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ニューヨークの治安や状況、観光で気をつけるポイントや避けたいエリアを日本人ライターが解説

青山 沙羅

青山 沙羅

アメリカ・ニューヨーク特派員

更新日
2024年1月8日
公開日
2022年10月12日
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海外旅行で気になるのが、その国の治安ではないでしょうか。特にコロナ渦を経て、治安や雰囲気はどう変わったんだろうと疑問に思っている方も多いはず。ニューヨークでは2020年3月の非常事態宣言から3年近くが経過し、レストランや劇場ではマスク着用が任意となり、ワクチン接種証明の提示も撤廃されました。世界各国から再び観光客が訪れ始め、やっと日常に戻りつつあります。しかしながら、長引くコロナ渦で治安は良好とはいえないのも事実。そこで今回は、ニューヨーク在住の筆者が安全に、楽しく旅行するためのポイントをお伝えします。何度もニューヨークを訪れたことがあるという方も、ぜひご一読ください。

ニューヨークの治安の現状は?

ニューヨーク市は、2020年3月の感染拡大の非常事態宣言前までは治安が向上しており、ひとり旅でも問題なく過ごせました。ところが収束の見えないコロナ禍により、経済が悪化。不自由になった日常生活からのストレスなどの理由により犯罪が増加しており、コロナ禍以降のニューヨークの治安は正直良好とは言えません。筆者は2009年からニューヨーク市在住ですが、渡米以降で現在の治安が最も悪くなっていると感じます。

ただし、最近ではコロナ渦で激減した旅行客も戻ってきていますので、自身を守る危機管理意識さえあれば安全に楽しく観光することは可能です。現在ニューヨークに観光に来ている旅行客を見ると、家族や友人同士、カップルなど複数人の旅行客が大多数で、ひとり旅はほとんど見かけません。治安がもう少し回復するまでは、ふたり以上のグループ旅行をおすすめします。

ニューヨークで安全に過ごすためのコツとは

さて、あなたが安全にニューヨーク旅行をするにはどうしたらよいでしょうか。筆者のおすすめは、「ニューヨーカー(ニューヨーク市の住民)の真似をしてみる」ことです。 ニューヨーカーは危険に対して、常にアンテナを巡らせ、身を守るよう意識しているからです。

滞在中はニューヨーカーの様子を観察し、真似をしてみましょう。例えば地下鉄では、ひと気がないところではなく、彼らが集まっている場所にいましょう。彼らがアナウンスを聞き、一斉に電車から降りたら降りましょう(事件や事故が起きた可能性があります)。どうやってニューヨーカーを見分ければいいの?という方向けに、筆者が思う特徴をまとめてみます。

ニューヨーカーの特徴とは

  1. オシャレな格好ではなく、汚れが気にならないジーンズにスニーカーなどを身につけている(洒落っ気はあまりない)
  2. 男性はデイパック、女性はショルダーやポシェットに加え大きなセカンドバッグ(仕事道具や着替え、ランチなどがパンパンに詰まっている)を持っていることが多い(観光客はスーツケースを引いている、あるいは身軽で荷物が少ない)
  3. 前のめりに先を急ぎ、あまり他人と視線を合わせない

地下鉄で安全に過ごすには

ニューヨーカーは荷物を体から離さずガード。荷物からは絶対に目を離さないこと

ニューヨーカーが治安に懸念を感じる最たるものが地下鉄乗車です。コロナ禍以降、地下鉄の安全性が低下しているため、筆者のまわりでも「地下鉄に乗りたくない」という理由で、リモートワークに移行しオフィスへの出社を避ける人がいるほど。

そうはいっても、やはり通勤や通学で利用せざるを得ず、筆者も含め毎日緊張しながら利用している人も多いと思います。観光する際は、地下鉄は日中に利用し、日が落ちてからの利用は避けましょう。地下鉄は24時間運行していますが、現在のニューヨークの治安では深夜に利用するのは危険です。

前述したとおり筆者も地下鉄通勤をしているので、普段心がけている地下鉄乗車のポイントをまとめてみます。

地下鉄を待つ時

  • 背後から襲われて強盗または暴行される事件が起きているため、地下鉄構内では背後に人がいないか、常に確認する。
  • ホームでは線路際から極力離れ、背後に人がいない壁側で電車を待つ。線路へ押される事件が多く起きているので、ニューヨーカーはホームの壁に張り付く、あるいはホームに降りる手前の階段で待つことが多い。
  • 罵声や悲鳴が聞こえた場合、声がした方向からすぐに離れる。
  • ホームレスや様子がおかしい人(ひとり言を言う、目がすわっているなど)のそばには行かない。駅構内で寝ていても顔を見ない(刺激しない)。

