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台湾・蔡英文総統・マッカーシー会談から読み解く台湾渡航リスク

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台湾の緊張が高まっている。中米訪問帰りの台湾の蔡英文総統は4月5日、カリフォルニアで米国のマッカーシー下院議長と会談し、経済と安全保障などの分野で連携を強化していくことで合意した。しかし、台湾との統一を掲げる中国は強く反発し、4月8日からは3日間の日程で軍事演習を行い、中国軍は台湾の北部や東部、南部などで一斉に軍事演習を活発化させた。4月6日には、中国海軍の空母「山東」やフリゲート艦など合わせて3隻が台湾南部のバシー海峡から西太平洋に向かう姿が確認されたが、2019年に就役した山東が太平洋で航行する姿が確認されたのは初めてとなった。4月9日にも戦闘機などのべ70機が台湾周辺を飛行し、うち35機が事実上の境界線となっている中台中間線を超え台湾側に侵入した。

既視感ある緊張感の高まりの原因は?

今回のような状況は、昨年8月はじめ、当時のペロシ米下院議長が台湾を訪問した際にも生じた。ペロシ訪問前、中国当局は訪問が実現すれば強い対抗措置を取らざるを得ないとけん制し、習国家主席も7月下旬にバイデン大統領と電話会談した際、「火遊びをすれば火傷する」とけん制していた。しかし、訪問が実現したことで泥を塗られる形になった中国は、台湾本土を包囲するかのような大規模な海上軍事演習を行い、大陸側からは複数のミサイルが打ち込まれ、一部は日本の排他的経済水域に落下した。4月同様に、中国軍機による中台中間線超え、台湾の防空識別圏への侵入なども相次いだ。

こういった状況の中、我々は台湾渡航をどう考えるべきだろうか。当然ながら、明日明後日、来週に台湾有事になる可能性はゼロに近い。しかし、その状況は時間が経過するごとに悪化していることは間違いない。その理由はいくつかあるが、最も重要な指標となるのは米中の軍事バランスだ。

中国が台湾へ軍事侵攻する際、最も注意するのが米軍の対応能力である。習政権3期目にとって台湾侵攻で失敗は許されず、その成功のためには介入してくる米軍を無力化する必要がある。そして、経済力や軍事力での米中の拮抗は年々顕著になってきており、既に極東アジアでは中国優勢に傾いているとの見方も少なくなく、習政権にとっては望ましい安全保障環境が到来しようとしている。この現実を考慮すれば、今後の台湾渡航では注意するべき点がある。

有事の際には一歩速い退避行動が重要

上述したように、今日台湾渡航で差し迫った脅威が存在するわけではなく、すぐにそれを延期する必要はない。しかし、軍事的緊張は今後高まる可能性が高く、仮に有事になれば台湾からの避難は事実上できなくなる。ウクライナでは、陸で繋がるロシアの侵攻によって多くの国民がポーランドやモルドバなど隣国へ避難したが、台湾は海に囲まれており、有事となれば唯一の退避手段となる民間航空機はすぐにストップする。昨年8月、ペロシ氏の訪台で軍事的緊張が高まった直後、一定期間ながらも韓国の大韓航空やアシアナ航空は台湾便をストップさせた。

要は、今後の台湾渡航においては、米中台湾の政治的動向を日常的にチェックし、有事になれば国外退避は不可能になるとの前提のもと、一歩早い退避というものを想定しておく必要がある。これは個人で台湾を訪問する際も、ビジネスで台湾へ駐在する際も重要な意識となろう。

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