイペース型マラソンや子供とビギナーにおすすめの2kmと10kmのコースを仮装して走るハロウィン・ラン、支給されるサンタクロースの衣装を着て走り、ゴールではホットワインが振舞われる冬のサンタ・ランなども人気です。
2019年夏には、イギリスで初となるブドウ園ホテルが敷地内にオープンしました。オープン・テラスのレストランはにぎわい、夏の間は芝生が広がるガーデンで寝転がってリラックスする宿泊客の姿もありました。
日帰りでめいっぱい楽しむもよし、泊まりがけで時間を気にせず、どこまでも続くブドウ畑を肴に飲み明かすのもよし。広い敷地内で、利用者の好みに応じた過ごし方ができます。
王室認定を受けている高級スーパー「ウェイトローズ」の広報誌『Drinks Summer 2019』で「訪れたいイギリスのすばらしいブドウ園5選」のひとつに選ばれている「デンビーズ・ワイン・エステート」。注目のイギリス産ワインを試しに、足を運んでみてはいかがでしょうか。
※記事中の料金、および為替レートは、2019年11月現在のものです。