これ以外にも、ネズミが走り回っている可能性があるのでできれば足元にも注意を向けましょう。

地下鉄車両が来たら

  • 車両は密室であると考え、誰も乗車していない車両には乗らない(乗客の多い車両が安全)。人がいないように見えても、実はホームレスや様子がおかしい人が横になって寝ていたり、途中駅から乗ってきたりする可能性がある。
  • 中央部の車掌がいる車両が安心(女性に人気)。先頭車両と最後尾車両は人が少ないので、乗らないほうがよい。
  • 乗車時は車両内を見渡して、ホームレスや様子がおかしい人が乗車していないことを確認して乗る。

特に3番目は、今やニューヨークの常識として多くの人が実行しています。

地下鉄乗車中

  • 安全そうな人のそばに座る。筆者(女性)は、女性あるいはアジア人の隣に座ります。
  • 周囲が安全か、常にアンテナを張る。スマートフォンの画面だけを見続けたり、イヤフォンをつけたまま音楽に没頭したりしない。
  • 地下鉄を待つときと同じように、ホームレスや様子がおかしい人の顔は直接見ない。目を合わせたり、そばに寄ったりしない。不審な動きをしたら逃げられるように、目の端で存在を確認する。
  • 乗車してから、ホームレスや様子がおかしい人が同じ車両に乗ってきたら、次の駅で違う車両に移動する。
  • もの乞いされても無視する(財布を人前で開かない)。場合によっては「ノーイングリッシュ」と英語がわからないふりをするとよいでしょう。
  • バックパックや荷物が他人に触れないように配慮する。アメリカでは他人が接触する、物が当たるのを極端に嫌う傾向があります。また、押し返されたり、口論になったりしてトラブルにつながることがあります。

土日祭日は工事が行われることが多いため、行き先や停車駅、運行時間など運行スケジュールが変更になることがあります。スケジュールを事前に確認しておくと安心です。「MTA」の地下鉄とバスのアプリがあるので、旅行前にスマートフォンにダウンロードしておくと便利です。

MTA(ニューヨーク市の地下鉄及びバス)の公式アプリ

街中で安全に過ごすには?危険な場所の見分け方

高級ブランドのコピー品は買わないこと。興味を示しただけでも売人たちに囲まれることがあり危険。購入したとしても税関で没収される

街中で安全に過ごすには、日が出ているうちに行動すること、観光客など人通りが多いエリアを中心に移動すること、そして何より「危険な場所へ行かない」ことです。

以下に、危険な場所の見分け方をまとめてみます。こちらを参考にして、自分がどのような場所にいるのかを意識してみましょう。

危険な場所の見分け方

  1. 道にゴミが散乱している。(管理されていないということを意味します。)
  2. 建物や公共物への落書きが多い。
  3. 電線にスニーカーがぶら下がっている。(違法薬物の取引場所のサインといわれています。)
  4. 様子がおかしい、またはガラが悪い人がたむろしている。
  5. 小売店や飲食店など、店の外観が汚い。
  6. マリファナの匂いがする(タバコとは違う独特の匂いがします)。

以下は、筆者が思うあまり治安がよくないと感じるエリアです。これらのエリアには観光地が含まれている場合もありますが、行かないほうがよいということではありません。ただし用心しすぎるということはないので、観光に行く場合は十分に気をつけて向かいましょう。

治安があまりよくないと思われるエリア

  • マンハッタンの東西両端(「プロジェクト」と呼ばれる貧困層の公団住宅、ホームレスの保護施設、アルコールや薬物中毒患者のリハビリ施設が多い)
  • ポートオーソリティ・バスターミナル近辺(8番街42丁目付近)
  • ペンシルバニア・ステーション近辺(8番街34丁目付近)
  • トンプキン・スクエア・パーク
  • チャイナタウン(キャナル・ストリート、イースト・ブロードウェイ)
  • ロウアー・イースト・サイド(デランシー、バワリー)
  • マンハッタンの100丁目以上の北部(西部のウエスト・ハーレム、中央部のセントラル・ハーレム、東部のスパニッシュ・ハーレム)
  • ブロンクス
  • ブルックリン東部、南部(マンハッタンに近いエリアは治安がよいとされる)
  • スタテンアイランド

宿泊施設を選ぶ際に

宿泊施設を選ぶ際は、値段の安さだけで選ばず、立地のよさを確認するようにしましょう。ニューヨーク市は「安全をお金で買う」所といっても過言ではありません。すべてがそうだというわけではありませんが、値段が高ければ治安は比較的よく、低ければその逆になる傾向があります。

例えば、ハーレムやイースト・ハーレムエリアは、アルコールや薬物中毒患者のリハビリ施設やホームレスのシェルター(保護施設)が多くあり、環境がよいとはいえません。ブルックリンやクイーンズの奥にある住宅街は場所によっては安全ではありませんし、マンハッタンの観光地からはかなり離れています。これらのエリアは、ニューヨークの地理に明るくない旅行者にとってはわかりにくく、向かないといえるでしょう。

