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古代より水のおいしさと豊富さで知られてきた町、イタリア・ローマ。シーザーの時代には、「この町はまるで水の上を歩くようだ」と表現され、現在のおおよそ倍以上の数の噴水、公衆浴場やニンフェウムがローマに存在していました。今日でもローマの町中には小さいものから大きなものまで、5,000以上の噴水があるといわれています。そんなローマの噴水のなかで、とりわけ美しいトレヴィの泉を紹介します。
有名で壮麗な噴水、トレヴィの泉(Fontana di Trevi)。かつて、この場所にトリヴィオ(Trivio)と呼ばれる3本(tre)の道(vie)が交差する地点があったことに由来し、この地区はトレヴィ(Trevi)という名がつけられています。
トレヴィの泉は、フェデリコ・フェリーニ監督の『甘い生活(ラ・ドルチェ・ヴィータ)』などのさまざまな映画の舞台となりました。多くの人々に知られるこの噴水をさらに有名にしているのは、泉に向かって後ろ向きにコインを投げ入れるとローマに再び戻って来ることができるというジンクスでしょう。
トレヴィの泉は小さな路地を歩いて行くと、ゴーゴーという水の音と共に突然目の前に現れます。迫力いっぱいのトレヴィの泉は、今日まで訪れる者たちの感動を呼んできました。
トレヴィの泉の歴史は、ローマ帝国初代皇帝・アウグストゥスの右腕であったアグリッパが紀元前1世紀に水道橋を建設し、ローマにヴィルゴ水道(後のルネサンス時代に拡張されヴェルジネ水道となる)を引いてきたことに遡ります。
このヴェルジネ水道からの水を受ける水盤に、ローマ教皇クレメンス12世(1730~1740年)が建築家の二コラ・サルヴィを採用しました。サルヴィは、ほかにもローマのパンテオンの近くにあるサンテウスタキオ教会の主祭壇などの設計に携わっていますが、このコンクールで選出された当時はまだ無名の若き建築家でした。
泉はその後、いくつかの仕上げ作業を経て、1762年にクレメンス13世により完成式が迎えられました。
トレヴィの泉はいつも人気で、たいへん混雑しています。比較的空いている季節は、秋(10月以降)から冬にかけてです。1日のなかでは、早朝が最も訪れる人が少なく、この時間帯は泉に向かってコインを投げるスペースを確保することができるでしょう。
トレヴィの泉では泉に向かって後ろ向きにコインを投げ入れると、ローマに再訪することができるといういい伝えがあります。コインを2枚投げ入れると好きな人と結ばれ、3枚投げ入れると恋人やパートナーと別れられるという言い伝えも。
バロック様式の噴水でもあるトレヴィの泉は、古代ローマ時代に引かれたヴィルゴ水道のモニュメント改修を目的に、二コラ・サルヴィにより美しく設計し直されました。泉は、16世紀の終わりに建てられたポーリ宮殿(現在は国立グラフィックデザイン研究所とその博物館が入居)の壁に造られました。
その後、長きにわたりローマ市民の生活を見守ってきたトレヴィの泉は、1991年と2014年に大規模な修復、清掃作業が行われました。
トレヴィの泉にまつわる伝説を紹介します。アグリッパに仕えていた兵士たちが戦いからの帰還の際にコッラティーナ通りを歩いていると、ひとりの乙女が現れて泉を指し示したといいます。澄みきった泉から湧き出る水は、乙女の水「アクア・ヴェルジネ」と呼ばれたそうです。トレヴィの泉の上部にあるレリーフの右側は、このエピソードを表しているのだとか。一方、左側はアグリッパがこの水をローマに引いてくる計画をアウグストゥス帝に説明をするシーンが表現されています。
中央は、海の神様・ネプチューンが貝殻の形をした戦車に乗り、海の静と動の両方の性質を表現した海馬を従えています。馬たちのダイナミックな動きに目が引きつけられます。その脇に見えるのは、フィリッポ・デッラ・ヴァッレによる女性の寓意像。左側が豊穣で、右側が健康を表しています。
トレヴィの泉は、夜はライトアップされてロマンチックな雰囲気になります。トレヴィの泉がある地区は1日を通して特に観光客が多い場所です。夏場は、深夜1~2時頃まで通行人の往来が多く見られます。危ないとされる地区ではありませんが、夜の町歩きの際は注意が必要です。カバンやカメラ、スマホなどの持ち物からは目を離さず、注意を払いながら観光しましょう。
トレヴィの泉へ行くには、地下鉄A線バルベリーニ駅(Barberini-Fontana Trevi)を利用しましょう。駅から徒歩約8分です。地上に出たらトリトーネ通りを南西に進みます。パネッテリア通りとの交差点で左折し、そのまま直進します。次に、パネッテリア通りとラヴァトレ通りの交差点を右折したら右手に泉が見えてきます。
ローマの観光スポットとして有名なフォロ・ロマーノ(Foro Romano)も泉の近くにあり、徒歩約5分で行くことができます。
いかがでしたか。ローマを象徴する観光名所、トレヴィの泉を紹介しました。今度のローマ旅行の参考にしてください。