また、SNSやインターネット上の掲示板で見かける個人宅の貸し出しはリスクが高いといえます。そもそも民泊は違法であり、ホストが犯罪者でないという保証はどこにもありません。

街中で気をつけるべきこと

タイムズスクエアのストリートパフォーマンス。背後からスリなどの盗難に遭う場合もあるので、バッグはしっかり閉じいつでも手が届くようにしておく

ここまで読んでいただいた方は、ニューヨーク旅行で気をつけるべきことがだんだんとわかってきたのではないでしょうか。最後に、街中で気をつけたいポイントや把握しておきたい事例をまとめてみます。

・街中で話しかけてくる人を相手にしない。
映画やドラマでよくあるように、ニューヨーカーはフレンドリーで旅行者に積極的に話しかける……ということはほぼありません。空港、繁華街、公園などで旅行者に話しかける場合、騙す(詐欺)、盗む、暴行する目的があることも少なくないので気をつけましょう。

・背後に気を配る。
街を歩く時は、ウィンドー越しに背後を確認するなど、不審者がいないかを確認しましょう。

・ひと気のない場所を歩かない。
ひと気がないのは、安全ではないからです。人が少ない通りに出たら、速やかに人が多い場所に移動しましょう。

・早朝・夜間は出歩かない。
日本のように夜間に財布だけを持ってコンビニに行く感覚は、現在のニューヨーク市では危険です。治安の悪化のため、多くの商業施設は閉店時間が早まっています。

・タイムズスクエアの着ぐるみ(ディズニーや映画のキャラクター)と写真を撮らない。
写真を撮ると高額なチップを要求されます。痴漢などの被害も起きています。

・財布を分散する。
普段使う財布には少額の現金、およびクレジットカード(盗難にあっても停止できる)などを入れ、多額の現金を一つの財布に入れないこと(身分証明書など大事なものは別にしておく)。また、ニューヨークでは20ドル札が多く使われ、50ドル札、100ドル札などは使いにくい場合があります。

・ATMは、できるだけ警備員がいる銀行ビル内のものを利用する。
例えば、全店がそうだというわけではありませんが、マクドナルドに設置してあるATMでトラブルに遭ったと聞いたことがあります。(口座情報が盗まれ、不正利用されるなど)

また余談ですが、マクドナルドのフリーWi-Fiもトラブル(個人情報の流用)が多いようです。マクドナルドは日本と違い、様子のおかしい人がたむろしている店舗もあるので、テイクアウトがおすすめです。

万一の場合の連絡先

被害に遭わないのがいちばんですが、万が一事故やトラブルに巻き込まれた場合に備え、以下に連絡先と対応方法をまとめます。

  • 犯罪や事故に遭った時は、「911(警察の電話番号)」へ。火事、救急、犯罪いずれも共通です。オペレーターにつながったら、事故やトラブルが起きている場所と内容を告げましょう。英語で説明できない場合は「ジャパニーズ、プリーズ」と伝えれば、日本語通訳サービスを介して通話可能です。
  • そのほか、犯罪や事故に遭ったり、目撃したりした場合は在ニューヨーク日本国総領事館へ。電話番号は212-371-8222です。(緊急時は24時間対応可能で、日本語オペレーターによる対応も可能です。詳しくは在ニューヨーク日本国総領事館の公式サイトを参照してください。

ニューヨーク旅行前に目を通しておきたいサイト

・もし事件や事故に巻き込まれたら 在ニューヨーク日本国総領事館:
https://www.ny.us.emb-japan.go.jp/jp/p/whatif_01.html
・ニューヨーク安全マニュアル 在ニューヨーク日本国総領事館:
https://www.ny.us.emb-japan.go.jp/jp/j5/index.html

なお、海外旅行前には必ず海外旅行保険に加入しておきましょう。アメリカでは救急車はとても高額です(重病患者でも救急車には乗りたくないというほど)。医療費も無保険だと同様に高いので、忘れずに保険に加入することをおすすめします。

まとめ

ニューヨークはよく東京と比較されることもあり、治安も同じ程度だと思われることもありますが、特に現在の治安や雰囲気は、日本だけでなくコロナ以前のニューヨークとも異なります。ただし、治安は良好とはいえないものの、「日本とは違う外国にいる」という意識を常に持って行動すれば犯罪に巻き込まれる可能性は低くなるといえるでしょう。現に多くの旅行者はニューヨークで楽しく過ごし、無事に帰国しています。あなたのニューヨーク旅行を安全で楽しいものにするために、今回まとめた現地在住者としてのアドバイスが参考になれば幸いです。ぜひ、ニューヨークへいらしてくださいね。お待ちしています!

TEXT:ニューヨーク特派員 青山 沙羅
PHOTO: Hideyuki Tatebayashi *Do not use images without permission.
監修:地球の歩き方

アメリカの最新安全情報(外務省)

アメリカの治安については、外務省が提供する以下の最新安全情報も合わせてご覧ください。

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